2016.09.13 | ニュース

ピルを飲む前にチェック!持病のある人が3年を超えて飲んだときに増えていた問題点

スウェーデンの統計から

from Gastroenterology

ピルを飲む前にチェック!持病のある人が3年を超えて飲んだときに増えていた問題点の写真

ピル(経口避妊薬)は日本では普及が遅れていますが、海外では人気の高い避妊方法です。男性に頼らず女性が自分で避妊できます。しかし、気を付けて飲むべき人もいます。特定の病気がある人でピルの影響が疑われる問題点が報告されました。

ピルを飲んでいる女性に「クローン病」という病気があった場合の影響について調べた研究を紹介します。

スウェーデンのカロリンスカ研究所などの研究班が専門誌『Gastroenterology』で報告したものです。

 

クローン病とは、腸の炎症により下痢や血便を繰り返す、原因不明の難病です。10代から20代で発見されて長年症状が続く場合が多いです。軽症なら薬で治療できますが、悪化して手術が必要になることもあります。日本では1万人のうち数人ほどがクローン病患者です。「クローン動物」などの「クローン」とは関係ありません。

 

この研究では、クローン病がある女性が対象とされました。クローン病の女性患者のうちで、ピルを飲んだかどうかによってクローン病の悪化しやすさに違いがあるかに着目されました。

スウェーデンの統計から、対象としてクローン病の女性患者4,036人のデータが集められました。
統計解析によりピルの影響が検討されました。

 

解析から次の結果が得られました。

非使用者と比べて、手術の多変量調整ハザード比は以前に経口避妊薬を使用していた人で1.14(95%信頼区間0.80-1.63)、使用中の人で1.30(95%信頼区間、0.89-1.92)だった。

ピルを飲んだことがないクローン病患者と、ピルを使用中のクローン病患者で、手術が必要になる割合は統計的に差があるとは言えませんでした。ピルを以前に飲んだことがあるクローン病患者とも差があるとは言えませんでした

しかし、範囲を絞ると次の結果がありました。

特に、経口避妊薬の使用が3年を超えた女性では、手術の多変量調整ハザード比は1.68(95%信頼区間1.06-2.67)だった。

クローン病の女性患者で、ピルを3年を超えて飲んでいた人では、ピルを飲んだことがないクローン病患者よりも多く手術が行われていました。

研究班は結論として、「臨床医は、確立されたクローン病のある女性に対しては、避妊方法を注意深く評価しモニターするべきである」と述べています。

 

クローン病と診断されたことのある女性では、ピルを飲む前に、クローン病を診てもらっている医師に相談したほうがいいでしょう。

この研究は、「ピルを飲むとクローン病になる」という内容ではありません。しかし、ピルは持病によって飲めない場合もあるので、きちんと診察を受けて処方されたものを飲むべきです。

自分が処方されたのでないピルを飲むのは非常に危険です。使いたい女性は産婦人科などの病院やクリニックで相談してください。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Association Between Long-term Oral Contraceptive Use and Risk of Crohn's Disease Complications in a Nationwide Study.

Gastroenterology. 2016 Jun.

[PMID: 26919969]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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