だうんしょうこうぐん
ダウン症候群
本来2本である21番染色体が3本あることによって、精神発達の遅れ、特徴的な顔つき、その他さまざまな障害を示す病気
11人の医師がチェック 130回の改訂 最終更新: 2020.03.13

Beta ダウン症候群のQ&A

    ダウン症候群とはどのような病気ですか。

    ダウン症候群は21トリソミーとも呼ばれ、本来23対46本ある染色体のうち、21番目の染色体が1本多くある状態です。人間では46本の染色体を子どもに受け渡すときに、両親からそれぞれ23本ずつ渡せるよう、卵と精子を作る過程で染色体を23本ずつ分配しますが、うまく均等に分けられないと染色体の数に問題が生じます。また、受精卵が成長していく過程でも染色体の数が変わる可能性があります。染色体には様々な遺伝情報が載っているため、本来2本である染色体が3本になることで、様々な不具合を引き起こします。21番染色体は最も小さい染色体ですが、350あまりの遺伝子が載っていて、これらが全て1.5倍存在していることになります。どの遺伝子がどの症状を引き起こすのかについては正確なことはわかっていませんが、多くの遺伝子が複合的にそれぞれの症状に関わっていると考えられています。

    ダウン症候群は、どのくらいの頻度で起こる病気ですか?

    出生数からみておよそ700人〜1,000人にひとりと言われています。親の年齢に応じて起こりやすい病気、起こりにくい病気というのがありますが、ダウン症候群の場合、お母さんの年齢と出生数に関連があり、高齢出産になるほど出生数が増えることが知られています。古い報告では、母体年齢20歳頃には2,000出生あたり1人、30歳頃には1,000出生に1人、40歳頃には100出生に1人くらいの頻度とされています。

    ダウン症候群はどのようにして起こりますか。

    ダウン症候群は(1)標準型(95%)(2)転座型(3-4%)(3)モザイク型(1-2%)に分けられます。 1. 標準型:卵子や精子ができる時、対になっている染色体は分離して一つずつ卵子や精子にとりこまれますが、この分離がうまく行われなかった場合、染色体を2本もった精子や卵子ができます。それが、そのまま受精すると染色体が3本になります。これを「染色体不分離」といいます。多くはこれが原因です。 2. 転座型:染色体自体に「転座」といわれる異常があるものです。 3. モザイク型:染色体不分離と細胞の分裂異常によります。

    ダウン症候群は遺伝しますか。

    ダウン症候群のタイプによって異なります。 標準型、モザイク型に関しては、染色体不分離や細胞分裂の異常が原因なので一般頻 度の確率で起こります。つまり「偶然起きた」のです。 転座型の場合はお父さん、お母さんのどちらかが転座のある染色体をもっている可能性があり、(必ずしもそうとは限りません)お父さんの場合は3-5%、お母さんの場合は10-15%こどもに遺伝する可能性があります。

    ダウン症候群は、どんな症状がでるのですか?

    様々な体の特徴がでることが知られています。筋肉の緊張が弱い、つり目になる、舌が大きい、単一手掌屈曲線(親指側と小指側からでる手相の線がつながっている)、小指が短く少し内側に曲がる、足の親指と人差し指が離れているなどです。 また、運動面の発達は健常なこどもの2倍程度の時間をかけてゆっくりと進んでいきます。精神面もゆっくり発達していきます。こだわりが強くコミュニケーションがとりにくいことがあります。年齢に応じてみられる症状や注意点が異なりますので、詳しくは担当の先生とご相談下さい。

    ダウン症候群の、その他の合併症について教えて下さい。

    様々な合併症が知られていますが、これらすべてが表れるわけではありません。 以下に代表的なものを挙げます。 ・ 先天性心疾患:40-50%の確率でこれを認めます。房室中隔欠損症、心室中隔欠損症、心房中隔欠損症、ファロー四徴症、動脈管化依存症などが多いです。 ・ 甲状腺機能低下症 ・ 頸椎亜脱臼:歩行を始めたころにレントゲンで一度評価を行いましょう。 ・ 消化管疾患:十二指腸閉鎖症、HIrschsprung病、便秘 ・ 血液疾患:白血病発症リスクが一般より高いといわれています。 ・ 眼科疾患:白内障、斜視

    ダウン症候群は、どのように診断するのですか?

    ダウン症候群は出生後、その様々な身体的特徴や合併症から比較的早い時期に診断されます。様々な臨床症状からダウン症候群が疑われた場合、染色体検査が行われます。染色体検査は採血で行うことが出来、報告にはおよそ1か月程度の時間がかかります。染色体検査で21番染色体の過剰があるとダウン症候群と診断されます。

    ダウン症候群の出生前診断について教えてください。

    出生前診断には受精卵の段階で検査する着床前診断、ある程度受精卵から胎児が発育してから行う胎児診断がありますが、着床前診断については日本では実用レベルではないため、胎児診断についてお話します。まず、ダウン症候群の診断に繋がることがあるという点で、妊婦健診などで一般的に行われる超音波検査も出生前診断と捉えることが出来ます。超音波検査で胎児の発育、顔面・頸部・手足といった身体の各部位の形状、心臓の形、臍帯(へその緒)の様子などを観察することで、ダウン症候群をはじめとした疾患の可能性が疑われる場合があります。胎児の大きさや検査の時期、検査者の経験によっても結果の解釈が異なりますので、担当の先生とご相談ください。狭義の出生前診断としては、母体の血液中いくつかの物質を測定してダウン症候群をはじめとしたいくつかの状態の可能性を検討する母体血清マーカー検査、胎児に由来する羊水細胞・絨毛細胞などを採取して胎児の染色体を検査する羊水検査・絨毛検査、また、最近では試験的に母体の血液中に浮遊する胎児由来のDNAを用いた無侵襲的出生前遺伝学的検査(新型出生前診断)といったものがあります。それぞれに検査上の特徴、可能な時期、正確性、利点や欠点がありますので、遺伝カウンセリングや遺伝学に詳しい先生とご相談ください。

    ダウン症候群で行った方がよい検査について教えてください。

    診断のための染色体検査の他に、新生児期には全身検索として通常の診察に加え、X線写真や超音波検査が行われていることが多いと思います。これらにより先天性心疾患や消化管の先天異常などの内臓疾患がないかを調べています。それらの合併症の有無によって、その後の検査計画は変わってくると思いますが、その他に、眼科診察、耳鼻科診察、難聴の検査、一般的な血液検査に加えて甲状腺機能検査は行っておくとよいでしょう。けいれんが疑われれば脳波検査や頭部画像検査、また活動量の増えてくる3歳頃には頸椎のX線写真を行っておくのがよいでしょう。いずれもご本人の成長の具合やもともとの合併症などに応じて、必要な検査は変わってきます。詳しくは担当の先生とご相談ください。

    ダウン症候群と診断が紛らわしい病気はありますか?

    一般的には、新生児期に見られる、顔立ちや身体的な特徴、先天性心疾患、消化管の先天異常、哺乳力の低下、からだの柔らかさなどの様々な症状から、染色体検査をすすめられて診断に結びついた方が多いと思いますが、様々な異常を合併する疾患としては、ダウン症候群以外の染色体異常症やその他の先天異常もあります。通常の染色体検査で21番染色体の過剰がなかった場合には、担当の先生と臨床症状や考えられるその他の疾患についてご相談下さい。

    ダウン症候群の治療法について教えて下さい。

    ダウン症候群の染色体そのものを元に戻す方法は現在のところありません。治療はそれぞれの合併症に対する治療になります。また、それらの治療や成長の過程において、それらの状態やライフステージに応じた支援を行うことで、よりよい生活を送ることが出来るようになるでしょう。まずは担当の先生と現在の状態や将来について話し合って下さい。

    ダウン症候群では入院が必要ですか?

    産まれた直後は、重篤な合併症がないかチェックを行い、あればその治療のための入院が必要です。また、最初はミルクをうまく飲めないことがあり、その場合は哺乳ができるようになるまで入院することがあります。先天性心疾患の手術、白血病の治療など入院が長期にわたることもありますが、改善すれば入院の必要はありません。もちろん合併症がない場合は入院の必要はありません。

    ダウン症候群では、日常生活で気を付けることはありますか。

    筋肉の緊張が弱い、関節がゆるいため運動面での発達がゆっくりです。そのため、日ごろよりリハビリを行うことが重要です。また、免疫機能が弱く、感染症にかかりやすく重症化しやすいため予防が必要です。代表的な呼吸器感染症にRSウイルスがあり、そのモノクローナル抗体(パリビズマブ)を接種し予防することができます。(RSウイルス流行時期に2歳以下の場合)