2015.06.18 | ニュース

血液をサラサラにする抗凝固薬、65歳以上の人で副作用に違いが?

消化管出血率の調査結果から

from BMJ (Clinical research ed.)

血液をサラサラにする抗凝固薬、65歳以上の人で副作用に違いが?の写真

血のかたまりが脳などの血管に詰まってしまう血栓症を防ぐ、ワーファリンという薬は、納豆やほうれん草などの食事制限が必要であったり、出血しやすくなる副作用があります。同じように血を固まりにくくする薬で、食事制限の要らないもの(ダビガトランとリバーロキサバン)が最近開発され、著者らが出血率を比較したところ、65歳以上の人が使うとワーファリンよりも出血率が高い結果となりました。

◆消化管出血率に着目した抗凝固作用の比較

著者らは下記の条件で、過去データを用いた研究を行いました。

対象者:ダビガトラン、リバーロキサバン、ワーファリンに関する2010年11月1日から2013年9月30日までの新規服用者。

主要アウトカムと尺度:新規経口抗凝固薬の効果を心房細動のない患者とある患者でワーファリンと比較する為に、全体の消化管出血、上部消化管出血、下部消化管出血の割合を算出した。その方法として発生率(100患者年あたりの発生数)と傾向スコアでマッチしたCox比例ハザードモデルを利用した。加齢に関連する治療効果の不均一性は、限界効果モデルを用いて調べた。

つまり各種の抗凝固薬服用患者に対し、消化管の出血率を比較しています。

 

◆65歳以上ではワーファリンの方が利点あり

以下の調査結果となりました。

傾向スコアマッチングでは、新規経口抗血液凝固薬による消化管出血のリスクは心房細動の有無に関わらず、ワーファリン服用と同等であった。

65歳から76歳まで、心房細動のある患者における消化管出血率は、ワーファリンを服用するよりも、ダビガトランの方でリスクが増加する(ハザード比2.49(95%信頼区間1.61から3.83)。またリバーロキサバン服用では、心房細動の有無に関わらずワーファリン服用よりも発生率が高まる (心房細動有りの場合の出血率2.91(95%信頼区間1.65から4.81)、無しの場合4.58(95%信頼区間2.40から8.72)。


つまり、65歳以下ではどの薬剤も同等の消化管出血率ですが、65歳以上では、ワーファリンの方が新しい抗凝固薬よりも消化管出血率が抑えられる結果となりました。

著者らは結論として、「新しい経口抗凝固薬を使用した場合の消化管出血率はワーファリンと同等である。75歳を超える患者に新しい経口抗凝固薬を使用する際は、注意を喚起すべきである」としました。

 

これら2種の薬剤は食事制限の必要がなく、ワーファリンとは違う利点があります。ですがこの結果を見ると消化管出血が増える場合があるのかもしれません(ただし新しい薬を使っていた人に、もともと消化管出血を起こしやすい人が多かった可能性は完全には否定できません)。全てにおいて良い薬を作るのは、中々難しそうです。

執筆者

高田

参考文献

Comparative risk of gastrointestinal bleeding with dabigatran, rivaroxaban, and warfarin: population based cohort study.

BMJ. 2015 Apr 24

 

[PMID: 25910928 ] http://www.bmj.com/content/350/bmj.h1857

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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