2016.01.04 | ニュース

心筋梗塞で血の塊を吸い取る治療は逆効果?

10,732人の治療で検証

from Lancet (London, England)

心筋梗塞で血の塊を吸い取る治療は逆効果?の写真

心筋梗塞の治療には手術のほか、血管の中に細い管(カテーテル)を入れて、詰まった血管が再び流れるようにするPCIという方法がよく使われます。カテーテルを使って血の塊を吸い取る方法もそのひとつですが、効果を疑問視する声もあります。

◆心筋梗塞を血栓除去で治療

心筋梗塞は、心臓を取り巻いている冠動脈が、何らかの原因で詰まって流れなくなってしまい、先の部分に血液が届かなくなることで、胸痛の症状を起こしたり、心臓が止まって死亡する原因になる病気です。動脈硬化で血管の中が狭くなったり、血管の中で血の塊ができることなどにより起こります。

治療では冠動脈に再び血液が流れるようにする必要があります。代表的な治療法のひとつであるPCIには、カテーテルを使って血管の中で風船を膨らませ、狭くなった血管を広くする方法などがあります。血の塊を取り除く方法(血栓除去)もそのひとつです。

この研究は、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)というタイプの心筋梗塞の患者10,732人を対象として、血栓除去を行うグループと、行わないグループに分け、それぞれPCIで治療しました。治療後1年間の経過が調べられました。

 

◆改善なし、脳卒中が増える

次の結果が得られました。

1年時点での一次アウトカムの事象は、血栓除去群の患者5,035人中395人(8%)に、PCIのみの群では5,029人中394人(8%)に起こった(ハザード比1.00、95%信頼区間0.87-1.15、P=0.99)。

主要な安全性のアウトカムとして、1年以内の脳卒中は血栓除去群で60人(1.2%)に、PCIのみの群で36人(0.7%)に起こった(ハザード比1.66、95%信頼区間1.10-2.51、P=0.015)。

血栓除去を行ったグループと、行わなかったグループで、死亡や心筋梗塞の再発などを合わせた頻度に違いが見られませんでした。また、治療後1年間で、血栓除去を行ったグループのほうが、脳卒中の頻度が多くなっていました。

研究班は「結果として、血栓吸引はもはやSTEMIのルーチン戦略として推奨することができない」と述べています。

 

心筋梗塞の治療には最近の研究でもさまざまな改善が試みられていますが、ここでは血栓除去による効果が見られませんでした。この結果は今後の治療法に影響するかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Outcomes after thrombus aspiration for ST elevation myocardial infarction: 1-year follow-up of the prospective randomised TOTAL trial.

Lancet. 2015 Oct 12 [Epub ahead of print]

[PMID: 26474811]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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