Beta 気管支喘息のQ&A
気管支喘息の原因、メカニズムについて教えて下さい。
空気を肺に送る通り道である気管支が過敏になり、炎症がおこります。それにより、気管支平滑筋という筋肉が縮み、気管支の壁が厚く腫れることで空気の通り道が狭くなることが、気管支喘息の原因です。それにより呼吸困難や咳が出現します。気道の過敏性を引き起こす原因として、抗原(アレルギーを引き起こす物質)の吸入や感染、ストレス、運動などが挙げられます。
気管支喘息は、どのくらいの頻度で起こる病気ですか?
喘息は日本の子どもの9%から14%ほど、成人(15歳以上)の6%から10%ほどがかかる、とても身近な疾患です。2016年にも年間約1,500人の方が気管支喘息によって亡くなっています。治療法の進歩により、重症化する頻度は減少しています。
気管支喘息は、遺伝する病気ですか?
結論から言えば、遺伝することはしばしばあります。両親どちらかが喘息の場合、子供が喘息になる危険性は3倍から5倍程度に高まるという報告があります。ただし気管支喘息は環境や生活習慣など様々な影響をうけます。そのため、いわゆるアレルギー体質に遺伝性はありますが、発症するかどうかはその他の様々な原因に左右されます。ハウスダストや喫煙、ペットの飼育などに注意することで、発症率や重症度を軽減することができます。
気管支喘息は、どんな症状で発症し重症化するとどうなりますか?
主に咳や痰の増加、呼吸の苦しさが出現します。患者さんによっては、夜間の不眠やだるさなど呼吸関連の症状がはっきりしない場合もあります。重症化すると、苦しくて横になれない、動けないようになり、進行すると窒息し死に至る場合があります。
ただし、このような気管支喘息の症状は、他の疾患でも出現する症状であり、自己判断せず医療機関で詳しく調べましょう。
気管支喘息は、どのように診断するのですか?
最も基本的な診断は「呼吸機能検査」と「気道可逆性試験」で行います。ともにスパイロメーターという呼吸機能を測定する機械で行います。典型的には気道が狭くなっていることが確認でき、なおかつ気管支拡張薬の吸入によって呼吸機能が改善する場合に診断されます。ただし、典型的で軽症と思われる喘息はこれらの検査が省略されることも実際にはありますし、逆に胸部レントゲンや胸部CTなど他の検査を追加して、喘息以外の病気でないことをしっかり確認する必要があるケースもあるなど、喘息の診断は一筋縄ではいかないものです。
気管支喘息の、その他の検査について教えて下さい。
補助的な項目として、喀痰好酸球検査や呼気一酸化窒素濃度(FeNO)測定、採血などを組み合わせることがあります。これらの検査は必ずしも全てが行われるわけではなく、問診や身体所見などから必要と考えられる検査が追加で行われます。
気管支喘息と診断が紛らわしい病気はありますか?
結論からいうと、喘息と似た症状や検査結果を示しうる病気はとても多いです。例として慢性閉塞性肺疾患(COPD)、鬱血性心不全、気管内腫瘍、過換気症候群、好酸球性肺炎、アレルギー性気管支肺真菌症、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症などが挙げられます。喘息の診断が容易でないことはしばしばあるので、必要に応じて検査が追加されます。
気管支喘息の治療法について教えて下さい。
喘息とは気道過敏性の亢進による気管支の炎症が主体であり、成人における治療としては炎症を抑える吸入ステロイドの使用が基本となります。吸入力が弱い方(高齢者や乳幼児)や、吸入ステロイドの副作用が若干懸念される小児では吸入ステロイド以外の治療薬が優先されることもしばしばあります。症状が強い方には気管支拡張作用などをもつ他薬剤を併用します。近年は特殊な注射薬や、気管支サーモプラスティという内視鏡治療も行われることがあります。
気管支喘息に関して、日常生活で気をつけるべき点について教えて下さい。
気管支喘息の発作を減らすためには、日常生活において喫煙やハウスダスト・ダニなどを出来る限り避け、大きな温度変化を避けるなどの環境調節を行い、人によってはアルコールや解熱鎮痛薬など特定の物質を避けることが有効です。気管支喘息を患っている方、または患者さんと同居している家族は禁煙・こまめな清掃など心がけることが大切です。
気管支喘息は、完治する病気ですか?あるいは、治っても後遺症の残る病気ですか?
何をもって「完治」とするのかは難しいところですが、治療薬無しで症状を自覚しなくなることを「完治」とするのならば、小児喘息患者さんの約50%から70%は思春期にかけて喘息は「完治」するとされています。ただし、そのうち30%弱は成人してから再発してしまいます。また、小児喘息のうち約30%の患者さんは思春期にかけて軽快はするものの、症状は消失すること無く持続し、そのまま成人喘息に移行します。成人喘息患者さんの場合には小児よりも自然に「完治」する割合は少なく、その割合は10%以下と言われています。このように喘息は、「完治」する割合は必ずしも多くない病気ではあります。しかし、年に数回くらいしか症状の出ないような軽症の患者さんも多くいますし、大事なことは喘息を放置して気管支の破壊(リモデリング)が進んだ状態にしないことであると言えるでしょう。完治しない喘息に嫌気がさしてしまう患者さんも多いと思いますが、ご自身の体質の1つと考えて、主治医とともに気長に喘息と付き合っていきましょう。
気管支喘息の発作の時に、気管支拡張薬だけを使えばいいのですか?
短時間だけ作用する気管支拡張薬を、発作時に使用するように医師から処方される場合が多いです。使用することで一時的に呼吸が楽になるため、それのみを希望される方がよくいらっしゃいます。しかし、あくまで症状の根本は気道の炎症なので、それを抑える吸入ステロイドを使用が治療の中心となります。月に1回くらいは喘息関連の症状が出るようならば、成人の場合には基本的に継続的な吸入ステロイドが必要になります。
気管支喘息の治療薬のステロイドに、副作用はありますか?
ステロイドは副腎とよばれる臓器から分泌されるものですが、多く使用すると骨粗鬆症・糖尿病・感染症など様々な副作用を起こしてしまうことがあります。しかし、それは主に大量に長期間内服した場合であり、気管支喘息で主に使用する吸入ステロイドでは大きな副作用は起こりにくいです。小児では若干身長が伸びにくくなるという副作用が報告されており、吸入ステロイドもある程度慎重に使用する必要はありますが、内服・点滴ステロイドの副作用を吸入ステロイドの副作用と誤解せず適切に使用することが大切です。
気管支喘息では、通院はどの程度必要ですか?
気管支喘息といっても、ほとんど症状の出ない軽症の方から命の危険がある重症の方まで様々ですので、通院が必要な頻度は人によります。通院が2週間に1度必要な方もいますし、発作が出たときだけで良い方もいます。ただし、症状があるのに我慢して通院せずに放置すると、気管支の破壊(リモデリング)が進行してしまい次第に喘息が治りにくくなっていくので、症状がある場合には通院頻度に関して主治医と十分に相談してください。