2016.03.22 | ニュース

N95マスクで本当に感染を防げるのか?

文献の調査から

from CMAJ : Canadian Medical Association journal = journal de l'Association medicale canadienne

N95マスクで本当に感染を防げるのか?の写真

インフルエンザウイルスは市販のマスクを通過して感染します。「N95」というタイプのマスクは、手術用マスクよりも細かい粒子を遮断できますが、そのことで感染予防はできるのでしょうか。これまでの研究報告の調査が行われました。

◆N95マスクとは?

病院では診察など多くの場面で手術用マスクが使われています。N95マスクも場合によって使われます。N95マスクは非常に細かいフィルターを使っていますが、顔に密着していないと隙間からフィルターされない空気が入ってしまうため、フィットテストなどで密着していることを確認したうえで使われます。正しく装着された場合、空気の流れが制限されるため息苦しくなり、長時間装着するには向いていません。

 

◆N95マスクは粒子を防ぎ、病気を防ぐか?

ここで紹介する研究は、N95マスクと手術用マスクを比べて、急性呼吸器感染症を防ぐ効果を調べるため、これまでに報告された研究結果を集めて統合したものです。

マスクが粒子を通過させるかを調べた研究と、その結果としてマスクをつけた医療従事者に症状などが発生することを防げるかを調べた研究が集められました。

 

◆感染症を防ぐ力に差はない

調査の結果、23件の研究データから、N95マスクは手術用マスクよりも粒子を通過させにくかったという結果が得られましたが、症状などを調べた6件の研究では次の結果でした。

臨床研究のメタアナリシスにおいて、N95レスピレーターと手術用マスクの間で、次のリスクと関連する有意な差は見られなかった。(a)検査で確かめられた呼吸器感染症(RCTではオッズ比0.89、95%信頼区間0.64-1.24、コホート研究ではオッズ比0.43、95%信頼区間0.03-6.41、症例対照研究ではオッズ比0.91、95%信頼区間0.25-3.36);(b)インフルエンザ様症状(RCTではオッズ比0.51、95%信頼区間0.19-1.41)、(c)報告された不出勤(RCTでオッズ比0.92、95%信頼区間0.57-1.50)。

見つかったデータからは、N95マスクと手術用マスクで、呼吸器感染症を防ぐ効果に違いが見られませんでした

 

N95マスクを使いさえすれば安心とは言いにくいのかもしれません。以前に紹介した研究では、インフルエンザウイルスを含んだ空気を眼にだけ触れさせても感染が起こったこと、手術用マスクを使った防護でもある程度の効果が見られたことなどが報告されています。

N95マスクがどのような場面に適しているかは、ここで対象とされた以外の使い方も含め、ほかの情報とあわせて検討する必要があります。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Effectiveness of N95 respirators versus surgical masks in protecting health care workers from acute respiratory infection: a systematic review and meta-analysis.

CMAJ. 2016 Mar 7. [Epub ahead of print]

[PMID: 26952529]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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