2018.12.20 | コラム

補聴器を買うときに補助金はもらえる?:購入前に知っておきたい身体障害者手帳と医療費控除の申請

補聴器の購入前に手続きが必要です

補聴器を買うときに補助金はもらえる?:購入前に知っておきたい身体障害者手帳と医療費控除の申請の写真

「補聴器って結構高い・・・」
年とともに聞こえが悪くなり補聴器について調べてみたものの、価格の高さに尻込みする人は少なくありません。 しかし、聴力検査の結果によっては「身体障害者手帳」の交付を受けることができます。手帳があれば補助金の申請ができ、経済的な負担を軽くすることができます。また、これに該当しない人でも医療費控除の申請をすることで、税金の一部が戻ってくることがあります。
このコラムでは、補聴器購入の前に知っておきたい「身体障害者手帳」の申請や「医療費控除」について説明します。

1. 補聴器の補助金申請のために必要なこと:聴覚障害の身体障害者手帳申請について

耳鼻咽喉科で聴力検査を行い、難聴が高度または重度と診断された人は、聴覚障害の「身体障害者手帳」の交付を受けることができます。身体障害者の認定を受けると、補聴器を購入する時に補助が受けられるので、購入前に認定を受けることをお勧めします。

注意点として、身体障害者手帳の申請から補助金給付まで時間がかかることが挙げられます。具体的には、身体障害者手帳の交付は申請から約1ヶ月かかります。次に「補聴器購入費給付」の申請を行い、約2-4週間後に「補装具費支給券」が給付され、補聴器を購入する段取りになります。そのため、補聴器購入目的で身体障害者の認定を受けたい場合には、期間に余裕を持って申請を行ってください。

それでは「身体障害者手帳」と「補聴器購入費給付」の申請について詳しく説明します。

 

身体障害者手帳の交付が受けられる人とは

聴覚障害の身体障害者手帳が取得できるのは、難聴が高度または重度の人です。聴覚障害は難聴の程度によって2、3、4、6級に分かれていて、それぞれ申請に必要な聴覚検査が異なります。

2018年10月現在の「聴覚障害等級」と「検査結果・症状」は次の表の通りです。表に出てくる「聴力レベル」の単位「dB」はデシベルと読み、音の大きさを表しています。数字が大きいほど、大きな音でないと聞こえにくいことを示しています。

 

【聴覚障害等級と検査結果・症状】

聴覚障害等級 検査結果・症状など
2級 両耳の聴力レベルがそれぞれ100dB以上の人
(両側とも全く聞こえない状態)
3級 両耳の聴力レベルがそれぞれ90dB以上の人
(耳介に接しないと大声の話を理解できない)
4級 1. 両耳の聴力レベルがそれぞれ80dB以上の人(耳介に接しないと普通の声の話を理解できない)
2. 両耳の最良語音明瞭度が50%以下の人
(語音聴力検査で最も理解できる割合が50%以下)
6級 1. 両耳の聴力レベルがそれぞれ70dB以上の人
(40cm以上の距離での会話を理解できない)
2. 片方の聴力レベルが90dB以上、もう一方の聴力レベルが50dB以上の人

 

3、4、6級は「純音聴力検査」と「語音聴力検査」のみで申請を行うことができます(検査の詳細はこちらのコラムを参考にしてください)。一方、2級をはじめて申請する場合には追加で「聴性脳幹反応」という検査を受ける必要があります。聴性脳幹反応はヘッドフォンで音を聴きながら音を伝達する経路の脳波を記録し、耳から脳の聴覚野までの神経の機能を評価する検査です。

 

身体障害者手帳と補聴器購入費給付の申請手順とは

聴覚検査の結果、上記の聴覚障害に該当した人は、居住する自治体の福祉事務所や役所に申請をすることで、身体障害者手帳や補聴器購入費給付を受け取ることができます。

「身体障害者手帳」と「補聴器購入費給付」の申請には次の書類が必要です。書類は居住する自治体の福祉事務所や役所でもらうことができます。

 

【必要書類】

  • 身体障害者手帳交付申請書
  • 身体障害者診断書・意見書
  • 補聴器購入費給付診断書・意見書
  • 補聴器購入費給付申請書

 

申請の具体的な手順は次の通りです。

 

【申請の手順】

  1. 居住する自治体の指定の医療機関で「身体障害者診断書・意見書」「補聴器購入費給付診断書・意見書」を書いてもらいます。
  2. 「身体障害者手帳交付申請書」を自分で記入します。
  3. 身体障害者手帳の申請:「身体障害者手帳交付申請書」と「身体障害者診断書・意見書」を福祉事務所・役所に提出します。
  4. 認定されれば、約1ヶ月程度で「身体障害者手帳」が給付されます。
     
  5. 「身体障害者手帳」と「補聴器購入費給付診断書・意見書」を持って補聴器販売店で「見積書」を作成してもらいます。
  6. 「補聴器購入費給付申請書」を自分で記入します。
  7. 補聴器購入費給付の申請:「見積書」、「身体障害者手帳」、「補聴器購入費給付申請書」「補聴器購入費給付診断書・意見書」を福祉事務所か役所に提出して申請し、判定を待ちます。
     
  8. 判定の結果、補聴器購入費給付の許可が降りたら「補装具費支給券」が自宅に届きます。申請から発行までは2-4週程度かかります。
  9. 差額の自己負担額と「補装具費支給券」を持って、見積書をもらった販売店で補聴器を購入します。

 

補聴器の購入後に「補聴器購入費給付」の申請を行うことはできませんので、購入前に手続きをするようにしてください。

 

補聴器の購入費給付額とは:補聴器のタイプによって異なる

補聴器購入費給付の許可が下りた場合は、補聴器の購入費用のうち1割を購入者が負担することになります。「補聴器購入費給付診断書・意見書」に記載された補聴器のタイプによって購入基準額が決まっていて、基準額に応じて補助金額が決定されます。ただし、本人もしくは世帯の人が一定の所得以上の場合には補助の対象外となります。

 

【補聴器のタイプと購入基準額】

補聴器のタイプ 購入基準額(円)
高度難聴用ポケット型 34,200
高度難聴用耳かけ型 43,900
重度難聴用ポケット型 55,800
重度難聴用耳かけ型 67,300
耳あな型(レディメイド) 87,000
耳あな型(オーダーメイド) 137,000

【注】
高度難聴:聴力レベルが70-89dBの場合
重度難聴:聴力レベル90dB以上の場合

 

補聴器にはいくつか種類があり、それぞれ特徴があります。例えば、「耳あな式」は目立ちにくいという利点がありますが、大きな音を出すことが難しいため、重度難聴の人にはお勧めできません。また、作りが小さいため高齢者では扱いにくいという欠点もあります。

どのタイプの補聴器が自分に合っているかは、難聴の程度とともに生活スタイルなどをふまえながらお医者さんと相談すると良いです。

 

ここまで、身体障害者手帳による補助金の申請について説明してきましたが、これに該当しない人でも購入の負担を軽減できる方法があります。次に、その方法として「医療費控除」の申請手続きについて説明します。

 

2. 補聴器購入代金の医療費控除の申請手順

医療費控除とは一定額以上の医療費を支払った場合に、申告することで納めた税金の一部が戻ってくるものです。納税者と家計を共にする家族が1年に支払った医療費の自己負担額が10万円を超える場合もしくは、総所得金額等が200万円以下の人では総所得金額等の5%を超えた場合に医療費控除を受けることができます。詳しくは国税庁のホームページを参考にしてください。

 

平成30年度から補聴器の購入代金も医療費控除の対象となりました。医療費控除を受けられる補聴器は一般的な金額を大きく超えない場合に限られることと、購入前に「補聴器相談医」を受診する必要があることに注意してください。

なお、補聴器相談医とは、決められた講習を受けて耳鼻咽喉科学会に認定された補聴器の専門医のことです。こちらの名簿に掲載されていますので受診の参考にしてください。

 

医療費控除の申請手順は下記の通りです。

 

【補聴器購入代金の医療費控除の申請手順】

  1. 補聴器を購入する前に補聴器相談医を受診します。
  2. 問診や検査を受けて「補聴器適合に関する診療情報提供書」を記入してもらいます。
  3. 「補聴器適合に関する診療情報提供書」を持って、補聴器販売店で補聴器を購入します。このとき「領収書」を忘れずに受け取ってください。
  4. 購入の際の「領収書」と「補聴器適合に関する診療情報提供書」の写しを確定申告で提出し、医療費控除として申請します。

 

書類が揃ってから確定申告の時期までは間が空くこともありますので、大切に保存しておいてください。

 

3. いずれも購入前に手続きが必要

今回は補聴器を購入する際に利用できる「身体障害者手帳」や「補聴器購入費給付」の申請方法と、「医療費控除」について説明しました。いずれも補聴器の購入前に手続きが必要です。購入を検討している人は、今回のコラムを参考に準備を整え手続きをしてみてください。

 

参考文献

厚生労働省ホームページ「補装具費支給制度の概要」

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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