◆インフルエンザウイルスに肺炎球菌の物質を作らせる
インフルエンザによって、空気の通り道にある気管やのどの組織がダメージを受けると、肺炎球菌など、ほかの病原体にも感染しやすい状態になると考えられています。この研究は、同時に感染することの多いインフルエンザウイルスと肺炎球菌の両方に対して、ひとつのワクチンで同時に予防効果を得ることを目指しています。
この研究では、インフルエンザウイルスの遺伝子を組み換えて、複製に必要な物質を作れないようにし、代わりに肺炎球菌の表面タンパク質をウイルスが作るようにしました。
作られたウイルスは、普通のウイルスのように複製できないためインフルエンザを起こすことがなく、またインフルエンザウイルスと肺炎球菌の両方の抗原(免疫を引き起こす物質)を持っているため、接種するとインフルエンザウイルスと肺炎球菌の両方に対してワクチンとして予防効果を現すことが期待されました。
◆マウスの感染症を予防
作られたワクチンをマウスに与えたところ、次の結果が得られました。
経鼻的に免疫されたマウスは致死量のインフルエンザウイルスまたは肺炎球菌から守られた。これらのマウスはインフルエンザウイルス感染に続く二次性の肺炎球菌肺炎からもまた完全に守られた。
マウスにワクチンを接種したのち、インフルエンザウイルスまたは肺炎球菌に触れさせたところ、どちらに対しても感染症を予防する効果が見られました。また、インフルエンザを発症したあとで肺炎球菌による肺炎が起こることがありませんでした。
研究班は「これらの結果は、この組み換えインフルエンザウイルスがインフルエンザとともに一次性また二次性の肺炎球菌肺炎に対する新しい強力な二価ワクチンとして働くことを示す」と結論しています。
マウスの結果が人間にも当てはまるかどうかは確かではありませんが、期待のつながる結果が得られました。肺炎球菌だけでなくほかの病原体に対しても効率的にワクチンを作ることができるかといった応用の可能性にも、興味が引かれます。
執筆者
A bivalent vaccine based on a PB2-knockout influenza virus protects mice from secondary pneumococcal pneumonia.
J Infect Dis. 2015 Jun 29 [Epub ahead of print]
[PMID: 26123562]
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