7テスラMRI装置に入った33歳男性
アメリカのジョンズ・ホプキンス大学の研究班が、MRIを撮影するときにめまい・眼振(目が揺れる症状)が現れた33歳男性の症状の動画を『New England Journal of Medicine』に寄稿しました。
この男性は、もともと持病はありませんでしたが、7テスラのMRI装置に入ったときにめまいの感覚が現れ、およそ2分間続きました。
MRIは強力な磁気を利用して画像を撮影します。撮影のときに誤って金属製品を身に付けていると激しく吸い寄せられることがあり非常に危険です。「7テスラ」というのはMRI装置の性能を表す数値です。磁束密度を指し、数字が大きいほど強力で、きめ細かい画像を撮影できることを意味します。日本でよく使われている装置は1.5テスラまたは3テスラで、さらに強力な7テスラの装置はごく少数の施設でだけ使われています。
この男性では、MRIの撮影にかかった90分のあいだ眼振が続いていました。
撮影後数時間続いて自然に治った
撮影が終わってスキャナから離れると、さらに数分のあいだ回転するようなめまいが続きました。その後はめまいは現れたり消えたりを続け、数時間経つと完全になくなりました。
研究班はMRIを撮影するときのこうした症状について、「静磁場の自然力と内耳の液体の間で起こる相互作用が原因の、正常な現象である」と言い添えています。
検査でおかしい感じがしたら相談を
MRIの強力な磁気が一時的に症状を起こした例を紹介しました。「参照文献」のリンク先ではこの人の症状の動画が見られます。
目が回るようなめまいは、主に耳の奥にある内耳の異常によって起こります。頭が動くと内耳の中にある液体が流れ、頭が動いている感覚を脳に伝えます。内耳に異常があると、頭が動いていないのに脳に間違った信号が送られ、めまいの感覚が現れます。
似た症状の出る病気に、良性発作性頭位めまい症(BPPV)があります。BPPVでは内耳の中にある「耳石(じせき)」という砂粒のようなものが本来の場所から離れて違う場所を刺激してしまい、めまいの感覚を起こします。頭を動かして耳石を元の場所に戻す「エプリー法」などの治療法があります。
MRIを使ってもめまいを感じない人がほとんどですが、中には「MRIが苦手」という人がいるかもしれません。めまいのほかにも、MRIは狭い機械の中で長時間じっとしていないといけないので、閉所恐怖症の人にはつらい検査です。
病院で検査をして体調がおかしくなったと感じたら、我慢しないでその場で相談してください。
執筆者
Dizziness and Vertigo during MRI.
N Engl J Med. 2016 Nov 24.
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm1514075#t=article※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。