◆カンガルーケアと痛み
過去の研究で、カンガルーケアをしている間は、子どもに痛み刺激を与えても痛がる反応が少ないとされています。ただし、1回の痛みに対しての効果は検証されていますが、繰り返し痛みを与えたときにも同様の効果が続くかどうかは確かめられていません。この研究では、早産児では採血など痛みをともなう処置が多く必要になることから、早産児を対象として、繰り返し痛みを与えたときのカンガルーケアの効果を調べています。
効果は、かかとに針を刺したとき、子どもが痛がる様子に違いがあるかで評価しました。かかとに針を刺す方法は子どもの採血でよく使われます。
◆80人の早産児をランダム化
この研究の対象者は次のように選ばれ、2つのグループに分けられました。
妊娠週齢37週未満で産まれた早産児80人が対象となった。対象者は乱数表によって保育器のグループ40人とカンガルーケアのグループ40人に割り付けられた。
80人の早産児が対象者となり、保育器のグループとカンガルーケアのグループにランダムに振り分けられました。
研究班はまず、対象としたすべての早産児を保育器に入れたままで、かかとから採血しました。次に保育器のグループは保育器に入れたまま3回、カンガルーケアのグループはカンガルーケアの状態で3回、かかとから採血し、痛がる様子を観察しました。
◆3回続けても効果あり
比較から次の結果が得られました。
75の早産児がプロトコルを終えた。グループ間の比較によって、繰り返しかかとに針を刺している間、保育器のグループ(37人)よりもカンガルーケアのグループ(38人)で、針を刺したあと血液を吸い出す相から針を抜く相にかけて、心拍数は少なく、泣き続ける時間と顔をしかめている時間はどちらも有意に短いことがわかった。
カンガルーケアのグループで、採血のときの心拍数が比較的上がらず、泣き止むまでの時間が短くなっていました。
研究班は、「繰り返し行われるカンガルーケアの鎮痛効果は、早産児の度重なる痛みを伴う処置のあいだも安定して続く」と結論しています。
子どもからすると、痛みが減るというよりは、痛くてびっくりしたり不安な気持ちになるのが紛れているのかもしれませんが、泣く子をあやす母親や医療従事者にとってはともかく少し楽になりそうな結果です。検証が重なれば、もっと広く知られるようになるかもしれません。
執筆者
Effect of repeated Kangaroo Mother Care on repeated procedural pain in preterm infants: A randomized controlled trial.
Int J Nurs Stud. 2015 Apr 9
[PMID: 25912524]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。