緊急避妊薬、避妊効果が高く副作用が少ないのはどれ?

緊急避妊薬(アフターピル)は避妊に失敗した場合などに使用可能です。レボノルゲストレル錠(商品名ノルレボ®)などが使われています。緊急避妊薬の種類ごとの効果や副作用が比較検討されました。
緊急避妊薬の比較
中国の研究班が、緊急避妊薬の効果や副作用としてこれまでの研究から報告されている内容をまとめ、『The Cochrane Database of Systematic Reviews』に報告しました。
この研究は、文献を集める方法により過去の研究の結果をまとめたものです。
1回の避妊されていない性交のあとで緊急避妊を求めた女性を対象として、異なる緊急避妊薬をランダムに使う方法で効果などを比較した研究を調査対象としました。
レボノルゲストレルが妊娠が少なく副作用が少ない
採用基準を満たす115件の研究が見つかりました。日本で主に使われている薬剤に絞ると、次の結果が得られました。
レボノルゲストレルはヤツペ法(エストラジオール・レボノルゲストレル合剤)よりも少ない妊娠と関連した(リスク比0.57、95%信頼区間0.39-0.84、6件のR
CT 、4,750人、I2=23%、高い質の証拠)。
ヤツペ法は古くからある避妊薬の処方です。ヤツペ法に比べて、レボノルゲストレルを使用した場合は妊娠した(緊急避妊に失敗した)割合が0.57倍に少なくなりました。
副作用について次の結果がありました。
緊急避妊薬と関連する主な有害事象は吐き気・嘔吐だった。
レボノルゲストレルはおそらくヤツペ法よりも吐き気(リスク比0.40、95%信頼区間0.36-0.44、6件のRCT、4,750人、I2=82%、中等度の質の証拠)、嘔吐(リスク比0.29、95%信頼区間0.24-0.35、5件のRCT、3,640人、I2=78%、中等度の質の証拠)のリスクが低いことと関連した。レボノルゲストレル使用者はヤツペ法使用者よりも何らかの副作用が出ることが少なかった(リスク比0.80、95%信頼区間0.75-0.86、1件のRCT、1,955人、高い質の証拠)。
副作用やほかの原因によって緊急避妊薬使用時に現れた
レボノルゲストレルを使った人では、ヤツペ法を使った人に比べて何らかの副作用が出た人の割合が0.80倍に少なくなりました。吐き気は0.40倍、嘔吐は0.29倍と、いずれもヤツペ法よりレボノルゲストレルのほうが少なくなりました。
緊急避妊薬はレボノルゲストレル?
緊急避妊薬の種類ごとの比較を紹介しました。レボノルゲストレルのほうがヤツペ法よりも妊娠を阻止しやすく副作用が少ないと考えられることから、現在日本でも緊急避妊薬としてはレボノルゲストレルがよく使われています。
ただし、レボノルゲストレルでも100%避妊できるわけではありません。より確実さを高めるには日頃から
また、副作用や体質などの理由によってレボノルゲストレルを使えない人もいます。
コンドームが破れた、性犯罪の被害に遭ったなど、予期しない状況では緊急避妊薬の役割が大きくなります。
現在(2017年8月時点)、日本で緊急避妊薬を使用するには産婦人科などで処方してもらう必要があります。2017年7月に厚生労働省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」でレボノルゲストレルを処方箋なしで買える「スイッチOTC薬」の扱いとすることが検討されましたが、見送られました。
緊急避妊薬は通常、
現実には避妊効果と副作用だけでなく、手に入れやすさも使用に関わります。緊急避妊を必要とする人のためによりよい方法が社会的に検討される中で、効果・副作用について質の高い証拠がまとめられることで、建設的な議論の材料とすることができます。
執筆者
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。