腸の吸収をブロックする「十二指腸空腸バイパススリーブ」の効果とは?

極度の肥満に対して、胃を小さくする減量手術がありますが、体に傷をつけず、取り外すことのできる装置も開発されています。減量効果としてこれまでに報告された研究結果がまとめられました。
◆十二指腸空腸バイパススリーブとは?
ここで紹介する研究は、「十二指腸空腸バイパススリーブ(DJBS)」という装置の効果について調べています。
DJBSは筒状の装置です。胃の続きにある十二指腸と空腸にDJBSを挿入して腸を内張りすると、食品が腸に触れることなくDJBSの中を通過するようになります。
十二指腸から空腸上部は、糖質を含む多くの栄養素を吸収している部分ですが、DJBSが入っている部分では腸が食品に触れないので吸収できなくなります。DJBSは、食品と腸を隔てることで、食べても吸収されないで出て行くようにする効果を狙っています。
◆これまでの研究報告をまとめ
研究班は、これまでにDJBSの効果を調べた研究報告を集め、内容をまとめました。15件の研究が見つかりました。
◆極度の肥満の人の体重が減った
見つかった研究の結果をまとめると次のようになりました。
平均の
BMI は30kg/m2から49.2kg/m2であり、対象者の10%から100%が2型糖尿病を持っていた。メタアナリシスによると、DJBSは食事の改善に比べて、体重の差-5.1kg(95%信頼区間-7.3から-3.0、4件の研究、151人、I2=37%)および体重減少量の差12.6%(95%信頼区間9.0-16.2、4件の研究、166人、I2=24%)と有意 に関連した。有害事象は主に腹痛、吐き気、嘔吐から成っていた。
研究の対象とされていた人は、BMI(体重÷身長÷身長)が平均30から49.2と肥満がありました。研究の中で、DJBSを入れた人では食事を改善した人よりも体重が5kg程度軽くなっていました。
腹痛や嘔吐を起こした人もいました。
欧米では高度の肥満による健康問題が重視され、減量手術や減量のための治療もさまざまな角度から研究されています。日本人の感覚からするとBMI30以上というのはかなりの肥満に思えるかもしれませんが、世界的には少なくない人が高度の肥満に悩まされ、治療技術も必要とされています。
執筆者
Effect of the EndoBarrier Gastrointestinal Liner on obesity and type 2 diabetes: a systematic review and meta-analysis.
Diabetes Obes Metab. 2016 Mar.
[PMID: 26537317]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。