大腿骨頚部骨折で知っておくとよいこと:予防、治療費、手術後の注意など
怪我や病気をすると、検査や治療といったこと以外にもさまざまなことが気にかかると思います。中にはお医者さんには気軽に聞きにくいものがあるかもしれません。このページでは大腿骨頚部骨折で患者さんのちょっとした疑問などを中心に説明していきます。
目次
1. 大腿骨頚部骨折は予防できるのか

大腿骨頚部骨折は高齢者が転倒した際に起こることが多いです。これは、高齢者に骨粗しょう症という骨が脆くなる病気を持つ人が多いからだと考えられています。そのため、骨粗しょう症を治療しておくことが、大腿骨頚部骨折の予防につながります。また、転倒を防ぐ環境づくりも予防に効果があります。骨粗しょう症の予防については「骨粗しょう症の基礎知識」を、転倒予防については「こちらのページ」で考え方を説明しているので、参考にしてください。
2. 大腿骨頚部骨折後は寝たきりになるのか
大腿骨頚部骨折は「寝たきり」の原因として知られています。これは怪我のあとしばらくは身体を自由に動かせず、その間に足腰が弱ってしまうからです。
ですが、全員が寝たきりになるわけではありません。足腰を衰えさせないために、なるべく早くリハビリテーションを開始すること、そして、リハビリテーションを上手に乗り越えることが寝たきりの予防につながります。
リハビリテーションは自分の力や頑張りによるところが大きいです。突然の怪我や手術で動揺しているなか、痛みを伴うリハビリに取り組むのは大変なのですが、「寝たきり予防」という目標を忘れないことが励みになります。精神的に辛いときやリハビリテーションが上手く進まないときには、自分で抱え込むのではなく、医師や
3. 大腿骨頚部骨折の入院期間について
大腿骨頚部骨折の入院期間の目安は1ヶ月程度です。日常生活をそれなりにこなせるようになった状態が退院の目安になります。少し、ざっくりとした表現になっているのは、医療機関によって退院の基準は異なりますし、自宅の状況などによって多少前後するからです。
特に、自宅での状況は退院時期に大きく影響します。例えば、家族のサポートが手厚かったり、転倒予防の環境が整っている場合は、早めに退院することが可能かもしれません。反対に、独居で住環境に改善の余地がある場合は少し長くなる可能性があります。 また、
4. 大腿骨頚部骨折の治療費
どの病気や怪我にも言えることですが、入院期間や手術方法によって治療費は変わってくるので、一概に〇〇万円ですということはできません。それでも目安を示すのであれば、大腿骨頚部骨折の治療費は100万円から200万円といったところのようです。とても高額なのですが、公的医療保険が適用されるので、患者さんの負担額は3割になります(3割負担の人の場合)。また、高額療養費制度というものが適用されると、さらに負担額は減る可能性があります。(高額療養費制度については「こちらのページ」を参考にしてください。)
5. 大腿骨頚部骨折のガイドラインについて
病気の
ガイドラインには、過去の治療成績や結果が記された論文を根拠にして、場面ごとの最適な検査方法や治療法が記されており、この内容に沿うことで質の高い診療を行えます。このようにガイドラインには優れた面がある一方で、ガイドラインの内容をそのまま反映させることが正解とは言えないことがあります。例えば作成時期の関係で最新の知見が織り込まれていないこともありますし、一人ひとりの患者さんの身体の状態を鑑みて作られているわけではないからです。お医者さんはガイドラインの内容を踏まえつつ、最新の知見・患者さんの状態を総合的に判断して、最適な治療を選び出しているのです。
6. 大腿骨頚部骨折を人工物置換術(人工骨頭置換術・全人工股関節置換術)で治療した人は股関節脱臼に注意
人工物置換術で治療した場合、股関節の脱臼が起こりやすくなります。そのため、股関節を深く曲げたり、手術した足へ負荷がかかるような日常動作は控えてください。日常生活で特に注意が必要な動作について以下にいくつか取り上げますが、股関節の動き方には個人差があります。ここに掲載されていなくても、やりにくい動作や不安を感じる動作については、医師や理学療法士にその都度相談してみてください。
階段の上り下り・エスカレーターの乗り方
階段の上り下りやエスカレーターの乗り降りでは健康な足から動作を開始してください。そのほうが負担が軽くて済みます。また、階段の上り下りは一段一段こなしていくのをおすすめします。
車の乗り方
まずはシートに腰掛けて、その後身体の向きを変えるようにして乗り込んでみてください。手術前のように、つい足から乗り込んでしまいがちですが、足から乗り込むと股関節への負担が大きくなってしまいます。
物を持つのは手術した足と同じ側の手
物を持つのは手術をした足側の手にしてください。実際に、やってもってもらえばよく分かるのですが、片手で重いものを持つと、負担がかかる股関節は反対側になります。もちろん、重たいものを持たないに越したことはありません。もし持つ必要があれば、片手で重いものを持つよりも、リュックに入れて背負ったり荷台を使うなどの工夫をするのが望ましいです。
参考文献
伊藤利之, 大橋 正洋, 千田富義, 永田 雅章/編集, 標準リハビリテーション医学, 2012, 医学書院
日本整形外科学会診療ガイドライン委員会/大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン策定委員会, 大腿骨頚部骨折/転子部骨折診療ガイドライン2021, 南江堂, 2021