きゅうせいこうまくがいけっしゅ
急性硬膜外血腫
脳を覆う硬膜表面の血管から出血して、硬膜と頭蓋骨の間に血の溜まりが生じた状態。交通事故などによる強い衝撃で起こりやすい
12人の医師がチェック 92回の改訂 最終更新: 2018.03.01

Beta 急性硬膜外血腫のQ&A

    急性硬膜外血腫はどういう病気ですか

    脳を包む膜である硬膜と頭蓋骨との間に出血が起こり(イメージとしては、頭蓋骨のすぐ内側)、血が溜まった状態(血腫)を指します。ほとんどの例で頭蓋骨骨折を伴っており、急性硬膜“下”血腫よりも若年の方に起こることが多いとされます。

    急性硬膜外血腫の原因は何ですか

    頭部を強く打撲して硬膜や骨の血管から出血することで起こります。出血源は硬膜の動脈や静脈、骨の静脈等です。

    急性硬膜外血腫を発症しやすい人はいますか、注意すべきことはありますか

    頭部外傷の殆どは不意に起こる事故ですから、未然に完全に防ぐというのは難しいと思われますが、脳や心臓の疾患でもともと、血液を固まりにくくする薬(抗血小板薬、抗凝固薬)を飲まれている方は、血腫が大きくなりやすい可能性はありますので、頭部を打撲しないよう、より注意する必要があるでしょう。

    急性硬膜外血腫と急性硬膜下血腫とは何が違うのですか

    名前は似ており「脳と骨の間」に血がたまるという点は共通していますが、「硬膜下」と「硬膜外」で血腫が溜まる場所が異なり、発症後の経過も大きく違います。頭部CTで区別がつきますが、紛らわしいこともあります。

    急性硬膜外血腫では、どのような症状がでますか

    典型的には、受傷後しばらく(数分から数日と幅がある)、意識が保たれた後に、頭痛や意識障害、嘔吐、眩暈、痙攣などの症状を呈してきます。硬膜外血腫以外の頭部外傷を伴うことも稀ではないため、受傷直後から意識が無いことも当然あります。

    急性硬膜外血腫は重症化するとどうなりますか

    最初は意識のあったものが、嘔吐や頭痛、麻痺などの症状を示したり意識消失をしたりします。このような状態で手術のタイミングを逃すと、脳のダメージが不可逆となり後遺症を残すことがあります。

    急性硬膜外血腫はどのように診断しますか

    頭部外傷後の患者に頭部CTを行い、そこで診断がつきます。血腫の大きさや場所を特定し、また硬膜下血腫以外の出血や骨折についても評価を行い、治療方針を決定します。また初回のCTで手術の必要が無いと判断した場合も、その後血腫が大きくなってくる可能性がありますので、複数回CTを撮ることになります。

    急性硬膜外血腫では他にどのような検査をしますか

    骨折の状態や、脳自体にどの程度損傷があるかを調べるために頭部レントゲンや頭部MRIを撮ることもあります。頭部以外にも外傷があれば、そちらの検査・治療も平行して行います。

    急性硬膜外血腫にはどのような治療をしますか

    血腫にある程度の大きさがある場合(治療ガイドラインでは厚み1-2cm以上、もしくは20-30ml以上)や、CTで脳ヘルニア(血腫により脳が押され、呼吸などの重要な機能を持つ部分に影響が出る)がある場合、意識障害を呈している場合、症状が軽くても徐々に悪化している場合には手術が必要と判断されます。症状が軽く、血腫が少ない場合には安静にして経過観察を行うこともあります。この疾患を治す点滴や内服薬というのは現在存在しません。(出血を抑える薬や頭蓋内の圧力を抑える薬はありますが、根本的な治療にならないこともあります。)

    急性硬膜外血腫の手術ではどのようなことをしますか

    血腫がある部位の頭蓋骨を開け(開頭)、血腫を取り除きます。出血している血管が分かれば止血します。それまで圧迫されていた脳がその後腫れてくるため、外した骨を戻さずに(減圧)、傷を閉じることがあります。多くの場合は骨折を伴っていますが、陥没骨折をしていたり骨がずれている場合にはその修復も行います。

    急性硬膜外血腫は治る病気ですか

    他の損傷がなければ、完治しうる疾患です。多くの方(70%程度)は手術前にあった症状が改善し、その中で完全に回復する方も珍しくはありません。しかし一方で30%の方は後遺症が残ります。硬膜外血腫が原因で死亡する、もしくは重い後遺症が残る率は全体の10%です。ただし、他の重症外傷を伴っている場合は、後遺症残存率や死亡率はこれよりも上がると考えられます。

    急性硬膜外血腫ではどのくらい入院しますか

    回復例では、早ければ手術直後から意識状態が改善します。重症度や患者さんの基礎疾患によっては数日から数週間かけて回復してくることもあります。受傷時から手術までの脳のダメージが大きければ、手術後も受傷前と同等までは意識が回復せず、長期のリハビリや療養が必要となることもあります。