きんいしゅくせいそくさくこうかしょう
筋萎縮性側索硬化症(ALS)
筋肉を動かす命令をしている神経が障害されることによって、筋肉がやせていき筋力がなくなる病気
14人の医師がチェック 130回の改訂 最終更新: 2017.07.21

Beta 筋萎縮性側索硬化症(ALS)のQ&A

    筋萎縮性側索硬化症(ALS)はどのような病気ですか?

    人間が運動する時には筋肉が動くわけですが、筋肉を動かすためには脳からの指令が神経を介して筋肉に伝わる必要があります。この指令を筋肉に伝える神経のことを「運動ニューロン」と呼びます。

    運動ニューロンは、上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの2つに分けられます。脳からの指令は上位運動ニューロンを伝わり、脳幹を通り、背中の脊髄へ降りてきて、そこで下位運動ニューロンへと乗り換えます。乗り換えた先の下位運動ニューロンで、命令は脊髄から出て末梢の神経へと伝わり、体の各部位の筋肉まで指令が行き届くというわけです。

    ALSは「運動ニューロン」が侵される病気なのですが、この上位運動ニューロンも下位運動ニューロンも両方とも侵されてしまいます。その結果、全身の力が弱くなっていき、筋肉がやせ細り、ついには体を動かせなくなってしまうことになります。筋肉というと手足の筋肉を思い浮かべると思いますが、顔やのどにも筋肉はあり、舌そのものも筋肉です。これらの筋肉を動かせなくなると、飲み込みやしゃべりが難しくなり、舌が痩せてきてしまいます。

    原因についてはまだはっきりしていません。興奮性アミノ酸の代謝に異常があるという説やフリーラジカルが関与しているという説などがあり、それぞれ治療薬の開発研究に応用されています。

    筋萎縮性側索硬化症(ALS)ではどのような症状がみられますか?

    全身の筋肉に力が入りづらくなるため、手足は動かしづらくなります。また、舌やのどの筋肉を動かせなくなると飲み込みやしゃべりが難しくなってしまいます。

    典型的には、感覚に障害はありません。また眼の筋肉は例外的に保たれ、眼球を動かすことに問題はありません。

    筋萎縮性側索硬化症(ALS)はどのように診断するのですか?

    筋萎縮性側索硬化症では血液検査、髄液検査、画像検査で明らかな異常が出ないことが多いです。むしろ、各種症状があるにもかかわらずこれらの検査結果が正常であることがこの病気を疑うきっかけになります。診察所見と針筋電図の所見が鍵になります。

    診察ですが、普通の内科で受ける診察とは少し違った診察になります。

    筋萎縮性側索硬化症は、上位運動ニューロン、下位運動ニューロンといった2種類の運動神経が侵される病気です。上位運動ニューロン症状として代表的なものは腱反射の亢進で、下位運動ニューロン症状として代表的なものは筋肉の萎縮(やせ)、筋力の低下、線維束性収縮(後述)などです。

    腱反射の診察では、筋肉の腱をゴムでできたハンマーでたたき、筋肉の収縮の具合をみることです。昔はよく膝をたたいて(膝蓋腱反射)脚気の診断に使っていました。脚気では腱反射はかなり弱くなってしまうのですが、ALSでは逆に強くなります。

    下位運動ニューロンが脱落すると筋肉の萎縮がみられます。通常であれば筋肉の萎縮は収縮の弱さにつながり、腱反射は出にくくなるはずです。それにもかかわらず、腱反射が出やすければ上位運動ニューロンが脱落している証拠となります。この「筋肉が萎縮しているにもかかわらず腱反射が出やすい」というのはALSに特徴的な症状です。

    線維束性収縮とは、筋肉がひとりでにぴくぴくと動くことです。健常人でもみられることがありますが、下位運動ニューロンが障害されていると出やすいです。

    こういったことを一つずつ確かめていって診断します。

    筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療について教えてください。

    飲み薬としては、経過を遅らせる効果があると言われるリルゾール(商品名:リルテック)を使います。また、軽症のうちであれば、エダラボン(商品名:ラジカット)という注射薬も使えるようになりました。

    後は、症状に対応した治療を行っていくことが重要です。

    リハビリテーションも非常に重要です。手足の運動機能を出来るだけ保つようにするだけではなく、飲み込みづらさやしゃべりづらさに対してもリハビリテーションを行います。

    呼吸困難感に対しては、マスクをつける呼吸の補助に加え、いよいよ呼吸状態が危なくなってくれば気管切開を行い人工呼吸器をつけることも考えなくてはなりません。

    また、飲み込みづらさのため食事が摂れなくなってきた場合には鼻から胃に管をいれて栄養を補給したり、お腹の皮膚から胃に管を通す(胃瘻)ことを考慮します。

    治療法についてまだ目覚ましい進歩はありませんが、こうしたケアの技術が進んできたために、昔よりも長期的に生存する方が増えてきています。

    筋萎縮性側索硬化症(ALS)はどのくらいの頻度で起きる病気ですか?

    10万人中7-11人程度と、非常に頻度の低い病気です。

    筋萎縮性側索硬化症(ALS)では認知症がみられますか?

    従来、筋萎縮性側索硬化症では認知症がみられないことが特徴であると言われていました。しかし、1960年以降、日本を中心に認知症を伴う病型があることが報告され、湯浅-三山型ALSと呼ばれていました。この認知症は前頭側頭型認知症(FTD;現在では前頭側頭葉変性症:FTLDという概念に包括されている)であることがわかり、現在ではFTLDを伴うALSとして知られています。

    筋萎縮性側索硬化症(ALS)で行われる、針筋電図検査とは何ですか?

    採血に使うよりも細い針を筋肉に刺し、筋肉の電気的な活動を調べます。針を刺したまま力を入れていただいたりする、痛みを伴う検査です。

    この検査で、運動ニューロンが脱落しつつある状態や脱落した神経が再生しつつある状態などを確認します。体中の色々な筋肉で評価する必要があるために、刺す筋肉の数が多くなってしまうことがあります。

    筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対する治療法が開発される見込みはありますか。

    多くの臨床試験が行われていますが、実際に治療効果のある薬はなかなかないようです。ですが、近年ALSの研究は確実に進歩しており、治療効果のある薬が開発されるのは遠い未来ではないかもしれません。

    iPS細胞を使った治療法開発の研究も進んでいます。今後の研究の進展が望まれます。

    筋萎縮性側索硬化症(ALS)は遺伝する病気ですか?

    5-10%程度が遺伝性しますが、90%以上は遺伝しません。

    遺伝するタイプのALSのうち、30%程度は原因遺伝子が特定されていますが、現在も残り70%について、遺伝子の発見が相次いでいます。

    筋萎縮性側索硬化症(ALS)はどのような経過をたどるのですか。

    基本的にゆっくりと進行する病気であり、病気の進行を遅らせることはできても治すことは出来ません。

    人工呼吸器を使わないのであれば、平均生存期間は3年程度であることが多いです。ただしこの点に関しては非常に個人差が大きく、人工呼吸器を使わなくても10年以上生存される方もいれば、もっと速い経過で呼吸状態が悪くなってしまう方もいます。

    特に、話しづらさや飲み込みづらさで発症された方は経過が速いということが知られています。

    筋萎縮性側索硬化症(ALS)ではどのような画像検査をするのですか?

    基本的に似た症状を呈する他の病気を除外するために画像検査を行います。

    頭部MRIに加えて、首のMRIをとることが多いです。頚椎症でも四肢の筋肉の動かしづらさが出ることがあるためです。

    筋萎縮性側索硬化症(ALS)で遺伝子検査をすることがあると聞きました。遺伝子検査とはどのようなものですか?

    ALSは90%が孤発性、すなわち遺伝することがないものです。しかし、10%は家族性、すなわち遺伝することが知られているタイプのものです。ただし、遺伝するといっても、患者さんの子供に必ず発症するとは言えません。患者さんごとに大きく異なることに注意して下さい。

    家族性ALSが考えられる時、SOD1遺伝子に異常がないか遺伝子解析をすることがあります。遺伝子を調べるためには特別なことは必要なく普段通りの採血をするだけです。遺伝子検査というと拒否感を持たれる方が多いので、医師の側が十分に説明し、患者さんから同意が得られた場合に、検査をすることになります。SOD1遺伝子以外にも家族性ALSの原因遺伝子として非常に多くのものが同定されており、SOD1遺伝子に問題がなかったからといって家族性ALSでないとは言えませんが、代表的なものとしてまず検査されることが多いです。


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