◆ペッサリーの効果は?
ここで紹介する研究では、対象者として骨盤臓器脱の症状があり、最も重症のステージIVを除くステージIからステージIIIにあたる女性が選ばれました。
対象となった276人の女性は、骨盤底筋トレーニングだけを行うグループ(対照群)と、トレーニングに加えてペッサリーを装着するグループにランダムに分けられました。12か月後に症状と生活の質の改善を評価しました。
ペッサリーとは腟から挿入して子宮の入口に取りつける器具です。ペッサリーが子宮を支えることで症状の改善を図ります。
◆ペッサリーを使ったほうが改善が大きい
研究開始から12か月後に2種類の採点表で骨盤臓器脱の症状を調べた結果、両方のグループで改善があり、ペッサリーを使ったグループのほうがより大きく改善していました。
研究班は「骨盤底運動に加えて腟ペッサリーを使った女性で骨盤臓器脱の症状と生活の質が改善した」と結論しています。
骨盤臓器脱が重症の場合などでは手術が必要になります。手術方法のひとつとして行われているメッシュ手術は、再手術や尿が出なくなるなどの合併症もあり、アメリカ食品医薬品局(FDA)は「骨盤臓器脱のメッシュによる経腟修復が伝統的なメッシュ以外の修復法よりも有効かどうかは明らかでない」という見解を示しています。
ペッサリーは手術前の一時的な治療として使われることもありますが、この研究では1年間続けて効果が出ています。
それぞれの治療法のメリット・デメリットが実際のデータから確かめられることで、一人一人に合った治療法を選ぶ助けになるかもしれません。
執筆者
Vaginal Pessary in Women With Symptomatic Pelvic Organ Prolapse: A Randomized Controlled Trial.
Obstet Gynecol. 2016 Jul.
[PMID: 27275798]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。