◆100件のERCPをランダム化
研究班は、100件のERCPを、放射線防護用の「ドレープ」という布のようなものでX線を出す機械の周りを覆うグループと、非放射線防護素材のドレープで覆うグループにランダムに振り分けました。放射線防護ドレープは、検査で見たい方向から逸れた放射線を吸収し、スタッフの被曝を減らすと想定されました。
それぞれのグループで、スタッフの体に計測装置を取り付け、被曝の量を測りました。計測装置は内視鏡を操作する医師の目と首、操作を補助する看護師の首に取り付けました。また、それらの計測値をもとに、年間での被曝量を推計しました。
◆放射線防護ドレープで被曝が約90%減
実効線量の平均は、医師の目で測ると防護ドレープを使ったとき0.02mSv、非防護ドレープのときは0.21mSvでした。医師の首では防護ドレープを使うと0.03mSv、非防護ドレープだと0.35mSvで、看護師の首では防護ドレープを使うと0.02mSv、非防護ドレープで0.27mSvでした。
ERCPをよく行う施設での年間の量に換算すると、医師は非防護ドレープを使うと126mSv、防護ドレープを使えば12mSvを被曝すると推計され、安全のため医療従事者に推奨されている年間20mSvの上限を下回る計算になりました。
現在、一般的には、検査を行う医療従事者は鉛の入ったエプロンのような防護服を着て行いますが、機械を覆うドレープで放射線を防護するのは一般的ではありません。
放射線を防護するドレープを使えば被曝量を大幅に減らせたというこの結果、一見当たり前のようですが、このように医療従事者の放射線防護にはまだ改善の余地があるのかもしれません。
執筆者
A Double-Blind, Randomized, Sham-Controlled Trial of the Effect of a Radiation-Attenuating Drape on Radiation Exposure to Endoscopy Staff During ERCP.
Am J Gastroenterol. 2015 Mar 31
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。