くも膜下出血を診断する方法の研究
アメリカとカナダの研究班が、くも膜下出血の診断方法についての研究を専門誌『Academic Emergency Medicine』に報告しました。
この研究は、過去に報告されている研究データを統合することにより、くも膜下出血を診断するための診察や検査によって、それぞれどの程度確かにくも膜下出血を見分けられるかを計算したものです。
文献データベースの検索により、関係する22件の研究報告が採用されました。報告されているデータ全体の中で、検査の結果最終的にくも膜下出血と診断された人は7.5%でした。
首の痛み、項部硬直、CTに診断力あり
集まったデータから次の結果が得られました。
首の痛みの病歴(陽性尤度比4.1、95%信頼区間2.2-7.6)と、身体診察における項部硬直(陽性尤度比6.6、95%信頼区間4.0-11.0)が、くも膜下出血と最も強く関連する個別の所見だった。
問診・診察でわかる点(所見)の中では、患者が首の痛みを訴えていることと、診察で首が硬くなって曲げられない異常が見られることが、くも膜下出血に特徴的と見られました。
CTと腰椎穿刺(ようついせんし)について次の結果がありました。
頭痛発症から6時間以内の無造影頭部CTは、くも膜下出血のルールイン(陽性尤度比230、95%信頼区間6-8,700)、ルールアウト(陰性尤度比0.01、95%信頼区間0-0.04)ともに精密に診断した。6時間を超えてのCTは陰性尤度比0.07(95%信頼区間0.01-0.61)だった。
脳脊髄液分析は、赤血球による場合も、キサントクロミアによる場合も、診断精度がより低かった。赤血球数1,000個/μlを閾値としたとき、陽性尤度比は5.7(95%信頼区間1.4-23)、陰性尤度比は0.21(95%信頼区間0.03-1.7)だった。
CTは高い信頼度でくも膜下出血を見分けることができ、特に頭痛が始まってから6時間以内に撮影された場合には診断力が高いと見られました。CTに比べると腰椎穿刺の診断力は限られていました。腰椎穿刺で赤血球が見つかる異常があったとき、くも膜下出血がある確率の高さに対応する陽性尤度比(ようせいゆうどひ)は5.7でしたが、6時間以内のCTで異常が見つかったときの陽性尤度比は230でした。
総合的にどのような場合に腰椎穿刺を行うべきか検討した結果は次のようになりました。
診断制度および試験のリスクと利益に対してプールした推定値を用いた結果、我々は腰椎穿刺が有益なのはCT陰性の患者であって腰椎穿刺前のくも膜下出血の確率が5%程度である場合、すなわちCTを撮影する前の確率が20%を超える場合に限られると推定した。
症状などからかなりくも膜下出血の疑いが強いと見られたにもかかわらずCTで異常が見つからなかった人にだけ、腰椎穿刺を行うことが有益になると推定されました。
激しい頭痛でくも膜下出血を疑うべき場面は?
くも膜下出血の検査の信頼度のデータが示されました。医師が診断のためにどの検査をするか選ぶための重要な手掛かりになります。
腰椎穿刺は、背中に針を刺して髄液という液体を抜き取り、髄液が流れている脳の周りの様子を調べる検査です。重要な情報が得られる一方で、脳につながった部分に針を刺すことにはリスクもあります。腰椎穿刺が必要な場合を適切に選ぶことができれば、検査によるリスクを低く抑えることにつながります。
また、患者が自覚できる要素も診断の役に立つとされました。突然の激しい頭痛とともに首が痛い、首が硬くなって動かないといった症状が出たときは急いで病院に行ったほうがいいでしょう。
突然の激しい頭痛が始まったときは、片頭痛や三叉神経痛など、直接命に関わることはない病気の可能性もあります。一般に次のような症状・状態は脳や頭の中の異常が疑われます。
- 50歳以降で初めて発症した頭痛
- 手足が動きにくい
- しゃべりにくい
- 意識がもうろうとしている
- 変なことを言う
- がんや免疫不全(薬や病気が原因で免疫力が低下していること)の状態である
当てはまるときは迷わず病院に行ってください。今回紹介したような研究によって、気を付けるべきポイントがより正確に評価できるようになります。
執筆者
Spontaneous Subarachnoid Hemorrhage: A Systematic Review and Meta-analysis Describing the Diagnostic Accuracy of History, Physical Examination, Imaging, and Lumbar Puncture With an Exploration of Test Thresholds.
Acad Emerg Med. 2016 Sep.
[PMID: 27306497]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。