にゅうじびたみんけーけつぼうせいしゅっけつしょう
乳児ビタミンK欠乏性出血症
産まれてまもない新生児や乳幼児のビタミンKが欠乏して、出血しやすくなる病気
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最終更新: 2019.02.14
乳児ビタミンK欠乏性出血症の基礎知識
POINT 乳児ビタミンK欠乏性出血症とは
ビタミンKには出血を止める働きがあります。乳児ビタミンK欠乏性出血は、産まれてまもない新生児や乳幼児のビタミンKが欠乏することによって出血しやすくなる病気です。ビタミンKを作る腸の細菌が少ないことや母乳に含まれるビタミンKが少ないことが原因だと考えられています。出血しやすいために、皮膚に青あざができたり、便に血が混じったりします。また、頭の中に出血が起こすと、機嫌不良や嘔吐、意識障害などの症状が現れます。疑われた人には血液検査が行われて、血液の固まりやすさなどが調べられます。乳児ビタミンK欠乏性出血の予防のために、新生児にビタミンKを数回飲ませる施設が多いです。新生児ビタミンK欠乏症は新生児科や小児科などで検査や治療が行われます。
乳児ビタミンK欠乏性出血症について
- 産まれてまもない新生児や乳幼児の
ビタミン Kが欠乏して、出血しやすくなる病気- ビタミンKは出血を止める(止血)ために必要なビタミン
- これが少なくなると、血を固めることができなくなり、出血しやすくなる
- 主な原因
- ビタミンKを作る腸の中の
細菌 が少ない - 母乳の中のビタミンKが少ない
- 母親の母乳の出方や、赤ちゃんが母乳を飲む量に個人差がある
- ビタミンKを吸収する能力が低い
- ビタミンKによって血液が固まる働きそのものが弱い
- ビタミンKを吸収するために必要な胆汁(消化液のひとつ)の分泌を低下させる病気(肝炎、胆道閉鎖など)が存在する
- ビタミンKを作る腸の中の
- 分類
- 新生児ビタミンK欠乏出血症
- 産まれてから2~4日におこることが多い
- 乳児ビタミンK欠乏出血症
- 産まれてから3週~2か月で起こることが多い
- 新生児ビタミンK欠乏出血症
- ビタミンK欠乏性出血症の約8割が頭蓋骨内の出血で
発症 する
乳児ビタミンK欠乏性出血症の症状
- 主な症状
- 皮膚に青あざができる
- 頭蓋内出血(頭の骨の中の脳などからの出血)
- 便に血が混じる
- 血を吐く
- 頭蓋骨内出血の症状
- 機嫌が悪くなる
- 嘔吐
- 意識を失う
- けいれん
- 顔色が青白くなる
乳児ビタミンK欠乏性出血症の検査・診断
頭部CT検査 :頭蓋内出血の有無を調べる- 血液凝固検査:血液の固まりやすさを調べる
乳児ビタミンK欠乏性出血症の治療法
- 主な治療
ビタミン Kの内服- 新鮮凍結血漿の点滴(輸血)
- 頭蓋内出血の場合の治療
- 脳を圧迫しているときは、手術で血のかたまりをとる
- 予防:日本では新生児にビタミンKを計3回飲ませている施設が多い
- 産まれたとき
- 産まれた病院を退院するとき(または生後1週間)
- 1か月検診のとき
- 以下の飲み方も推奨されており、一部の施設で実施されている
- 産まれたとき
- 生後3か月まで、週に1回
乳児ビタミンK欠乏性出血症の経過と病院探しのポイント
乳児ビタミンK欠乏性出血症でお困りの方
乳児ビタミンK欠乏性出血症では血液が固まりにくくなり、軽い刺激やきっかけで出血しやすくなります。これが手足の傷が原因であればすぐに気付けてまだ良いのですが、脳出血や消化管出血といった内臓の出血になると重病に繋がります。
ビタミンK欠乏性出血症は、基本的に前触れなく突然の脳出血などで発症するために危険な疾患です。母乳哺育で問題ないことも多いのですが、まれに母乳だけではビタミンKが不足してしまうことがあります。そのようなケースを補うために国内では生後、1週間後、1か月後のビタミンKシロップ服用が勧められています。
ビタミンKの欠乏だけでは症状は出ないのですが、ビタミンKシロップを服用していない新生児の場合は脳出血、消化管出血など様々な出血につながる疾患が発症しやすいため、新生児の体調に何かしらの異常があった場合に早期発見できるよう、注意が必要になります。