白内障の手術、簡単な設備でも安全
白内障では眼球の中にあってレンズの役割をする「水晶体」が濁り、目が見えにくくなります。治療として水晶体を人工のレンズに置き換える手術があります。この手術は入院せず外来で、比較的簡単な設備を使って行われることもあります。オランダの医療機関から、麻酔専門の医師がつかないなど簡単なセッティングで行った白内障手術の結果、緊急の事例は約7千回に3回と少なかったことが報告されました。
◆外来で白内障手術を受けた人が対象
研究班は、研究に参加した医療機関の眼科外来で、2011年から2012年の間に局所麻酔による白内障手術を受けた人全員を対象に、手術後の経過をまとめました。
対象者に対する手術は、以下のように簡単なセッティングで行われました。
- スタッフは執刀する眼科医1人と、アシスタントの看護師2人
- 麻酔専門の医師は関わらない
- 手術の前後の検査は血圧とプレチスモグラフィーに限る
- 緊急の場合には緊急医療チームが救助できる
◆緊急の事例は約7千回の手術で3回
4,347人の患者に対して行われた6,961件の白内障手術の結果、緊急の事例は以下のとおりでした。
2年の研究期間に、
水晶体 乳化吸引・眼内レンズ挿入手術のパスウェイに関連して、緊急医療チームの参加を必要とした事例は3回(0.04%)あった。そのうち手術中に起こったものはなかった。3人とも血管迷走神経性虚脱によるもので、悪化することなく回復した。入院を必要とした事例はなかった。研究期間に、眼科外来受診者全体でこれ以外の緊急の事例は8件起こった。
緊急医療チームの参加が必要だったのは3回で、いずれも入院の必要なく、悪化することなく回復しました。同じ期間に、研究が行われた眼科外来で、白内障手術以外の場合に緊急の事例は8回起こっていました。
研究班はこの結果を「白内障手術は外来診療所で、麻酔サービスなしで、精密検査とモニタリングが限定されていても、安全に行うことができる」とまとめています。
この結果は、白内障手術のうちリスクが低いと予測されたものは、予測のとおり悪い結果につながりにくい、ということを示唆しています。すべての白内障手術が低リスクだと示されたわけではありません。また、オランダでの研究ですので、日本では多少の違いがある可能性も考えられます。
とはいえ白内障の手術を受けようとしている人にとっては、参考になる材料かもしれません。
執筆者
Outpatient cataract surgery: incident and procedural risk analysis do not support current clinical ophthalmology guidelines.
Ophthalmology. 2015 Feb
[PMID: 25444350]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。