Beta 急性アルコール中毒のQ&A
急性アルコール中毒は、どのように診断するのですか?
飲酒状況やその後の症状の経過から比較的容易に診断できますが、いかにその他に隠れている可能性のある病態を見つけ出すか、あるいは中毒による合併症がどの程度起こっているかを判断することが大切です。 酩酊状態の患者さんご本人からは聞き出せない、あるいは覚えていない、ということもよくありますので、周囲の方からの情報収集や、詳細な身体診察が重要です。また、場合によってはアルコール血中濃度を測定する場合もあります。お酒が抜けるまでしっかりと経過観察を行い、お酒が抜けた状態で再度評価を行う必要がある場合もあります。
急性アルコール中毒のメカニズムについて教えて下さい。
急性アルコール中毒は、短時間に多量のアルコールを摂取することなどが原因で、胃と小腸粘膜から急速にアルコールが吸収され、アルコールの分解が追い付かず、血液中のアルコール濃度が上昇することによって中毒症状を引き起こした状態です。 吐き気や意識障害(頭が回らなくなる、眠ってしまう、反応がなくなる)などの症状が出現します。
急性アルコール中毒は、どんな症状で発症するのですか?
中毒症状は個人差が大きいですが、一般的に、アルコールの血中濃度が0.02%でほろ酔い気分、0.1%で知覚能力の低下・歩行障害、0.2%で嘔気嘔吐・意識障害、0.4%で低体温・低血糖、0.7%で呼吸不全・死亡、といったように血中濃度に比例して症状が悪くなっていきます。
急性アルコール中毒の治療法について教えて下さい。
現在のところ、アルコールの分解を早める治療法は確立されていません。ひどい脱水状態の場合には点滴がある程度は有効かもしれませんが、その効果は限定的です。 重症の場合は、気道確保、そして吐物を誤嚥しないよう回復体位での慎重な経過観察、場合によっては胃洗浄、ビタミンB1や糖の投与、血液透析などが検討されることもあります。
急性アルコール中毒は、どのくらいの頻度で起こる病気ですか?
東京消防庁の発表データでは、都内で発生した急性アルコール中毒による救急搬送人員は毎年1万人以上にのぼり、平成26年では14,303人が救急車で病院に運ばれています。月別の推移を見てみると、12月の搬送人員が最も多い傾向があり、忘年会などで飲酒する機会が多いことが1つの要因になっています。 また救急搬送された人を年代別に見てみると、男女ともに20歳代の人数が抜きん出て多く、理由として、経験の浅さから自分の適量が分からず、無謀な飲酒をしてしまうことなどが考えられます。
急性アルコール中毒が重症化すると、どのような症状が起こりますか?
急性アルコール中毒は、重症の場合には死に至ります。嘔吐により、吐物が気道を閉塞すると窒息となりますし、脳の麻痺が脳幹部に及べば、呼吸が弱くなってきます。また、意識障害や歩行障害などが転倒や転落の原因となり、そういった外傷が致命的となる場合もあります。また、低体温にもなりやすく、特に寒い環境で寝てしまえば比較的短時間に低体温となり致命的となる場合もあります。
急性アルコール中毒では入院が必要ですか?
軽症であれば必ずしも入院は必要ありませんが、意識障害の程度が強い場合や、気道閉塞などのリスクが高い場合、その他の疾患が隠れている可能性がある場合など、慎重な経過観察や治療が必要と判断された場合は、入院が必要です。翌日お酒が抜けた状態で翌日再度の診察や検査が必要な場合があります。
急性アルコール中毒と診断が紛らわしい病気はありますか?
危険ドラッグなどその他の薬物の中毒はもちろん、意識障害をきたす疾患すべてが診断の上で区別すべき候補に挙がります。急性アルコール中毒では自分で自分の病状を正しく伝えられないことが多いため、その他の病気よりも特に注意が必要です。
急性アルコール中毒とアルコール依存症の違いについて教えて下さい。
飲酒を慢性的にやめられない病気はかつて慢性アルコール中毒と呼ばれていましたが、現在はアルコール依存症と呼ばれるようになりました。物質依存の一種で、薬物を摂取することによって様々な問題が出ているにもかかわらず、その薬物を止めることができなくなる状態です。 一方で急性アルコール中毒は、血液中のアルコール濃度が高まった状態に由来する急性の中毒のことで、アルコール依存症とは別のものになります。
急性アルコール中毒は、予防できる病気ですか?
お酒に関してご自身で注意できることは沢山あります。 - 自分の適量を知るとともに、その日の体調にも注意すること - 短時間に多量の飲酒(一気飲み)をすることをやめること - 特に飲み始めはゆっくり飲むよう心がけること - 空腹状態での飲酒は避けて、つまみを食べながら飲酒すること - 多種のお酒を同時に飲むことはなるべく避けること(味が変わることでついつい飲酒量が多くなります) - お酒が飲めない体質の方は周囲の人に「お酒が飲めない体質」であることを事前に伝えておくこと - 周囲の方も飲酒の無理強いをしないこと このようなことで、急性アルコール中毒を予防することは可能です。
急性アルコール中毒にはどんな人がなりやすいですか?
アルコールが体内に入ると、分解されてアセトアルデヒドという成分になります。このアセトアルデヒドを分解するのが、アルデヒド脱水素酵素です。この分解酵素のタイプによって、お酒に強い体質と弱い体質がある程度決まります。その判断に、アルコールパッチテストが参考になると言われています。 ただし、急性アルコール中毒は基本的に血中アルコール濃度が高くなれば誰しも発症しうる病態であり、お酒に強い人なら中毒にならないというものでは決してありません。
お酒は飲まない方がよいのですか?
肝疾患があるなど、医師から飲酒を禁止されている方は飲むべきではありませんが、健常成人が適量のお酒を適正に摂取することは、人間関係の円滑化にも役立ったりと、良い面もあります。お酒は飲んでも飲まれないように注意することと、周囲で飲み過ぎている人がいたら声を掛け合うことも大切です。