自宅近くのクリニックは休み。救急車を呼ぶほどの症状ではなくても、そのまま朝になるまで待っていても大丈夫なのか、それとも休日・夜間でもやっている救急外来を受診したほうがよいのか、迷うことがあると思います。今回は、どんなときに受診を考えたらよいのかについて、休日・夜間の時間外受診の特徴から考えていきます。
救急外来は緊急の対応が必要かどうかを見極める場所
まず、休日・夜間に病院の救急外来が開かれているのは、緊急の対応を要する患者さんに、適切な処置をするためです。例えば、腹痛で来院した患者さんが、急性虫垂炎(いわゆる"もうちょう”)の診断で手術を行う方針になればそのまま入院が必要になりますし、手を切って血が止まらず来院した患者さんには、その場で傷を縫って止血処置を行います。こういった早急な対応が必要な場面で活躍するのが、救急外来になります。
できることには限りがある
その一方で、診療時間外には必ず詳細な診断が下るとは限りません。日中に比べて血液検査でできない項目が少なくなかったり、MRI検査のできる医療機関が多くなかったりするなど、検査の制限が多くなるのです。そのため、時間外診療は、命に関わる重症な状態かどうかを見極めてもらうことが目的と考えてください。
また、休日・夜間は診療に携わるお医者さんの数も少なくなります。例えば消化器の病気が疑わしい患者さんがきたとしても、消化器専門のお医者さんがいないこともあります。担当医は専門の医師に電話などで相談することはできますが、病院や診療科の体制によっては専門の医師が直接対応できない場合もあります。
さらに、時間外には処方できる薬の量が少なくなることにも注意が必要です(一般的に1、2日分しか処方できません)。
こういった理由から、再度平日の日中に病院を受診していただくことも多いです。
【平日の日中に改めて受診が必要になる場合】
- 緊急ではないが、受けたほうがよい検査がある場合
- 緊急ではないが、専門の医師の診察を受けたほうがよい場合
- 追加で薬が必要な場合
体調に不安があるからわざわざ受診したのに、「日中また来てください」と言われると、肩透かしを食らった気分になってしまうと思います。怒りが湧いてくる人もいるかもしれません。しかしそれは、「いますぐ治療が必要なほど重い状態ではない」という意味でもありますので、前向きに捉えてもらえたらと思います。
割増料金がかかる
時間外に、救急外来のある大きな病院を受診した場合、基本的に時間外選定療養費という割増料金がかかります。病院によって異なりますが、5000-15000円程度のことが多いようです。比較的高額なのは、安易な時間外受診を控えてもらい、救急外来が本来救うべき患者さんに専念できるようにするねらいもありそうです。
そのため、以下のような場合には時間外選定療養費はかかりません。
【時間外選定療養費がかからない場合】
- 受診し、そのまま入院が必要になった場合
- 医師により救急外来の受診が必要と判断された場合
- 例えば夕方に近くのクリニックを受診し、そこで総合病院の救急外来の受診が必要であると判断されて紹介状がある場合 など
- その病院から時間外での受診の指定があった場合
つまり、必要があって受診する患者さんには時間外選定療養費はかかりませんので、安心して利用してください。
どんなときに受診したらよいのか
まず大前提として、いつもと比べて明らかに様子がおかしい場合には、ためらうことなく受診してください。
迷うのは冒頭のケースのような場合かと思います。
休日や深夜に突然症状が出てきたときや、前からあった症状でもどんどんひどくなるとき、このまま平日や翌朝になるまで様子をみてよいのか不安になると思います。このような時は、受診していただくことで、緊急性を要する病気かどうかを知ることができます。ただ、繰り返しになりますが、上記のように時間外の救急外来ではできることには限りがあり、診断が下らない場合もあります。
逆に次のような場合では、日中の診療時間内での受診をおすすめします。
- 以前から症状があり、ひどくなってはいないが夜中に急に不安になってきた
- 診療時間内に受診することで詳細な検査を受けられます
- 平日の昼間は忙しくて病院に行く暇がない
- 時間外の受診はかなり高額になるうえに診断のための検査ができないことが多いです
中には、日中は仕事が忙しいという理由で、早朝や夜中に時間外受診する患者さんを見かけることがあります。しかし、時間外選定療養費もかかりますし、詳細な検査をするために後日一般診療時間内に再診していただくことになる手間を考えると、急を要さないのであれば、そういった理由で時間外受診をするのは得策ではないといえるでしょう。
受診を迷ったら一度電話連絡を
とはいっても、ご自身で今すぐに病院受診すべきかどうか、家で様子をみてよいのか、そもそも救急車を呼んだほうがよいのか、判断を迷うことも多いと思います。迷ったら、一度病院に電話連絡をしてください。時間外担当の看護師や医師に相談することができます。
また、病院ではなく、救急安心センター事業(♯7119)というサービスが受けられる地域もあります。どこの病院に行けばよいのかも含め、案内がありますので、ぜひご活用いただければと思います。
執筆者
総務省消防庁WEBページ:救急安心センター事業(♯7119)ってナニ?
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。