体のあちこちにできものができた女の子
ネパールの研究班が専門誌『Journal of Medical Case Reports』に報告した例を紹介します。
9歳の女の子が、前腕、ふくらはぎ、背中にあるできものを訴えて受診しました。
できものは3か月の間にだんだん大きくなっていて、痛みや発熱はありませんでした。
診察では背中の肩甲骨の間の場所に1.5cm×1.5cmほどのできものが確かめられ、右前腕、右ふくらはぎにも数cmほどのできものがありました。表面の皮膚は正常と見られました。
ほかの場所の痛み、体重減少など、ほかの症状はありませんでした。
手足・背中にできものが出る病気は?
皮膚に近い場所のできものの原因として、がん、感染、免疫の異常などが考えられます。病気ごとに特徴がありますが、大まかにはがんなら発熱や体重減少、細菌が感染していれば赤みや痛みが出やすい特徴です。
この女の子には発熱・体重減少・赤み・痛みのいずれもありませんでした。
検査で結核を発見
超音波検査で、皮膚ではなく筋肉の内部に塊が見られました。
血液検査、組織を針で吸い取って観察する検査、吸い取った組織の中の細菌を探す検査などが行われましたが、原因は特定できませんでした。
できもののうち1か所を手術で切り取って顕微鏡観察(生検)したところ、結核の特徴である乾酪壊死(かんらくえし)の様子が見られました。
ただし、ほかにも結核を疑ってツベルクリン反応や培養などの検査が行われていましたが、いずれも結果は陰性でした。
確認のため別の場所も生検したところ、やはり乾酪壊死が見られました。
最終的に結核と診断され、結核の薬で治療が行われた結果、できものは消えました。
報告時点ではまだ治療は続けられています。
結核は皮膚にも現れる
結核は結核菌が感染して起こります。一番感染しやすい場所は肺です。
しかし、結核菌は全身のさまざまな臓器に症状を起こします。たとえば皮膚結核や関節結核と呼ばれる状態も知られています。
結核が筋肉の中に症状を現すことは非常にまれですが、肺が正常だから結核ではないとは言えません。
日本も先進国の中では結核が多い国です。全国で毎年2万人近い人が結核にかかっています。アメリカなどに比べると人口あたり数倍の割合です。
結核対策のために自分でできることがあります。
- 子どもには予防接種(BCG)を1歳までに確実に打つ。
- 2週間以上続く咳、痰、発熱があれば病院に行くか、結核検診を受ける。
- もし結核と診断されたら、薬を確実に飲んで治し、同時に空気感染対策をする。
結核の知識をぜひ周りの人にも広めてください。
執筆者
Tuberculosis presenting as multiple intramuscular nodules in a child: a case report.
J Med Case Rep. 2015 Mar 28.
[PMID: 25885776]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。