2016.08.03 | ニュース

子供の耳が詰まって聞こえにくい、滲出性中耳炎に抗生剤は本当に要る?最新の研究状況は

文献の調査から

from The Cochrane database of systematic reviews

滲出性中耳炎は、子供に多く、耳が詰まった感じや聞こえにくいなどの症状が長く続きます。薬で改善しにくい場合も多く、鼓膜切開や鼓膜チューブ留置などの手術も行われます。これまでの研究で抗生剤の効果が見られているかが調査されました。

◆なぜ滲出性中耳炎に抗生剤を使うのか?

滲出性中耳炎の一部は、細菌の感染による急性中耳炎が原因で起こります。急性中耳炎によって鼓膜の内側に滲出液が溜まると滲出性中耳炎の状態になり、鼓膜の動きが邪魔されることで音が聴こえにくくなります。

感染が続いて滲出性中耳炎の原因になっていれば、抗菌薬(抗生剤、抗生物質)で細菌を除くことで改善があると考えられます。

 

◆2016年までの研究報告を収集

ここで紹介する研究は、子供の滲出性中耳炎に対する抗菌薬治療の効果と副作用が、これまでの研究でどのような結果として現れているかを調べたものです。

2012年にも同様のテーマの調査がありましたが、最新の研究も含めるよう、改めて調査が行われました。

 

◆改善あり、ただし副作用も

採用基準を満たした25件の研究のうち、データを統合できたものから次の結果が得られました。

経口抗菌薬によって、ランダム化ののち2か月から3か月の時点で完全寛解(一次アウトカム)が得られる見込みが、対照治療に割り当てられた対象者よりも高くなる(リスク比2.00、95%信頼区間1.58-2.53、NNTB5)ことの中等度の質のエビデンス(計484人の子供を対象とした6件の試験)が得られた。

抗菌薬の飲み薬を使うことで、自然に治ると期待される数を除いて、薬を飲んだ子供のうち5人に1人の割合で、2か月後から3か月後の時点で症状が完全になくなっているという結果でした。

一方で、副作用について次の結果がありました。

しかし、経口抗菌薬で治療された子供は下痢、嘔吐、皮疹(一次アウトカム)を経験する見込みが対照治療に割り当てられた子供よりも多い(リスク比2.15、95%信頼区間1.29-3.60、NNTH20)ことを示すエビデンスが、低い質ながら(5件の試験、計742人の子供)得られた。

抗菌薬を飲んだ子供のうち、自然に起こる症状の頻度を差し引くと20人に1人の割合で、副作用によると思われる下痢・嘔吐・発疹が出ていたというデータがありました。

 

抗菌薬の効果を示すデータとともに、副作用もかなりの数にのぼるというデータが見つかりました。一人一人の子供に抗菌薬が適しているかどうかは、ほかの治療選択肢と比較してよく考えたうえで判断するべきでしょう。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Antibiotics for otitis media with effusion in children.

Cochrane Database Syst Rev. 2016 Jun 12.

[PMID: 27290722]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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