Beta 椎骨脳底動脈循環不全のQ&A
椎骨脳底動脈循環不全(VBI)とはどういう病気ですか
椎骨動脈と脳底動脈は、脳の中でも後方の、小脳・脳幹・後頭葉などへ酸素や栄養を送る血管です(併せて椎骨脳底動脈系と呼ぶこともあります)。椎骨動脈は左右1本ずつあり、左右のものが合流して脳底動脈という動脈になります。椎骨動脈や脳底動脈の血流が、何らかの原因で悪くなり(=循環不全)、上記のような脳の部位が虚血状態になることで様々な症状を呈する疾患です。
椎骨脳底動脈循環不全(VBI)の原因は何ですか
椎骨脳底動脈の血流が悪くなる原因としては、動脈硬化による血管の狭窄、血栓による塞栓、急な血圧低下などが挙げられます。また、椎骨動脈は頚椎という首の骨の中を通りますが、骨や筋肉の変形・奇形により椎骨動脈が外から圧迫されて血流低下が生じることもあります。
椎骨脳底動脈循環不全(VBI)になりやすい人はどういう人ですか
椎骨脳底動脈循環不全(VBI)は主因が動脈硬化による狭窄であることが多いため、動脈硬化のリスクが高い方がVBIにもなりやすいといえます。具体的には、喫煙者、高血圧、糖尿病、高脂血症、高齢者、肥満などです。
椎骨脳底動脈循環不全(VBI)ではどのような症状が出ますか
椎骨脳底動脈循環不全(VBI)では多彩な症状が出現します。最も一般的なものはめまいです。めまいのみのこともありますが、半数以上は、椎骨脳底動脈領域に関連した脳神経症状、複視や霧視、顔や手足のしびれ、構音障害、意識障害などを伴います。これらの症状は、めまいと同時のこともあれば(約60%)、めまいと少し前後したタイミングで起こることもあります。
椎骨脳底動脈循環不全(VBI)で出るめまいはどのような特徴がありますか
椎骨脳底動脈循環不全(VBI)は動脈の一時的な血流不全なので、めまいもその間の一時的なものとなります。85%は1時間以内に治まります。また繰り返し発生するのも特徴的で、90%ほどの方は1週間以内に複数回のめまいを起こします。めまいの性状は回転性(ぐるぐるする)、浮遊性・動揺性(ふわふわ・ふらふらする)、立ちくらみ様(くらっとする)など様々で一概には決まっていません。頭の位置を動かした際や振り向いた際に起こる(誘発される)ことが多いですが、25%ほどは動いていない時に起こっています。
椎骨脳底動脈循環不全(VBI)が重症化するとどうなりますか
原因である椎骨脳底動脈の動脈硬化が進み、狭窄が高度になったり閉塞してしまったりすれば、脳梗塞となる恐れがあり、症状は一時的では済まず後遺症として残る可能性が出ます。
椎骨脳底動脈循環不全(VBI)では、どのような検査をしますか
症状に特徴はあり疑うことは出来るものの、椎骨脳底動脈循環不全(VBI)のみに特徴的な症状というわけではないので、症状から確定することは出来ません。めまいと脳神経症状が一時的に出現しVBIを疑った場合に画像検査を行います。MRI(MRA)やエコー検査、脳血管造影検査で椎骨脳底動脈に症状を出しうるような狭窄などの病変があれば、VBIであると診断できます。
椎骨脳底動脈循環不全(VBI)と紛らわしい病気はありますか
めまいを起こす疾患としては圧倒的に(7割以上)耳が原因のもの、なかでも良性発作性頭位めまいが多いです。持続時間や、めまいの性状からはVBIと区別はつきにくいですが、脳神経症状を伴わない点が異なります。また短期間で繰り返す場合や同じシチュエーション(体位など)で起こる場合にはVBIの可能性が高くなります。立ちくらみ(起立性低血圧)は、「めまい」という表現をされる患者さんも多くVBIと紛らわしいですが、循環器に問題があることが多く、別物です。
椎骨脳底動脈循環不全(VBI)ではどのような手術が行われますか
確立された治療法というのは存在しませんが、原因となっている病態に対しての治療と対症療法を行っていきます。現在起きている症状に対しては対症療法として、抗めまい薬や循環代謝改善薬、内耳機能改善薬、制吐剤が処方されることがありますが効果は人それぞれです。循環不全の原因が動脈硬化・狭窄であれば、抗血小板薬を処方し悪化を防ぎますが、内服治療を行っても症状が続く・進行する場合には手術治療も検討することになります。狭窄している部分を広げたり(バルーンで広げる、ステントを置くなどの血管内治療)、骨や筋肉などの圧迫の原因を取り除いたりと原因に応じた手術を行います。
椎骨脳底動脈循環不全(VBI)は治せますか
原因が動脈硬化の場合も、骨等による圧迫によるものの場合も、内服薬のみでは、症状の出現を抑えられる可能性はありますが、原因を取り除く事にはならず根治はできません。原因に対して手術(カテーテル治療を含む)を行えば、症状は消えることも多いのですが再発する可能性もあり、注意深い観察が必要です。