◆2,912組を分析
老人医療や在宅医療の分野では、経静脈栄養と経腸栄養のどちらが適しているかがよく問題になります。今回の研究は、これらを受けている患者の短期の死亡率 を比較しました。
対象は、2012年から2013年に日本全国の病院で経静脈栄養または経腸栄養を受けたがん以外の成人入院患者から、経静脈栄養を受けた人2,912人、経腸栄養を受けた人2,912人を、条件が近い人どうしの組で選びました 。
◆経腸栄養は経静脈栄養より死亡率が38%低い
以下の結果が得られました。
人工栄養を開始してから30日後の死亡率は、経静脈栄養グループ7.6%、経腸栄養グループ5.7%(p=0.003)、90日後の死亡率は経静脈栄養グループ12.3%、経腸栄養グループ8.9%(p=0.002)だった。
Cox回帰分析の結果、経静脈栄養グループと比べた経腸栄養グループのハザード比は0.62(95%信頼区間0.54-0.71、p<0.001)だった。
経腸栄養は経静脈栄養に比べて、人工栄養開始後の死亡率が38%低いという結果でした。
今回は入院患者を対象に、条件が近い人どうしで比較が行われましたが、経腸栄養と経静脈栄養のどちらが適しているかは病状などによって変わるため、明らかに経静脈栄養のほうが良いと考えられる場合もあります。また、この結果が在宅で治療を受ける人にも当てはまるとは限りません。大切な栄養を摂る方法はどうすればいいのか、さらに探求が待たれます。
執筆者
Comparison of short-term mortality and morbidity between parenteral and enteral nutrition for adults without cancer: a propensity-matched analysis using a national inpatient database.
Am J Clin Nutr. 2015 Nov.
[PMID: 26447149]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。