胃酸分泌を減らす薬と細菌性腸炎の関係
イギリスの研究班が、地域の追跡調査データを解析した結果を、専門誌『British Journal of Clinical Pharmacology』に報告しました。
この研究は、ヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)とプロトンポンプ阻害薬(PPI)を使用した人としなかった人を比較しています。
H2ブロッカーとPPIは、どちらも胃酸の分泌を減らす薬です。腹痛・吐血などを起こす胃潰瘍や、胸焼け・咳などを起こす逆流性食道炎などに効果があります。
研究に使った調査データから、PPIとH2ブロッカーを使用した人188,323人と、使用しなかった人376,646人の情報が得られました。薬を使用した人と使用しなかった人は、薬以外の背景が似通っている組み合わせにして選びました。
下痢で細菌が検出される場合が多い
統計解析の結果、PPIとH2ブロッカーを使用した人のほうが、下痢の症状があり細菌が検出される場合が多くなっていました。頻度は入院中の人で1.28倍、入院していない人で2.72倍でした。
細菌の種類ごとに比較すると、クロストリジウム・ディフィシル(偽膜性腸炎などの原因)またはカンピロバクター(食中毒などの原因)が検出される場合が多くなっていました。
まとめ
胃酸を減らす薬と下痢に統計的な関連があったという報告でした。
胃酸は食べ物を殺菌する働きがあります。胃酸を減らすことで何らかの影響があることは想像できます。
ただし、ここで参照されたデータは多様な状況を含むため、統計処理によって調整した以外の要素によって結果が影響されていないかに注意して解釈する必要があります。
細菌が原因かどうかにかかわらず、薬の副作用で一部の人に下痢などが現れることは知られています。副作用が出たときは薬を替えたほうがよい場合もあるので、気になることがあれば処方した医師に相談しながら使うことも大切です。
執筆者
Acid-suppression medications and bacterial gastroenteritis: a population-based cohort study.
Br J Clin Pharmacol. 2017 Jan 5. [Epub ahead of print]
[PMID: 28054368]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。