かんぞうがん(かんさいぼうがん)
肝細胞がん
肝細胞にがんが出来た状態。C型肝炎ウイルスによる慢性感染症によるものが最も原因として多い
11人の医師がチェック 136回の改訂 最終更新: 2018.03.28

Beta 肝細胞がんのQ&A

    肝細胞がんの原因、メカニズムについて教えて下さい。

    肝細胞がんの原因の9割を占めるのが、B型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルスへの感染です。

    • B型肝炎
      • B型慢性肝炎またはそれによる肝硬変をもつ人の場合、年間0.6-3.7%の割合で肝細胞がんを発症することが分かっています。
    • C型肝炎
      • C型慢性肝炎の人の場合、肝細胞がんを10年間で発症する割合が12.4%と言われています。C型肝炎が進行して肝硬変に至っている人に限定した場合には、年間3-8%と高い割合で肝細胞がんを発症することが分かっています。

    上記を除く残り1割は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)をはじめとする脂肪肝などが原因と考えられています。一方で、明らかな原因が特定できない肝細胞がんも存在します。

    肝細胞がんは、どんな症状で発症するのですか?

    肝細胞がんのある患者のほとんどには、慢性肝炎や肝硬変などの基礎疾患があります。多くの場合にはこれらの病気を元に肝細胞がんが発症しますが、肝細胞がんができたからといって新しい症状が出現することは必ずしもありません。慢性肝炎や肝硬変に伴う症状がやや悪化するか、あるいはその自覚すらないことも多いです。

    ある程度肝細胞がんが大きくなってきて初めて、黄疸、肝性脳症、腹水などの症状が出現することがあります。

    その他の症状としては、上腹部の痛み、体重減少、腹部の張りなどがありますが、これらは肝細胞がんに固有のものではなく、慢性肝炎や肝硬変だけでも出現することがあります。

    肝細胞がんは、どのように診断するのですか?

    肝細胞がんを診断する検査には、血液検査と画像検査があります。

    • 血液検査

      • 肝酵素であるASTとALT、血小板、B型肝炎およびC型肝炎ウイルス感染の有無、腫瘍マーカー(AFP、PIVKA-II)などが参考となります。

    • 画像検査

      • 腹部エコーで検査をしながら、それらしい腫瘍が写った場合には、造影CT、造影MRI検査(ダイナミックCT、MRI)で肝細胞がんかどうかを確認します。造影エコーと呼ばれる検査を行う場合もあります。これらで肝細胞がんに特有の写り方をした場合、肝細胞がんと診断されます。

    • その他の検査

      • これらの検査を行っても診断がつかない場合には、肝臓に針を刺して腫瘍細胞を顕微鏡で調べる肝腫瘍生検を行う場合があります。

    肝細胞がんの治療法について教えて下さい。

    肝細胞がんの治療法には様々なものがあります。手術であれば肝切除術と肝移植術、そして抗がん剤を使用する化学療法、またそれ以外の手法である焼灼療法と塞栓療法などです。

    どの治療が推奨されるかについては、肝細胞がんの腫瘍数、腫瘍の直径、肝障害度(腹水の有無、採血の値、ICG試験という肝機能を測定する検査の結果から、3段階で判定される)の3項目によって判断されます。

    例えば肝障害度が最も低く、腫瘍も1つだけの場合には、肝切除術もしくは焼灼療法が推奨されます。腫瘍が3個を超えると肝切除術は推奨されず、また肝障害度が最も高い場合には、根治を目指す治療としては肝移植術が中心となります。

    肝細胞がんと肝臓がんの違いについて教えて下さい。

    肝臓にあるがん全てを総称して肝臓がんと呼びます。肝細胞がんは肝臓がんの一種ですが、その他のものも含めて分類すると以下のようになります。

    • 原発性肝がん:他からの転移ではなく、肝臓で発生したがんの総称
      • 肝細胞がん:肝臓の細胞(肝細胞)から発生したがん。原発性肝がんの9割を占める
      • 肝芽腫:肝細胞のうち未熟なものに発生したがん
      • 胆管細胞がん:肝臓内にある胆管の細胞に発生したがん
    • 転移性肝がん:別の組織からがんが転移したもの

    肝細胞がんが重症化すると、どのような症状が起こりますか?

    肝細胞がん、肝硬変の重大な合併症として、食道静脈瘤があります。

    肝細胞がんが肝臓内の血管を圧迫することによって血液の流れに変化が生じ、食道の静脈に多くの血液が集まるようになります。本来あるべき量よりも多い血液が集まりますので、静脈は張って膨らみ、ある瞬間に突然破裂して大出血の原因となることがあります。食道静脈瘤が破裂すると、吐血症状が起こり、出血多量で命に関わることがしばしばあります。

    肝細胞がんを早期発見するためには、どれくらいの頻度で検査を受けたら良いのですか?

    特に持病のない一般的な人については、特定の頻度で検査を行うべきというような推奨はありません。一方で、肝臓に持病のある人は肝細胞がんを発症するリスクが高いことになりますので、「高危険群」と「超高危険群」に分けて、それぞれに検査が推奨される頻度が定められています。

    • 高危険群

      • B型慢性肝炎、C型慢性肝炎、肝硬変のいずれかがある場合には、高危険群に分類されます。この場合、6ヶ月に1回の頻度で腹部エコーと腫瘍マーカーの検査を行うことが提案されています。

    • 超高危険群

      • B型肝硬変、C型肝硬変のいずれかがある場合には、超高危険群に分類されます。この場合、3-4ヶ月に1回の頻度で腹部エコーと腫瘍マーカーの検査を行うことが提案されています。

    • 上記に当てはまらない場合

      • 高危険群、超高危険群の条件を満たさない場合には、年齢、性別、糖尿病の有無、BMI、AST値、ALT値、血小板数、飲酒量、HBV-DNA量などの値を考慮した上で、上記に準じて検査の間隔を個別に判断します。

    参考:「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン(2013年版)日本肝臓学会

    肝細胞がんの焼灼療法とは、どのような治療ですか?

    焼灼療法は、腫瘍のある部分に針を刺して、腫瘍そのものを焼いてがん細胞を死滅させる治療です。焼く手法としては、エタノール注入法、マイクロ波を用いる方法、ラジオ波を用いる方法などがありますが、現在主要なものはラジオ波によるものです。

    腹部から針を刺し、腫瘍の部分まで先端を進めます。腫瘍に到達したら、ラジオ波電流を流して腫瘍を焼き、がん細胞を死滅させます。針を刺す際や処置を行った後に出血が生じる場合がありますので、入院した上でしっかりと準備をして行う治療です。また皮膚越しに肝臓に針を刺すのではなく、手術を行って腹部を切った上で、お腹の中から肝臓に直接針を刺して行われる場合もあります。

    肝機能低下が重度(Child-Pughという分類で評価して最も重症のC)である場合には適していませんが、それ以外で腫瘍個数が3個以下かつ直径が3cm以下の場合には外科手術と共に選択肢の一つとなります。

    肝細胞がんの発症は予防できますか?

    発症をゼロにすることはできませんが、B型またはC型慢性肝炎にかかっている場合に、治療を行うことで発がんのリスクをある程度減らすことは可能です。

    • B型慢性肝炎、肝硬変
      • 核酸アナログ製剤と、一部の患者(人種、血液中のウイルス抗原の検査結果、肝硬変の有無などによって差あり)においてはインターフェロン療法の効果があると報告されています。
    • C型慢性肝炎、肝硬変
      • インターフェロン療法1)、グリチルリチン製剤2)は肝細胞がんの発症率を低下させることが報告されています。

    肝細胞がんの塞栓療法とは、どのような治療ですか?

    塞栓療法は、腫瘍に向かって流れている血管を閉塞させて血液を流れなくすることで、がん細胞を死滅させる治療です。腫瘍に限らず全ての細胞は、血液中の酸素や栄養素がなければ活動し続けることができませんから、腫瘍の近くへ向かう血管を物理的に詰めてしまうことで、肝細胞がんを治療することができます。

    塞栓療法はカテーテルと呼ばれる細い管を用いて行われます。足の付け根の血管から管を入れて、それを肝臓の中まで進めます。管がどこまで進んでいるかは、レントゲンで確認しながらこの処置を行います。腫瘍の近くまで辿り着いたら、そこからゼラチンのような物質を注入して、血管が詰まるようにします。またこれと同時に抗がん剤を腫瘍に向けて注入する方法もあります。

    肝機能低下が重度(Child-Pughという分類で評価して最も重症のC)以外で、かつ手術や焼灼療法が行えない場合に主に検討される治療法です。

    肝細胞がんの化学療法とは、どのような治療ですか?

    化学療法とは、いわゆる抗がん剤による治療のことです。肝細胞がんに対してはソラフェニブと呼ばれる薬剤が主に使用されます。

    ソラフェニブは、肝細胞がんで生存期間を伸ばすことが確認されている唯一の抗がん剤です。一方で、約80%で何らかの副作用が見られ、多いものとしては手足のしびれや発疹、下痢、食欲不振、高血圧、疲労、脱毛、吐き気などがあります。

    ただし、化学療法はどのような肝細胞がんに対しても行われるわけではありません。効果を考えると、外科手術、焼灼療法、塞栓療法が優先して検討され、それらの治療法が適切で無いと考えられた場合に化学治療法が選択されることが一般的です。

    肝細胞がんは、遺伝する病気ですか?

    肝細胞がんの大部分はウイルス感染による後天的なものであり、遺伝しません。

    しかしながら肝炎ウイルスそのものは、母子感染と言って分娩時に母から子へ感染することがあります。特に1986年(この年からB型肝炎の母子感染防止事業が開始)以前に生まれた子については、幼少時からB型肝炎ウイルスに感染している可能性があります。

    なお、C型肝炎も母子感染することがありますが、B型肝炎よりも頻度は低いと言われています。

    肝細胞がんでは放射線治療、粒子線治療は行われないのですか?

    他の一部のがんとは異なり、肝細胞がんの治療としての放射線単独治療は推奨されていません。外科手術、焼灼療法、塞栓療法、化学療法については、少なくとも一定の状態の肝細胞がんに対して生存期間が伸びるという報告がありますが、放射線治療によって生存期間が伸びるとした十分な研究がないためです。他の治療法が行える状況であればそれらが優先されますが、そうでない場合には放射線治療を検討することもあります。これは、粒子線(陽子線、重粒子線)治療でも同様です。

    ただし肝細胞がんそのものではなく、骨転移や脳転移に対しては放射線治療がふさわしいとされる場合があります。

    肝細胞がんの生存率はどのくらいですか?

    悪性腫瘍では、5年生存率という数値が重要視されることがあります。一定の進行度の病状の人が、5年後も生存している割合を数値化したものです。

    まず肝細胞がんを含む肝臓がん全体は、以下の基準に従って進行度が分類されます。

    1. がんの個数が1つである
    2. がんの直径が2cm以下である
    3. がんが血管や胆管内に及んでいない
    • ステージ I:1-3の全てを満たす
    • ステージ II:1-3のうち2つを満たす
    • ステージ III:1-3のうちいずれか1つを満たす
    • ステージ IV:「1-3のいずれも満たさない」または「肝臓の外側への転移がある」

    上記に従った、ステージごとの5年実測生存率はそれぞれ次のように報告されています。

    • ステージ I:50.2%
    • ステージ II:35.9%
    • ステージ III:14.5%
    • ステージ IV:6.0%

    参考:「がんの統計’13 がん研究振興財団」

    これらの数値を解釈する上では、一点注意が必要です。

    他の病気や事故など、人は肝細胞がん以外の要因で亡くなることもあります。上記の数値は肝細胞がん以外の要因による病死や自然死も含んだ数値であることにご留意下さい。

    肝細胞がんは、治療をしても再発することがありますか?

    肝細胞がんは、その他のがんと比較して極めて再発率が高いことが知られています。外科手術後の肝細胞がんの再発率は年間10%を上回り、手術5年後時点での再発率は70-80%に達します。

    この高い再発率の原因ですが、肝細胞がんが発症した時点で肝臓が肝硬変に至っている場合がほとんどであり、肝硬変が治らない限りは、肝細胞がんを一つ治してもまた次が発生してしまうということがあります。肝硬変は現時点では肝移植をする以外に根本的な治療法がないため、実際のところ肝細胞がんの治療後には、再発があっても早期発見することを目標として、定期的に検査を行っていくことになります。

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