1. ばね指とはどんな病気なのか?
「ばね指」は指の付け根にある屈筋腱や腱鞘(腱を覆う構造物)に炎症が起こる病気で、痛みや腫れなどを自覚します。また、曲げた指を伸ばそうとしたときに、炎症を起こして腫れた腱や腱鞘がひっかかってしまい、スムーズに指が伸びないことがあります。そうしたときに、力を加えて伸ばそうとすると、不意にピーンと指が伸びてしまいます。この様があたかもバネのようであることがこの病気の名前の由来になっています。(なお、ばね指はどの指にも起こりえますが、特に多いのが親指と中指です。)
現代社会ではパソコンやスマートフォンなど指をよく使うので、指の不調は日常生活で不自由さを感じる原因にもなります。ですので、なるべく早く症状を落ち着けたいものです。
2. ばね指になりやすいのはどんな人か?
ばね指の原因はまだはっきりしないこともあるのですが、次のような人に多いことが分かっています。
【ばね指になりやすい人の特徴】
- 50歳代から60歳代の女性
- 血液透析を受けている人
- 糖尿病の人
- 関節リウマチの人
- 指をよく使う人
指の付け根に腫れや痛みを感じたり、指の動かしづらさがあって、上の条件に当てはまるものがある場合、その原因としてばね指の可能性が少なからずあると考えられます。一方で、条件に当てはまらなくても「ばね指」を発症することはあるので、心配な人は医療機関で相談してみてください。相談先については後述します。
3. ばね指は自然に治るのか?
ばね指の程度が軽ければ、指を休ませるだけで大半の人は自然によくなってきます。しかし、指を使い続けていると次第に悪化して、治療が必要になってきます。
ばね指を治療する場合には次のものが検討されます。
【ばね指の治療】
- 薬物治療
- 消炎鎮痛剤(飲み薬もしくは湿布)
- 患部にステロイド薬の注射
- 手術
最初の治療としては安静にしつつ薬物療法が行われることが多く、指を動かないように固定したうえで、消炎鎮痛剤が使われます。それでも、症状が改善しない場合には、炎症を抑えるステロイドという薬を指の付け根の腱鞘に注射します。 手術は薬物療法の効果が小さい場合に検討されます。腱鞘に切れ目を入れ、炎症を起こしている腱を開放します。なお、ばね指の手術の負担は小さいので、施設によっては日帰りで受けられます。
4. ばね指が心配な人はどこで相談すればよいのか?
治療法があるとはいえ、悪化していくのはなるべく避けたいものだと思いますので、最後にばね指が心配な人はどこで相談すればよいのかを説明します。 ばね指の手術を担当するのは整形外科です。ですので、最初から薬物治療だけでなく手術の話まで全てを聞いておきたいという人は整形外科の受診をお勧めします。一方で、すでに持病があって定期的に受診している人は、かかりつけのお医者さんに相談してみるのも良い選択です。ばね指の診断は難しくはないので、整形外科以外のお医者さんでも対応してくれることが多いです。また、飲み薬や湿布で十分な効果が得られない時点で、整形外科のお医者さんを紹介してくれます。
今回は「ばね指」という一風変わった名がついた病気について説明しました。思い当たる節がある人はぜひ受診をしてみてください。
執筆者
・Philip E Blazer et al.,Trigger finger(stenosis flexor tenosynovitis), UpToDate
・整形外科学会ホームページ:ばね指(弾発指)(2021.12.21閲覧)
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。