医療従事者の被曝を90%減らす方法
胆道がんなどの診断に使われる「ERCP」。内視鏡の先から造影剤を注入し、流れ出る様子をX線でリアルタイムに撮影する検査です。精度の高い診断の役に立ちますが、放射線被曝がレントゲンなどの検査よりも多く、検査を受ける人だけでなく、検査をする人にとっても重要な問題です。アメリカの研究班が、機械の周りを防護素材で覆い、検査スタッフの被曝量がどう変わるかを実験しました。
◆100件のERCPをランダム化
研究班は、100件の
それぞれのグループで、スタッフの体に計測装置を取り付け、被曝の量を測りました。計測装置は
◆放射線防護ドレープで被曝が約90%減
実効線量の平均は、医師の目で測ると防護ドレープを使ったとき0.02mSv、非防護ドレープのときは0.21mSvでした。医師の首では防護ドレープを使うと0.03mSv、非防護ドレープだと0.35mSvで、看護師の首では防護ドレープを使うと0.02mSv、非防護ドレープで0.27mSvでした。
ERCPをよく行う施設での年間の量に換算すると、医師は非防護ドレープを使うと126mSv、防護ドレープを使えば12mSvを被曝すると推計され、安全のため医療従事者に推奨されている年間20mSvの上限を下回る計算になりました。
現在、一般的には、検査を行う医療従事者は鉛の入ったエプロンのような防護服を着て行いますが、機械を覆うドレープで放射線を防護するのは一般的ではありません。
放射線を防護するドレープを使えば被曝量を大幅に減らせたというこの結果、一見当たり前のようですが、このように医療従事者の放射線防護にはまだ改善の余地があるのかもしれません。
執筆者
A Double-Blind, Randomized, Sham-Controlled Trial of the Effect of a Radiation-Attenuating Drape on Radiation Exposure to Endoscopy Staff During ERCP.
Am J Gastroenterol. 2015 Mar 31
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。