2015.05.11 | ニュース

食生活によって大腸がんのリスクが変化する!?

アフリカ系アメリカ人と南アフリカ人に対して、食事介入を行う

from Nature communications

食生活によって大腸がんのリスクが変化する!?の写真

大腸がんの一種である「結腸がん」の発症率は食事と関連すると言われています。 アメリカ系アフリカ人は南アフリカ人に比べて結腸がんの発症率が10倍以上高いという背景から、アメリカの研究チームが、アメリカ系アフリカ人と南アフリカ人の食生活の違いに注目し、2週間食生活を変えることでがんの発症リスクに関連すると思われる変化がみられたことを報告しました。

◆結腸がんとは?

結腸がんは、大腸の一部である結腸(上行結腸、横行結腸、下行結腸)に出来るがんです。
発症するリスク因子として、遺伝的要因、肥満、食生活、飲酒などが挙げられます。

 

◆2週間、食生活を変える

研究チームは、2週間の食生活を変えることで結腸がんに関わる体の変化が起こるかどうかを調査しました。
研究方法は以下のとおりです。

同じ地域に住むアフリカ系アメリカ人と南アフリカ人を対象に、アフリカ系アメリカ人にはアフリカ型の食物繊維が多く脂肪が少ない食事を、南アフリカ人には西洋型の食物繊維が少なく脂肪が多い食事を、厳重な管理のもと摂取させた。

 

◆食生活と結腸がんのリスク要因の変化が関係

2週間食事を変えた結果、対象者には以下の変化が見られました。

がんのリスクと関連するとされる粘膜バイオマーカー、がんのリスクに影響を及ぼすとされる微生物叢とメタボローム、なかでも特徴的だったのは糖分解性発酵と酪酸生成において、アフリカ型の食事をしたアフリカ系アメリカ人と、西洋型の食事をした南アフリカ人で逆方向の変化が見られた。
アフリカ系アメリカ人においては、二次性の胆汁酸の合成が抑制された。

つまり、食事の変化によって、腸の中の細菌の活動や体の生理的な活動に変化が起こり、アフリカ系アメリカ人にはがんのリスクが減ると考えられる方向に、南アフリカ人にはがんのリスクが増えると考えられる方向に働いていました。


この研究結果から、2週間という短期間の変化であっても、食生活の変化が結腸がんのリスクに関連すると思われる変化をもたらす可能性が示されました。

ここで観察された変化が結果として、がんの発症に結びつくのかどうか、また長期間にわたって食生活が及ぼす影響はどのようなものか、といった点については今後の研究に委ねられています。


予防や治療に結び付くまでにはまだまだ多くのことが明らかにされなければなりませんが、食生活とがんが関係するしくみにアプローチした、興味深い研究です。

みなさんはこの研究結果をどのように受け止められますか?

執筆者

佐々木 康治

参考文献

Fat, fibre and cancer risk in African Americans and rural Africans.

Nat Commun. 2015 Apr 28.

[PMID: 25919227]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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