手指屈筋腱損傷の基礎知識
POINT 手指屈筋腱損傷とは
指を曲げる筋肉の腱が傷ついた状態です。刃物で切ってしまったり、ドアで指を挟んだりすることが主な原因です。手指屈筋腱損傷が起こると痛みや内出血、指が曲がらなくなるなどの症状が現れます。レントゲン検査やCT検査、MRI検査によって損傷の程度を調べます。腱が部分的にでもつながっていれば、手術を行わずに様子をみることもできますが、腱がきれてしまった場合には、切れた腱同士を縫い合わせたり腱の移植が必要になります。手指屈筋腱損傷が疑われる人は整形外科を受診してください。
手指屈筋腱損傷について
- 指を曲げる筋肉の腱が損傷した状態
- 刃物で切ってしまう、ドアに指を挟む、などの外傷によって指を曲げる筋肉の腱が切れてしまう
手指屈筋腱損傷の症状
- 痛み
- 内出血
- 指が曲がりにくくなる
- 指の感覚がにぶくなる
- 日常生活で、指をつかった細かい作業が困難となる
手指屈筋腱損傷の検査・診断
レントゲン 検査- 骨折の有無を調べる
CT 検査- レントゲンではわからない骨折の有無を調べる
手指屈筋腱損傷の治療法
- 腱が部分的につながっていれば、手術を行わずに様子を見ることがある
- 手術
- 腱
縫合 術:切れた腱どうしを縫い合わせる - 腱移植術:切れた腱に他の腱を移植する
- 腱
- 腱がつながるまでには3週間かかる
- 術後のリハビリテーション(指の曲げる働きを改善する)が重要
- リハビリ期間は12週間前後となることが多い
- 手術後に指を動かしてはいけない期間がある場合は、特にその後のリハビリが大事
- 手術直後は力を入れないように注意する
手指屈筋腱損傷の経過と病院探しのポイント
手指屈筋腱損傷が心配な方
手指屈筋腱は、手の指を曲げるための腱です。これが切れてしまうと指が曲がらなくなってしまうため、手術で腱を繋ぎ直す必要があります。指そのものから手のひらを通って手首のところまで長い腱が通っていますので、この間のどこかでケガをすると手指屈筋腱損傷に至る可能性があります。
手から手首周囲にケガを負って指が曲がらない場合には、まずは整形外科のクリニックや、お近くの救急外来を受診されることをお勧めします。深い切り傷があったりするような場合には、痛みがあってそもそも指を曲げようとできないことがあるため、自分では指が曲がるかどうかを判断しづらいことが多いです。整形外科や救急専門の医師であれば、腱の損傷がないかどうか、骨折がないかどうかの判断の他に、皮膚の縫合などの処置が可能です。
受診先として、総合病院の救急外来は相対的に待ち時間が少ないというメリットもある一方で、専門の整形外科医ではなく広く浅く診察をする救急医が初期対応に当たることになります(日中は救急外来が開いていないこともあります)。総合病院の整形外科外来は、飛び込みで受診するには患者数が多く(待ち時間が長く)、また診療情報提供書(紹介状)を持っていないと受診ができなかったり、追加料金が必要となったりします。
実際に手指屈筋腱損傷だった場合には手術が必要となります。この手術は、一刻を争うということは必ずしもなく、ケガをしてから1-2週間以内であれば後からの手術も可能な場合があります。あえて待つ必要はもちろんないのですが、最初に受診した医療機関で全てが決まってしまうという心配はありません。手の手術を行っていない医療機関では、近くでそのような処置を行っている病院を紹介してくれますので、まずは近くの医療機関を受診して判断を仰ぐのが良いでしょう。
手指屈筋腱損傷でお困りの方
診断の結果が指の屈筋腱損傷だった場合、切れてしまった腱を縫い合わせる手術が必要です。これには一般の整形外科医ではなく、「手の外科」という分野を専門としている医師が適しています。筋肉や骨、腱の処置を専門とするのが整形外科医ですが、手の手術にはより繊細で特別なスキルを要するために手外科専門医という認定資格が設けられています。
手術の後には手に添え木を当てて指の動かせる範囲を固定する期間と、リハビリテーションを行う期間があります。そこでは作業療法士や理学療法士といったリハビリテーションの専門家と連携しながら進めていくことになります。患者さん一人あたりのスタッフ数や、リハビリ設備(リハビリ室や器具)の充実度といったところも病院を探す上で参考になるところです。