2016.10.30 | ニュース

赤ちゃんを泣き止ませるために74本の論文が調べた方法、その効果は…

7,049人分のデータを調査した結果

from The Cochrane database of systematic reviews

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赤ちゃんは検査などで針を刺されると痛がって泣きます。痛がらせない方法については多くの研究があります。中でも砂糖の効果を調べた研究から、これまでに報告されている結果がまとめられました。

ここで紹介する研究は、文献を集める方法により、新生児に痛みをともなう処置を行うときに砂糖を使って痛みを抑える効果として、これまでに報告されている内容をまとめています。

研究班は、文献データベースを参照して、2016年までの研究の中から関係するものを74件、対象とされた子どもの人数で合計7,049人分のデータを集めました。

調査範囲として、何度も採血されやすい早産児を対象にした研究と、正期産児を対象にした研究の両方を含めました。

子どもの痛みを測るために、心拍数や顔をしかめる様子から痛みを評価する指標(PIPP)が効果の基準とされました。

 

見つかった研究から、砂糖水に浸したおしゃぶり、または少量の砂糖水を与えることで、早産児・正期産児ともに、かかとに注射針を刺すときの痛みが軽くなると見られました。

かかとに針を刺す方法は、赤ちゃんから採血するときによく使われます。

また、少量の砂糖水によって次の場合にも痛みが軽くなると見られました。

  • 静脈に注射針を刺すとき(注射などのため)
  • 筋肉注射のとき

一方、包皮環状切除(ユダヤ教などで行われる割礼のための手術)のときに砂糖水を与えても痛みを軽くする効果はないと見られました。

以下の場合についてはデータから結論が出せませんでした。

  • 動脈穿刺
  • 皮下注射
  • 経鼻胃管または経口胃管の挿入
  • 膀胱カテーテルの挿入
  • 眼球の診察
  • 心エコー

 

砂糖水を使うことで、ある場合には赤ちゃんの痛みが軽くなるかもしれないというデータが見つかりました。明らかに痛がっているときに泣き止ませるのが難しければ、試してみる価値はあるかもしれません。

一方、赤ちゃんの痛みを軽くする方法はほかにも研究されています。たとえば赤ちゃんを裸にして母親の胸に肌で触れ合うように抱く「カンガルーケア」という方法の研究もあります。

さまざまな方法が試される中で、砂糖の効果だけでも74件の報告が集まるほど、全世界の親と小児科医が赤ちゃんを泣き止ませようと苦労している様子が窺えるのではないでしょうか。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Sucrose for analgesia in newborn infants undergoing painful procedures.

Cochrane Database Syst Rev. 2016 Jul 16.

[PMID: 27420164]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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