2017.05.18 | ニュース

抗生物質を飲んでいたら食道にカビが生えた72歳男性

千葉大から症例報告

from The New England journal of medicine

抗生物質を飲んでいたら食道にカビが生えた72歳男性の写真

健康な人の体にも、カンジダという真菌(カビ)が住み着いています。普段は無害ですが、何かのきっかけで増殖して症状を現すことがあります。食道でカンジダが増殖し、飲み込むときの痛みから気付いた人の例が報告されました。

千葉大学医学部附属病院の医師2人から医学誌『New England Journal of Medicine』に、カンジダ性食道炎が見つかった72歳男性の症状の写真が報告されました。

この男性は2週間前から飲み込むときの痛みが続いていました。症状が始まる16か月前にびまん性汎細気管支炎と診断され、それ以来マクロライド系抗菌薬(抗生物質)の治療を続けていました。

びまん性汎細気管支炎は咳や息切れが続く原因不明の病気です。細菌が原因ではありませんが、マクロライド系抗菌薬を少量長期使用することで効果があることがわかっています。

 

内視鏡検査で、食道に白いコケのようなものが線状にできているのが見つかりました。症状が見えている部分をこすり取って培養すると、カンジダがいたことがわかりました。

カンジダはもともと元気な人にはあまり症状を起こしません。カンジダ性食道炎になりやすい状況の例を挙げます。

  • 抗菌薬の長期使用
  • 免疫抑制薬やステロイド薬を使っている
  • HIVに長期的に感染してAIDSになった

この男性では、免疫抑制薬・ステロイド薬は使っていませんでした。HIVの検査でも陰性の結果でした。抗菌薬の長期使用が当てはまっています。

治療のため抗真菌薬(カビに効く薬)を2週間飲むと痛みが軽くなりました。12週間後に再び内視鏡検査をすると、白い病変がごく少なくなっているのが見えました。

治療前後の食道の写真は「参照文献」のリンク先で見られます。

 

カンジダ性食道炎が見つかった人の例を紹介しました。

カンジダは元気な人の体にも住み着いている、ごくありふれたカビです。カンジダ性食道炎のほかにも、抗菌薬の使用後に膣カンジダ症として現れるなど、病気の原因になる場合があります。

抗菌薬やステロイド薬、HIVのほか、糖尿病もカンジダの増殖につながることがあります。

ここで紹介した人は薬でよくなりました。「体にカビが生える」と聞くと怖く感じるかもしれませんが、カンジダによる病気は多くの人が経験し、多くの場合は軽症で済みます。

抗菌薬使用などに当てはまる人で気になる症状が現れたときは、まず医療機関で診察を受け、原因を調べてください。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Candida Esophagitis.

N Engl J Med. 2017 Apr 20.

[PMID: 28423304] http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm1614893

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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