インフルエンザワクチンは子供・成人・高齢者に効くのか?

インフルエンザワクチンの効果は多くの研究で示されていますが、対象者の年齢は研究ごとに違います。これまでの研究データを対象者の年齢によって分けて調査し、効果や副作用を推定した結果が報告されました。
子供・成人・高齢者に対するインフルエンザワクチンの効果
イギリスとイタリアの研究班が、インフルエンザワクチンによる予防効果について、過去の研究報告の調査を行い、見つかった結果を3本の論文として『The Cochrane Database of Systematic Reviews』に報告しました。
この調査は、対象者が16歳未満(子供)・16歳から65歳(若い成人)・65歳以上(高齢者)のどれに当てはまるかを区別して、それぞれに該当する研究データを集めて内容をまとめ、1本ずつの論文としたものです。
予防接種によってインフルエンザの診断やインフルエンザ様疾患(突然の発熱などの特徴が現れている状態)が減っているかどうかなどの結果について、集まったデータの解析が行われました。
子供について
子供についての調査では、採用条件に合う41件の研究データが見つかりました。ほとんどの研究が2歳以上の子供を対象にしていました。日本でも使われている不活化ワクチンのほか、鼻からスプレーするタイプのワクチン(弱毒化生ワクチン)についての研究も見つかりました。不活化ワクチンの研究データによれば、ワクチンを打つことで、2歳から16歳の子供の中でインフルエンザと診断される割合を0.36倍に減らせると見られました。副作用をはっきりと示すデータは見つかりませんでした。
若い成人について
若い成人についての調査では、採用条件に合う52件の研究データが見つかりました。ワクチンを打つことで、インフルエンザと診断される割合が0.41倍程度に少なくなると見られました。副作用について、発熱はワクチンを打たなかった人で1.5%、ワクチンを打った人で2.3%に現れていました。
高齢者について
高齢者についての調査では、採用条件に合う8件の研究データが見つかりました。ワクチンの効果として、1シーズンあたりにインフルエンザと診断される割合が0.42倍程度に少なくなると見られましたが、このデータは不確かなものであり数字がずれている可能性もあると判断されました。副作用について、発熱はワクチンを打ったほうが多いとは言えず、吐き気についてもデータがありましたが不確かなものでした。
インフルエンザワクチンはどの年齢の人が打つべき?
インフルエンザワクチンの効果について年齢区分別に過去の研究データを調べた結果を紹介しました。子供や高齢者を含めて、どの年齢区分でも予防効果を示すデータがありました。ただし、2歳未満の子供に対する効果など、不確かな点もありました。
この調査を行った著者らは、今後の研究が加わっても結論が変わることはありそうにないと見て、新しいタイプのワクチンが導入されるなどの条件が満たされない限り調査を更新しないという考えを示しています(参照:Why have three long-running Cochrane Reviews on influenza vaccines been stabilised?)。
日本を含め多くの国で、インフルエンザの予防接種は幅広く推奨されています。どの程度の効果があるかについて長年研究が続けられていますが、ここで紹介したように過去のデータが要約されていることで、将来にわたって判断の根拠とすることができ、また新しいワクチンなどの状況の変化があったとしても、見比べて考える材料とすることができます。
執筆者
Vaccines for preventing influenza in healthy children.
Cochrane Database Syst Rev. 2018 Feb 1.
[PMID: 29388195]
Vaccines for preventing influenza in healthy adults.
Cochrane Database Syst Rev. 2018 Feb 1.
[PMID: 29388196]
Vaccines for preventing influenza in the elderly.
Cochrane Database Syst Rev. 2018 Feb 1.
[PMID: 29388197]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。