2016.03.12 | コラム

変形性股関節症のリハビリ方法について解説

股関節周囲の筋肉に対する目的

変形性股関節症のリハビリ方法について解説の写真
1.変形性股関節症のリハビリの目的
2. 変形性股関節症ではどんなリハビリをするのか

変形性股関節症は、股関節の痛みや歩行障害などを主とした症状が見られ、その改善のためには手術などの治療に加えてリハビリが非常に大事です。どんなリハビリを行うことが良いのでしょうか?解説します。

◆変形性股関節症のリハビリの目的

変形性股関節症は、脚の付け根などの痛みを伴い、歩行障害や日常生活を送る上で必要な動作の障害が現れる病気です。股関節は、大腿骨と呼ばれる太ももの骨と、骨盤の臼蓋と呼ばれる受け皿で成り立っています。大腿骨のうち臼蓋に近い大腿骨頭という部分が変形したり、大腿骨頭と臼蓋の間にある軟骨がすり減ったりすることで、痛みなどの症状が現れます。体重をのせると痛い、押すと痛い、何もしていなくても疼くといった症状も見られます。

歩いたり、日常生活の動作を行ったりすることで痛むため、体を動かさないように行動が変わってしまい、さらに筋力が低下することによっても痛みが増すことがあります。そのため変形性股関節症ではリハビリが非常に重要となります(もちろん、手術も選択されることが多い病気です)。特に、変形性股関節症で低下する機能としては、主に以下のものが挙げられます。

 

  • 股関節周囲の筋力

    • 変形性股関節症では、股関節が変形します。すると、骨についている筋肉は、骨の配列(アライメントと言います)が変わることで、力を発揮しづらくなってしまいます。力を発揮しづらくなると、その筋肉を使わないで動作を行う癖がつくことで、さらに筋肉を使わなくなります。また、痛みによって動かさなくなるといったことも関係し、筋力が低下します。

  • 関節可動域

    • 筋力と同様に、骨の変形や関節の隙間が狭くなることで、関節を動かせる範囲(可動域)が狭くなります。変形性股関節症の場合は、股関節の曲げ伸ばし、外に足を広げる動きなどが障害されやすいです。

 

これらの機能が低下することに、さらに環境や運動の方法など様々な要因が重なり、能力(例えば、バランス能力や歩くスピード、階段を上れるかなど)に影響することになります。このような中で、機能や能力といった部分を改善するためには、リハビリが大事になります。

一方で、変形性股関節症が臼蓋形成不全という原因によって引き起こされている場合などで、骨の変形に対する手術が根本的な治療となることもあります。また人工股関節全置換術などの手術方法も症状の改善などの効果があります。

あくまで手術による治療を十分視野に入れたうえで、機能・能力改善を図ることがリハビリの目的です。

 

◆変形性股関節症ではどんなリハビリをするのか

変形性股関節症のリハビリはその重症度によっても異なりますが、目的を細かく2種類に分けられます。

ひとつが、筋力などを現状からさらに悪くならないようにすることです。もうひとつが運動のより効率的な方法を学ぶことです。

 

前者では、筋力や関節可動域の改善を図りながら、日常生活動作の練習をすることになります。変形性股関節症はしだいに進行する病気なので、痛みが強くなることもありますし、重症度が増すと何をやっても痛みは取れないということもあります。重症化している場合は、手術を行うまでできるだけ機能を低下させないようにリハビリを行います。

後者では、現状の骨や筋肉の状態に対して最適な運動方法を学ぶということになります。例えば、歩き方がどうしても痛みが出やすいものになっているとすると、インソール(靴の中敷を、運動を誘導できるように成形したもの)を入れることで、少し効率的にかつ痛みが出ないように歩けることもあります。

 

このいずれに関しても、重症であればあるほど、手術を行わなければ痛みや動作の改善は図れないという状況になるため、主治医と相談しながらリハビリの限界も踏まえた上で治療に臨むことが大事です。

 

以下では、一般に行なわれているリハビリの方法について説明します。

 

  • ストレッチ

    • 股関節や体幹、膝などの硬くなっている関節を伸ばします。無理矢理伸ばしたり曲げたりすることは、逆効果になる可能性もありますので、注意する必要があります。

  • 筋力トレーニング

    • 股関節周囲を含め、弱くなっている筋力やより効率的に動作を行うために必要な筋力を鍛える練習です。あまり無理して行うと、炎症を悪化させることもあるため注意してください。

  • バランス練習

    • 筋力や関節可動域が低下していると、バランス能力が低くなることがあります。現状の機能でバランスを保てるようにしなければいけないため、練習が必要です。

  • 歩行練習

    • 歩く距離や安全な歩き方を学ぶ必要があるため、リハビリを行います。

  • 日常生活動作練習

    • 日常生活で困っている動きを確認し、どのような方法が良いか工夫しながら練習します。

 

これらのリハビリは、外来などで指導を受けて行い、場合によっては自宅で練習するように指導されるものです。

重症度によっても異なりますが、リハビリは専門家の話をよく聞いた上で行い、ご自身の判断だけで過度な練習を行うことにはご注意下さい。

執筆者

Shuhei Fujimoto

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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