◆北京と上海で調査
動物実験では、以前からニッケルが血糖値を上げる現象が報告されていました。この研究では、北京と上海に住む55歳から76歳の参加者2,115人を対象に、尿中ニッケル濃度が計測され、2型糖尿病との関連が検討されました。また、空腹時血糖値など血液と尿の検査値も同時に比較されました。
◆ニッケルが多いほど2型糖尿病が多い
参加者全体のうち35.3%の747人が2型糖尿病でした。尿中ニッケル濃度が高いほど2型糖尿病が多い傾向があり、この傾向は生活習慣の要因、BMI、家族に糖尿病があるかどうかの効果を除いても、統計的に有意でした。また尿検査の値に影響しうる尿中クレアチニン、尿中CRPの効果を除いても同様の傾向が統計的に有意に見られました。
この研究からただちに「ニッケルは身体に悪い」と言うことはできません。どういう状況で北京や上海でニッケルが身体に入りやすいのか、といった背景も解釈に関係しそうです。
微量の金属が健康に与える影響にはまだ知られていないことも多く、こうした研究から新事実が見つかることもあるかもしれません。生活環境改善のためには今後の研究が期待されます。
執筆者
Nickel exposure is associated with the prevalence of type 2 diabetes in Chinese adults.
Int J Epidemiol. 2015 Feb
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