ごえんせいはいえん
誤嚥性肺炎
食べ物を飲み込む際や、気づかないうちなどに、唾液や胃液、食物とともに細菌が気管に入り込むことで生じる肺炎
11人の医師がチェック 136回の改訂 最終更新: 2023.09.19

Beta 誤嚥性肺炎のQ&A

    誤嚥性肺炎の原因、メカニズムについて教えて下さい。

    正常な機能をもった方は、肺に向かう気道と、食物や唾液が通過する食道を上手く分離するように嚥下機能が働きます。これらは意識しないでもおこる反射機能と、頸部の筋力によって調節されています。しかし加齢や脳血管障害などによって、各々の機能が低下すると食物や唾液、口腔内細菌が肺に入ります。これを「誤嚥」と呼びます。正常の方でも多少は誤嚥することがありますが、多くの場合は咳で押し出すことで肺炎まで至ることはありません。しかし、慢性的に起こり悪化すれば肺炎になります。

    また誤嚥には咳を伴う「顕性誤嚥」と、無症状の「不顕性誤嚥」があり、嚥下機能が低下するほど不顕性誤嚥が増えます。

    誤嚥性肺炎は、どのくらいの頻度で起こる病気ですか?

    多くは加齢に伴って増え、一般的な肺炎と明確に区別ができない場合もあるため正確な頻度は不明です。日本人の死亡原因の第4位は肺炎で、肺炎で死亡する人の94%は75歳以上です。これらすべてが誤嚥性肺炎ではありませんが、大多数を占めていると予測されます。

    誤嚥性肺炎と細菌性肺炎の違いについて教えて下さい

    どの世代でもかかることがある細菌性肺炎は、おおむね1菌種が原因で引き起こされます。対する誤嚥性肺炎は嚥下機能の低下により、口腔内の菌(主に嫌気性菌)によって引き起こされます。菌だけではなく唾液の刺激などで引き起こされることもあり、一旦治っても元々の機能低下のため再発することが多いのが特徴です。

    誤嚥性肺炎は、他人にうつる病気ですか?

    自分の口腔内の細菌や唾液などを誤嚥してしまうことが原因であり、他人にうつることはありません。

    誤嚥性肺炎は、どんな症状で発症するのですか?

    不顕性誤嚥の場合、初期は目立つ症状はありませんが、食後数時間以内の微熱や喀痰貯留が起こります。顕性誤嚥の場合は食事中に咳や痰が増えます。医療機関への受診のきっかけになるのは発熱・呼吸の苦しさが多いです。

    誤嚥性肺炎が重症化すると、どのような症状が起こりますか?

    もともと体力が低下している方に起こるため、重症化した場合は死亡する危険性が高い疾患です。

    誤嚥性肺炎は、どのように診断するのですか?

    採血や胸部レントゲン、CTなどで肺炎であることを診断します。誤嚥が原因であるかどうかは判断が難しい場合もありますが、肺の背側・下方に炎症が強い場合や、痰の中に口腔内の多種多様な菌が認められる場合に確定されます。

    誤嚥性肺炎の、その他の検査について教えて下さい。

    嚥下機能の評価のため、反復唾液嚥下テスト(30秒間に何回嚥下できるか)や水飲みテスト(水を飲んだあとにむせることがあるか)などを行います。誤嚥の直接的な評価としては、嚥下造影検査、嚥下内視鏡検査が行われることもあります。

    誤嚥性肺炎の治療法について教えて下さい。

    大きくわけて肺炎自体の治療と、誤嚥の予防があります。肺炎自体は嫌気性菌という菌に効果のある抗生物質を点滴します。痰を出しやすくする吸入や内服も併用することがあります。誤嚥予防は内服薬を中心に使用しますが、口腔内の細菌が肺に入るのを防ぐために体位や口腔ケアも重要です。誤嚥は加齢に伴い悪化するものであり、完全に予防できるものではなく、一度発症するとその後は再発頻度が多くなることが予想されます。

    誤嚥性肺炎の治療薬の使い分けについて教えて下さい。

    • 肺炎の治療:抗生物質(細菌の種類によって使い分けます。)
    • 排痰促進:去痰薬吸入・内服、加湿など
    • 誤嚥予防(内服薬):消化管蠕動促進薬(胃内容物の逆流を抑えます)、嚥下反射促進薬など
    • 誤嚥予防(内服以外):絶食、頭部挙上(横になる時も30度以上、頭部を挙上)、リハビリテーション、咽頭喉頭分離術(手術で肺に唾液などが完全に入らないようにする手術です。誤嚥は完全になくなりますが、一般的ではありません。)

    誤嚥性肺炎では入院が必要ですか?通院はどの程度必要ですか?

    軽症の場合は外来で治療することもありますが、もともと体力が低下された方がなりやすく、食事をすることで悪化する可能性があるため、入院での治療が望ましいです。

    誤嚥性肺炎は胃瘻を作ることで予防できますか?

    誤嚥を繰り返す場合に、一昔前は胃瘻を勧めることもありました。しかし、胃内容物の逆流や唾液の誤嚥によって肺炎を引き起こすため、胃瘻を作っても再発を予防できないことが明らかになっています。ただし、個々の症例によっては胃瘻を作ることで寿命が延長する場合もありますので、主治医とご相談ください。