2015.08.12 | コラム

たくさんあるワクチンを効率よく受けるには?〔小児科に行く前に〕

同時接種は危険なの?何本まで一緒に接種して大丈夫?

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近年、お子さんがうけるワクチンが増えています。予防接種の接種推奨期間は、その年齢に予防すべき疾患に合わせて設定されています。推奨期間内に適切に接種することで、重篤な疾患を防ぐことができます。効率よくワクチンを接種するには同時に複数本接種する方法が海外では主流です。

今回は、ワクチンの同時接種について解説していきたいと思います。

まずはよくある質問3点を簡単に解説します。「①同時接種をして効果は大丈夫?」「②同時接種は危険なの?」「③何本まで同時に接種できるの?」この3点です。

① 同時接種すると効果は大丈夫?

全く問題ありません。海外ではむしろ同時接種が一般的で、ワクチンの有効性や副反応について、同時接種と単独接種では差がないことが科学的に証明されています。

② 同時接種は危険なの?

ワクチン同時接種の安全性については、日本小児科学会が次のように意見をまとめています。

  1. 複数のワクチン(生ワクチンを含む)を同時に接種した際の、それぞれのワクチンに対する有効性
    複数のワクチン接種によって効果が減少することはない
  2. 複数のワクチン(生ワクチンを含む)を同時に接種した際の、ワクチン接種の有害事象、副反応
    複数のワクチン接種によって有害事象、副反応の頻度が上がることはない

③ 何種類まで同時接種できるの?

同時接種において、接種できるワクチン(生ワクチンを含む)の本数について日本小児科学会が次のように意見を表明しています。
→本数に原則制限はない。同時にいくつもの接種をしても問題はない

 

ではもう少し詳しく解説していきます。

保護者の皆さんから、「複数のワクチンを同時に接種すると、どんな問題がありますか?」という質問をよく受けます。答えは、「全く問題ありません」です。

乳幼児期に受けるべき重要なワクチンは、BCG、四種混合、MR、ヒブ、肺炎球菌など他にも数多くあり、接種回数も複数回に及ぶため、赤ちゃんの体調の良い時を狙って1回1種類ずつ個別に接種していくのは、かなりの時間的な制約と負担になります。

日本では従来、1回に1種類のワクチン接種という厚生労働省の予防接種実施要領があり、医師は特別な事情がない限り、同時接種を控えるといった傾向がありました。

しかし近年、ワクチンの種類が増えてきたこと、夫婦共働きやこどもの習いごとや塾通いの増加などのライフスタイルの変化によって、複数のワクチンを単独で接種するための時間を作れず、接種率が低下するという問題が生じています。こうした親の負担を軽減するためにも、同時接種を推進する動きが高まっています。

そんな矢先、2011年2月、小児用肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンなどを同時に接種した乳幼児の死亡例が7件報告され、同時接種に対してさらに不安を感じられた方も多いと思います。しかし、その後の詳しい調査の結果、ワクチンの品質に問題はなく、同時接種と死亡の明確な因果関係は認められませんでした。死亡した7名の患者のうち3人には心臓病などの基礎疾患があり、また他の患者についても乳幼児突然死症候群や感染症が死因である可能性があることがわかりました。

つまり、基本的には同時接種したからといって、単独接種でも起こる可能性のある副反応のリスクが高まるわけではないということです。

 

ワクチンによって命にかかわる重篤な疾患が予防できます。そして、ワクチンによって多くの命が救えます。
適切な時期に適切な予防接種を受けることが重要です。ワクチンの重要さをよく理解し、お子さんが重篤な疾患にかかるのを予防しましょう。

 

【編集部注】

この記事は、「キャップスクリニック」のサイトで公開中の記事をもとに作成しています。

http://www.caps-clinic.jp/forparents

執筆者

白岡 亮平

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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