2015.09.26 | ニュース

抗がん剤で治せなかったヘアリーセル白血病に、ベムラフェニブの治療効果は?

50人の単一グループ試験

from The New England journal of medicine

抗がん剤で治せなかったヘアリーセル白血病に、ベムラフェニブの治療効果は?の写真

ヘアリーセル白血病はまれな病気で、治療にはプリン誘導体という種類の抗がん剤がありますが、十分な効果が得られない場合もあります。ベムラフェニブという、悪性黒色腫の治療でも使われる薬を使う研究が行われました。

◆プリン誘導体で再発または難治性

ベムラフェニブは、悪性黒色腫のうちでもBRAF V600Eという遺伝子変異がある場合に有効とされています。この研究では、BRAF V600Eがヘアリーセル白血病でも見られることに着目し、プリン誘導体の治療後に再発したか、プリン誘導体で十分な効果が得られなかった患者を対象として、ベムラフェニブを使った治療を行いました。

研究はイタリアとアメリカで行われました。

 

◆1年生存率91%

次の結果が得られました。

完全寛解の率はイタリアの研究で35%(26人中9人)、アメリカの研究で42%(24人中10人)だった。イタリアの試験では、中央値23か月のフォローアップののち、無再発生存期間の中央値は完全寛解が得られた患者で19か月、部分寛解のあった患者で6か月だった。

アメリカの研究では、1年の時点で、無増悪生存率は73%、全生存率は91%だった。薬剤関連有害事象は通常はグレード1または2であり、最も多く用量減量の原因になったのは皮疹と関節痛または関節炎だった。二次性皮膚腫瘍は50人のうち7人に発生した(単純切除で治療された)。

白血病の細胞が見つからなくなる完全寛解が、イタリアでは対象者の35%、アメリカでは42%に見られました。イタリアでは、完全寛解が得られた人がその後再発なく生存した期間は、該当者の半数で19か月以上でした。アメリカでは、治療1年後の生存率は91%でした。副作用について、イタリアとアメリカで計7人に治療が原因と見られる皮膚の腫瘍ができたという報告などがありました。

 

この研究は、ベムラフェニブを使わなかった場合との比較をしていないため、効果がどの程度のものだったかは正確には評価できません。ベムラフェニブが実際に広く使われるためにはさらに研究が必要です。

ほかの薬だけでは治療が難しい場合に、新しい選択肢となる薬がもし加われば、恩恵を受ける患者がいるかもしれません。今後の研究結果に期待がかかります。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Targeting Mutant BRAF in Relapsed or Refractory Hairy-Cell Leukemia.

N Engl J Med. 2015 September 9

[PMID: 26352686] http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1506583#t=article

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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