じょくそう(とこずれ)
褥瘡(床ずれ)
布団やベッドなどと触れる部分の皮膚が、長い間圧迫されづづけることで血流が不足して、皮膚や筋肉などの組織が壊死すること
14人の医師がチェック 165回の改訂 最終更新: 2024.04.25

褥瘡(床ずれ)予防のために日頃から気をつけてほしいこと

褥瘡の予防には普段の取り組みが重要です。具体的には体位変換や、体圧の分散、栄養状態の改善、スキンケアなどさまざまな対策があります。このページでは褥瘡の予防方法を詳しく説明するので、可能なものから取り入れてください。

1. 褥瘡(床ずれ)を予防するためにできること

体位変換

褥瘡は治療が難しい病気です。そのため予防が重要であり、有効な予防法が存在します。また、褥瘡が治った後も再発予防に気を配る必要があります。具体的な予防は次の4つです。

【褥瘡の予防策】

  • 体位変換を行う
  • 体圧の偏りを防ぐためのベッドやクッションを使用する
  • 栄養状態を改善する
  • スキンケアをする

自宅で介護を受けている人に上記のすべてを行うのは難しいかもしれません。すべてを一気に行えなくてもよいので、訪問看護や訪問介護の担当者と相談して、優先順位を決めてください。
例えば、褥瘡予防に効果のあるベッドは、体位変換の回数を減らし、介護の負担を軽くできます。経済的な負担が可能な場合は、ベッドの購入の優先順位を高くするのもいいかもしれません。あるいは、スキンケアや栄養状態の改善など、手の付けやすいものから取り組むのもいい考えです。
次にそれぞれの予防策について説明していきます。

体位変換:クッションを用いた体位の取り方

同じ姿勢でいると褥瘡ができやすくなります。そのため、身体の向きを定期的に変えなければなりません。

何時間ごとに体位変換をすると良いかは、一人ひとりの状態によって異なります。自宅で介護をしている人はお医者さんや看護師さんと相談しながら、それぞれにとって無理のない体位変換スケジュールを組んでください。ベッドマットによっては体位変換の時間が参考として示されているものもあるので、目安となるかもしれません。

◎寝たきりの人の体位変換で注意すること

寝たきりの人は自分で自由に動くことができません。そのため寝たきりの体位変換は、仰向けと横向きの姿勢を交互に行われることが多いです。しかしながら、どの姿勢をとるのが一番良いのかは個人の体型や麻痺の部位などで個人差が生じます。お医者さんや看護師さんと都度相談しながら、最適な姿勢を見極めると良いです。

体位変換は一人で行うと大変です。可能であれば二人で行うとよいのですが、介護者が一人しかいないという状況は珍しくはありません。一人で行う場合は、無理せずに少しずつ身体を移動させるようにすると良いです。身体を引きずってしまうと、皮膚に負担がかかって褥瘡の原因になるからです。具体的な方法については、医療者に教えてもらってください。

体位変換時にはシーツと身体の間に手を入れて、シーツや服のシワを伸ばしてください。シーツにシワがあると皮膚に負担がかかりやすくなり、通常より小さな力で褥瘡ができてしまうことが分かっているからです。
姿勢を整えた後は、良い姿勢や足の位置を維持できるよう、背中や足の間にクッションをいれて支えます。

◎車椅子を利用している場合に注意すること

車いすをよく使う人のように、座っている時間が長い人では、お尻に褥瘡ができやすくなります。そのため、お尻の骨が出っ張っている部分には体重がかからないようにしてください。具体的には、太ももからお尻にかけて広い範囲で体重を支えられるような姿勢をとり、股関節、膝関節、足関節がぞれぞれ90度になるように座ります。太ももと上半身の間の角度、太ももの裏とふくらはぎの間の角度、すねと足の甲の間の角度がそれぞれ90度になるようにするのがポイントです。

自分で身体を動かすことができる人では、15-20分ごとに腕で身体を持ち上げたり、机などに前のめりになったりして、お尻にかかる体重を移動することが、褥瘡の予防になります。自分で動けない人は、介護者が手伝って、30分から1時間ごとに座り直すようにすると良いです。

◎クッションの選び方:円座は使ってよいの?

円座とはドーナツ型のクッションで、以前は車椅子の人が褥瘡予防のためにお尻にしいたり、仰向けになった時にかかとに敷いたりしていました。真ん中に穴が空いているので、骨の出っ張った部分に圧がかからず褥瘡予防によいと考えられていたからです。しかし、現在は推奨されていません。それは、穴の空いた中央には圧がかからないものの、周囲の円に当たる部分に圧がかかることで血流が悪くなって、かえって褥瘡を作りやすくなることが分かってきたからです。

円座の使用はお勧めはしませんが、車椅子用に作られた褥瘡予防のクッションがいくつか出ています。特殊素材で作られているので、使用を検討してみても良いかもしれません。

褥瘡予防のためのベッドマット(体圧分散寝具)の選び方

身体の一部分に圧がかかり過ぎないようにすることが褥瘡予防として重要だと考えられています。体圧分散のマットレスは、使用者の身体が沈み込んでベッドと身体の接触面が広くなり、身体の圧が一部分に集中することを減らせます。

褥瘡予防ガイドラインでは褥瘡予防のために体圧分散マットレスの使用を推奨しています。マットはさまざまな素材で作られていて次のようなものがあります。

【体圧分散マットレスで勧められる素材】

  • エア(空気)
  • ウォーター(水)
  • ウレタンフォーム
  • ジェル

エアマットレスは空気が入ったマットレスで、ウォーターマットレスは水が入っています。ウレタンフォームやゲルで作られたマットレスもあります。これらの素材が組み合わされたハイブリッド型もあります。

さらに、自動で圧が切り替わって身体の圧を分配するものや、自動で身体の向きを変えてくれるもの、温度や湿度を調整してくれるものなど、さまざまな機能が付いているベッドもあります。

マットレスを選ぶ際には、自力でどのくらい動けるのか、骨の出っ張り具合はどのくらいなのか、といったことを参考にします。そのため、一人ひとりの状態に応じて推奨されるマットレスが異なりますので、お医者さんや看護師さんなどとよく相談してください。介護保険を利用すれば、ベッドを借りることができます。現場の医療スタッフだけではなく、自治体やケアマネージャーさんともよく相談してください。

栄養の改善

栄養の不足や偏りは褥瘡のリスクを高めます。しかしながら、高齢者や嚥下機能が低下している人では、十分な食事量を摂れないことも少なくありません。食が細い人には、間食に高エネルギー、高タンパク質のサプリメントを使うと栄養バランスの改善が期待できます。少しずつでも栄養が十分に摂れるようになると褥瘡の予防につながる可能性があります。

予防だけではなく、褥瘡を治すためにも十分なエネルギーが必要です。具体的には、基礎エネルギー消費量の1.5倍以上のカロリーを摂取し、タンパク質を十分量とります。

亜鉛や、アスコルビン酸、アルギニン、L−カルノシン、N-3脂肪酸、コラーゲン加水分解物なども、持病に気を使いながら、補給しても良いとされています。

基礎エネルギー消費量の推定や食事メニューの作成には専門的な視点が必要です。具体的な内容については、お医者さんや栄養士に相談すると良いです。

褥瘡予防のためのスキンケアのポイントは?

褥瘡予防では皮膚の状態を適切な状態に保つようにすることも重要です。乾燥した皮膚も、逆に湿り気が強い皮膚もいずれも刺激に弱くなり、褥瘡の発生リスクを上昇させます。スキンケアのポイントは次の通りです。

【褥瘡予防のためのスキンケアのポイント】

  • 清潔に保つ
  • 保湿する
  • 失禁に適切に対応する

次の3つのことがらは、すぐにでも取り組むことが望ましいです。

◎皮膚の清潔を保つ

皮膚にはもともとバリア機能があります。外部からの刺激や異物から身体を守っている皮膚を健康な状態に保てていれば、褥瘡や感染は起こしづらくなります。

皮膚を清潔に保つ方法は入浴できるかどう変わってきます。
お風呂に入れるのであれば、定期的に入浴することで十分に皮膚を清潔に保てます。入浴で皮膚を洗う際には、よく泡立てた石鹸でやさしく洗います。良くすすいで水分を優しく拭き取ると良いです。一方で、入浴が難しい人では身体を温タオルで拭いてあげると良いです。その際のポイントは、強くこすらないようにすることや、室温で行うこと、保温すること、残った水分をやさしく拭き取ることなどです。

入浴した人も体をタオルで拭いた人もなるべく早く保湿を行うようにしてください。具体的な方法はこの後で説明します。

◎皮膚を保湿する

乾燥した皮膚は摩擦で傷つきやすくなったり、かゆみを起こして搔き壊したりして傷ついてしまいます。その予防策として、保湿があります。入浴後や身体を拭いた後、できれば10分以内に水をはじく撥水クリームなどを塗って乾燥を予防します。

使用するクリームなどは市販のものでも、処方してもらったものでも良いです。

◎失禁に適切に対応する

尿失禁や便失禁を適切に対処しないと、褥瘡発生のリスクが高まります。

尿や便による皮膚の汚染が長時間に及ぶと、強い刺激が皮膚に生じて、皮膚のバリア機能が低下をまねき、褥瘡ができやすい状態になってしまいます。予防のためには、尿失禁や便失禁を長時間放置しないことや、失禁量にあわせた紙おむつや尿取りパッドを用いることです。皮膚に長時間の水分接触が起こらないように、撥水効果のあるクリームやオイル、スプレーなどを用いて保護することも有効です。
水様や泥状の便が頻回の人はより手厚いケアが必要となるので、褥瘡をケアしてくれる人と相談してみてください。

2. 褥瘡(床ずれ)の治療は何科で行われるのか

褥瘡の治療は様々な診療科が協力します。皮膚科や、形成外科、外科、内科、リハビリテーション科、整形外科などです。褥瘡を専門的に診療を担当している科は医療機関によって異なるので、これから受診を検討している人は、受診予定の医療機関にあらかじめ問い合わせておくとスムーズに受診ができます。

褥瘡の治療はお医者さんだけではなく、さまざまな医療者が協力して行います。例えば、看護師は褥瘡のなりやすさを評価したり、体位交換をしたり、褥瘡予防の中心的な役割を担っています。加えて、理学療法士や、作業療法士、栄養士、薬剤師、ケアマネージャー、ソーシャルメディカルワーカーなどが参加して、褥瘡対策チームが作られることもあります。

3. 褥瘡(床ずれ)の処置で気をつけること

褥瘡ができると周りの皮膚も弱くなっていて、適切な対処をしないと褥瘡が広がる可能性があります。テープを貼る時には皮膚を引っ張り過ぎず貼り、シーツや衣類のしわによる刺激にも注意してください。自宅での介護では、人手が足りずに大変なことがあるかもしれません。お医者さんや看護師さん、ケアマネージャーさんなどとよく相談して、手が足りない時には施設や病院の利用を検討してください。

4. 褥瘡(床ずれ)がある人は入浴をしても良いのか

褥瘡があっても入浴は可能です。むしろ、入浴するとシャワーで褥瘡の部分を十分に洗浄してきれいにすることができ、良い効果が期待できます。また、入浴で手足の血流がよくなることは、褥瘡治療に有効に働く可能性があります。

5. 褥瘡(床ずれ)はどれくらいで治るのか

浅い褥瘡は1か月程度で治りますが、深い褥瘡では時間がかかり治療期間の目安も立ちづらくなります。褥瘡の治りは個人差が大きく、栄養状態が悪い人や治りに影響する持病がある人では長引くことが多いからです。

6. 褥瘡(床ずれ)のガイドラインはあるのか

日本で主に使われる褥瘡のガイドラインは2つです。日本褥瘡学会の『褥瘡予防・管理ガイドライン』と、日本皮膚科学会の『褥瘡診療ガイドライン』です。

参考文献

Langer G, Fink A. Nutritional interventions for preventing and treating pressure ulcers. Cochrane Database Syst Rev. 2014 Jun 12;2014(6):CD003216. doi: 10.1002/14651858.CD003216.pub2.

創傷・熱傷ガイドライン委員会, 創傷・熱傷ガイドライン委員会報告―2:褥瘡診療ガイドライン. 日皮会誌:121(9),1791-1839,2011