足の痛みや腫れの原因になる「大人の扁平足(へんぺいそく)」とはどんな病気?
扁平足(へんぺいそく)とは、土踏まずがなくなり足裏が平べったくなった状態のことです。言われてみれば、自分は扁平足ぎみかなと自覚する人もいるかもしれません。
大人の扁平足には、子どもの頃からずっと扁平足のまま成長した人と、大人になって新たに扁平足になった人がいます。今回取り上げるのは大人になってから
「成人期扁平足」はあまり知られていない病気ですが、中年女性を中心に年々増えていると言われています。本コラムを通して、あなたの足の痛みの原因になっているかもしれない成人期扁平足という病気について知ってもらえたらと思います。(なお、成人期扁平足の予防や治療法については次回以降のコラムで紹介します。)
1. 大人の扁平足(成人期扁平足)になるとどんな症状がでるのか
扁平足とは、「土踏まず」と呼ばれる足の裏の内側のくぼみがなくなり、平べったくなっている足のことです。中年以降で起こる成人期扁平足は、もともと扁平足ではなかった人が、さまざまな原因で土踏まずがつぶれてなくなってしまった病気です。
成人期扁平足をそのままにしておくと、以下のように
【成人期扁平足の主な症状】
- 初期の症状
- 足の内側や足裏が強く痛む
- 内側のくるぶしから下辺りが腫れる
- 土踏まずがなくなり平べったく変形する
- 進行した時の症状
- 片足でつま先立ちができなくなる
- 足全体が硬くなって歩けなくなる
成人期扁平足は進行すると歩行が障害され、日常生活に支障をきたすことがあります。
2. なぜ大人になってから扁平足になるのか
次に、大人になって扁平足が引き起こされる原因について説明します。
足の側面の形を内側から見てみると、通常は上に向かってドーム型のアーチを描いている(いわゆる土踏まずの部分)ことがわかります。このドーム型の構造は、「足の縦アーチ」と呼ばれ、弓のようなしなりをもつことで体重を効率よく支えています。
成人期扁平足が引き起こされるのは、この縦アーチのバランスが崩れることが原因だと考えられています。足の縦アーチが壊れる原因として、以下があります。
【成人期扁平足の主な原因】
- 後脛骨筋腱の機能不全(うまく働かないこと)
- 外傷(外から何らかの力が加わって傷つくこと、いわゆる怪我)
- 関節リウマチ
- 足の
腫瘍 など
上記の中で、原因として最も多いのは「後脛骨筋腱の機能不全」です。なかなか聞きなれない言葉なので、以下でどういうことなのか詳しく説明します。
後脛骨筋腱が働かないと、土踏まずがつぶれる
後脛骨筋腱は足の縦アーチを頭側に釣り上げる働きをしています。後脛骨筋腱は足首内側の後ろを通っていて、内側のくるぶしの下の骨に付着している腱です。
成人期扁平足の多くは、この後脛骨筋腱が傷んでしまい、アーチを支えられなくなったことが原因だと考えられています。扁平足で痛みや腫れが出るのは、まさにこの後脛骨筋腱に沿った場所となります。
足の縦アーチを支えている後脛骨筋腱が傷む原因として、主に挙げられるのは以下になります。
- 加齢によって筋力が落ちる、腱がもろくなる
- 肥満によって大きな負荷がかかる
- 長時間の立ち仕事やスポーツによって負荷がかかる
つまり、加齢や肥満などで体重とそれを支える筋肉のバランスが崩れた人では起こりやすくなります。上記に心当たりがあって足の痛みで悩んでいたら、自分の足裏を観察してみてください。平べったいかもしれないと思ったら、成人期扁平足を疑って受診を検討しても良いかもしれません。
3. 受診したらどのような検査を受けるのか
扁平足について主に診察しているのは整形外科になります。
成人期扁平足かもしれないと思って受診した際に、整形外科で受けることになる診察や検査について説明します。
成人期扁平足が疑われる人の足の診察について
まずは、目で見て診察する視診が行われます。足を見る時に確認される特徴は以下になります。
- 土踏まずがなくなり平べったくなっている
- 足の内側のくるぶしの下側が腫れて、くびれがなくなっている
- 床に足を着いた状態で後ろからみると、通常見えないはずの小指側の足指が何本か見える
上記のような視診に加えて、足の色々な場所を押さえたり動かしたりしてみて、痛みや腫れの状況などが念入りに調べられます。
成人期扁平足で受けることになる検査:レントゲン写真の特徴について
診察のあとに、多くの人は足の
身体に痛みがある人のレントゲン写真では、まずは骨が折れていないかどうかが確認されます。扁平足で骨が折れていることは基本的にありません。ただし、外傷によって扁平足となっている人の中には、骨折が伴っている可能性もあります。
成人期扁平足のレントゲン写真の特徴として、足の縦アーチが地面の方向へ下がるため、アーチに沿って上向きであるはずのかかとの骨が下向きに倒れている様子がみられます。
成人期扁平足に関する精密検査:MRI検査について
成人期扁平足の中でも、後脛骨筋腱の機能不全が原因として疑われる人の中には、
MRI検査は磁気を利用する画像検査で、筋肉や腱の様子がより詳しく分かる検査です。成人期扁平足で後脛骨筋腱が傷んでいる人は、腱が傷ついている様子をMRI画像で細かく見ることができます。
ただし、MRI検査では大変強い磁場の中に身をおくことになります。このため、身体に装着している金属によってはMRI検査を受けられない人がいます。(詳しくはこちらのコラムを参照してください。)また、すべての医療機関にMRI検査装置があるわけではありません。足の痛みに対してMRI検査が必要かどうかは、担当するお医者さんと相談して決めることになります。
4. まとめ
中年以降に発症する成人期扁平足は、加齢や肥満が原因に関わっていることが多いため、患者さんは年々増えていると言われています。原因不明の足の痛みが、実は成人期扁平足だったということは十分あり得ます。
成人期扁平足は、進行すると痛みが強くなったり歩行が困難になることがあります。早い段階であれば手術を受けずに痛みを楽にすることができますので、放置せずに、整形外科のある医療機関を受診することをおすすめします。
*こちらのコラムでは、成人期扁平足の予防や治療法について詳しく説明します。自分で簡単に実践できる予防法も紹介しますので、気になる人は参考にしてみてください。
執筆者
・「標準整形外科学」(中村利孝、松野丈夫/監)、医学書院、2017
・「今日の整形外科治療指針」(国分正一ら/編)、医学書院、2012
・「ネッター 解剖学アトラス」(相磯貞和/訳)、南江堂、2016
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。