◆解熱鎮痛剤の種類は大きく分けて2つ
発熱や痛みといった症状が見られたときに使われる「解熱鎮痛剤」は、多くが「非ステロイド性抗炎症薬(通称:NSAIDs〔エヌセイズ〕)」に分類されます。よく耳にするロキソニン®(成分名:ロキソプロフェンナトリウム水和物)もNSAIDsのひとつです。ロキソプロフェンナトリウムはOTC医薬品(市販薬)としても販売されていて「解熱・鎮痛にはロキソニン」と考える方も少なくないかと思います。しかし何にでもNSAIDsを飲めば良いというわけでもなく、他の解熱鎮痛薬が適している状況もあります。そもそも、解熱鎮痛薬はどのような種類があるのでしょうか?
大きく分けると、以下の2つになります。
- NSAIDsに分類される解熱鎮痛薬
- NSAIDsに分類されない解熱鎮痛薬
NSAIDsに分類される解熱鎮痛剤は、先ほど紹介したロキソニン®をはじめ、医療用医薬品としてはブルフェン®(成分名:イブプロフェン)、バファリン®配合錠A330(成分名:アスピリン〔アセチルサリチル酸〕)などがあります。
一方、NSAIDsに分類されない解熱鎮痛剤としてはカロナール®などのアセトアミノフェン製剤が臨床でも広く使われている薬剤になっています。一般的なNSAIDsには含まれないため、鎮痛薬の使用方法について定めたガイドライン等においては「NSAIDsやアセトアミノフェンは・・・」と個別に表記されています(薬剤の分類方法などによっては便宜上、アセトアミノフェンがNSAIDsに含まれることもあります)。
「カロナール®」は、「ロキソニン®」などのNSAIDsと比べると一般的に鎮痛作用はやさしめですが、インフルエンザの時にも比較的安全に使用でき、また子どもや妊婦にも使えるのが特徴です。それでは次に、これらの違いについて詳しく見ていきましょう。
◆ロキソニン®などのNSAIDsとカロナール®の違いとは?
「カロナール®」は「解熱鎮痛薬」の中でも他の薬剤にない特徴を持っています。一般的なNSAIDsと比べると、以下のような特徴があります。
- 抗炎症作用がほとんどない(一般的なNSAIDsと比べるとかなり少ない)
- インフルエンザの時に使っても「インフルエンザ脳症」が起こる危険が少ない(日本小児神経学会「インフルエンザ脳症はどうしたら予防できますか?」を参照)
- 幼い小児でも使用できる(NSAIDsには年齢制限などによって小児へ使用ができない薬剤がある)
- 妊娠中でも使用できる(但し、一般的には医師の診断の下で治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合)
一方、共通点としては以下のような特徴があります。
- 解熱や鎮痛を目的に使用する
- シクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害し「プロスタグランジン」の産生を抑制する作用がある(但し、COXのタイプによって阻害作用の強弱に差があると言われている)
- 胃腸障害がある(但し、アセトアミノフェンは一般的なNSAIDsに比べ、胃腸障害が少ない薬剤とされる)
- アスピリン喘息には使用できない
◆どんな時にカロナールを選ぶの?
それでは最後に前述の特徴を踏まえて、どんな時にカロナール®を選ぶと良いのか解説します。
カロナール®の鎮痛効果は一般的なNSAIDsと比べるとやさしめです。そのため、痛みが非常に強い場合の解熱鎮痛薬にはロキソニン®などのNSAIDsがより好まれる傾向にあります。
しかしNSAIDsは小児に適応がない薬も多いため、一般的に子どもの痛み止めには「カロナール®」などのアセトアミノフェン製剤を選ぶ必要があります(例えば、「ロキソニン®」は15歳未満の小児への適応がありません)。さらに「インフルエンザ脳症」の観点から、大人であろうと子どもであろうとインフルエンザの解熱にNSAIDsは使うべきではないという意見もあります。(臨床上「ロキソニン®」などのロキソプロフェンナトリウム製剤がインフルエンザ時の解熱目的で処方される場合もあります。インフルエンザの解熱に関しては処方医の指示の下、適切に対処することが大切です)
こうした点から一つの事例として、大人の場合は「痛み止め」にはロキソニン®などのNSAIDs、「解熱」にはカロナール®を選択するということは理にかなった使い分けと言えるかもしれません。一方、子どもや妊婦の場合では安全性などを考慮した上で、その目的が「痛み止め」でも「解熱」でもカロナール®を選ぶことが多くなります。ただし、子どもや妊婦であっても、痛みが強くカロナール®では治まらない場合は、より鎮痛効果の強いNSAIDsを使用することもあるので留意しましょう。またロキソニン®では主に胃腸障害、カロナール®では(頻度は非常に稀とされていますが)肝障害など、特に注意すべき副作用の観点から薬が選択されることもあります。
今回は、主に解熱鎮痛薬としてカロナール®とロキソニン®などのNSAIDsの違いについて解説してきました。ついつい身近に感じる薬を選択しがちかもしれませんが、どのような薬を選べば良いかその適応なども考えながら医師や薬剤師などの専門家とよく相談し、自身の体質・症状などに適した薬剤を使うことが大切です。
【編集部注】
この記事は、「お薬Q&A ~Fizz Drug Information~」のサイト内で公開中の記事をもとに作成しています。
http://www.fizz-di.jp/archives/1033868268.html
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。