◆20歳以上の聴力検査の結果
研究班は、過去の健康調査のデータを使い、20歳から69歳の人5,223人を対象として、聴力検査の結果と、冠動脈疾患の診断を受けていたかどうかについて、統計解析を行いました。
職業と関係すると言われる騒音性難聴には、両耳で高い音が聞こえにくくなる特徴(両側高周波数聴力低下)があると言われています。ここでは聴力低下があった場合、その特徴についても分けて解析が行われました。
◆両側高周波数聴力低下と冠動脈疾患に関連あり
次の結果が得られました。
さまざまな共変数で調整したうえで、高周波数聴力が正常の人と比べて、両側の高周波数聴力低下がある人は、冠動脈疾患があることが多かった(オッズ比1.91、95%信頼区間1.28-2.85)。この関連は現在雇用されている労働者で、職業上の大きな騒音に曝露している人で特に強かった(オッズ比4.23、95%信頼区間1.32-13.55)。
両側高周波数聴力低下がある人に、高周波数聴力が正常の人よりも冠動脈疾患が多く見られました。特に、職業上大きな音がある環境にいる人で、その関連が強く見られました。
冠動脈疾患を起こす動脈硬化はさまざまな原因によって進みやすくなると言われています。この研究の方法では、騒音のある職業の人で動脈硬化に関わる生活習慣などが多かった可能性も否定できず、騒音そのものが冠動脈疾患の原因かどうかは断定できませんが、騒音の影響について検討する手掛かりになるかもしれません。
執筆者
Exposure to loud noise, bilateral high-frequency hearing loss and coronary heart disease.
Occup Environ Med. 2015 Sep 15 [Epub ahead of print]
[PMID: 26374778]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。