2019.09.03 | コラム

胃のポリープはがんになるのか?

胃底腺ポリープと過形成ポリープについて詳しく説明します

胃のポリープはがんになるのか?の写真

健康診断や症状の原因を調べる目的で胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)を受けて、胃のポリープがみつかる人は少なくありません。ポリープとは粘膜が増殖して盛り上がってできた「できもの」のことです。ほとんどの胃ポリープは特に悪さをしない良性のできものなので、手術で切除せずにお医者さんから「様子見しましょう」と言われます。しかし、胃のできものを本当にそのままにして良いのか、がんになったりしないかと、あれこれ心配になってしまうかもしれません。

このコラムでは、胃のポリープのなかでも特によくみつかる「胃底腺ポリープ」と「過形成ポリープ」について解説をし、胃のポリープがあると指摘された人が抱きがちな疑問に答えます。

 

1. 胃底腺ポリープは本当に取らなくて良いのか?

胃にできるポリープの中で最も多く見つかるのが胃底腺ポリープです。この胃底腺ポリープががんになることは、めったにありません。また、胃底腺ポリープは基本的に胃がんの原因になるピロリ菌に感染していない人にできるものであり、胃全体としても胃がんになりにくい状態と考えられます。つまり、胃底腺ポリープが見つかったからといって特別な治療が必要になることはまずありません。

 

2. 胃の過形成ポリープはがんになることがあるのか?

胃の過形成ポリープは、胃底腺ポリープに次いでよく見つかる胃のポリープです。

結論から言うと、胃の過形成ポリープががんになることはごく少数ながらあります。大きさが2cm以上になるとがんの可能性が高いことがわかっているので、当てはまる人には切除が必要です。しかし、小さなものであればがんになることはほぼ無いので、切除せずに定期的な胃カメラで様子を見ることになります。

一方、胃過形成ポリープのある人はピロリ菌(Helicobacter pylori)に感染していることが多く、ポリープ以外の部分も含めて胃がんになりやすい状態になっていることがあります。したがって、ピロリ菌に感染していることがわかったら、ポリープに対する改善効果だけでなく、胃がんのリスクを下げる効果も狙って、ピロリ菌の除菌が治療として勧められます。

がんの可能性があるといわれると心配になるものですが、これらの治療で胃がんを遠ざけることができます。

 

3. 治療が必要な胃の過形成ポリープとは?

上記で述べた内容を含め、治療が必要な胃過形成ポリープについてまとめると下記のようになります。

 

  • ピロリ菌に感染している
  • 胃過形成ポリープが大きい
  • 胃過形成ポリープから出血している

 

これらに該当する人はその後どういった展開になるのか説明します。

 

ピロリ菌に感染している人

ピロリ菌は胃過形成ポリープを引き起こす要因の一つと考えられており、除菌をすると胃過形成ポリープが小さくなることがあります。また、ピロリ菌に感染していると胃がんリスクが高まることからも、血液検査や尿素呼気試験などの検査でピロリ菌への感染がわかった人には除菌治療が提案されます。除菌用の内服薬を1週間飲むと、約8-9割の人で除菌できるといわれています。(ピロリ菌の検査や除菌法の詳細はこちらを参考にしてください)

 

胃過形成ポリープが大きい人

2cmを越える胃過形成ポリープは、がんになる可能性があるため切除が検討されます。胃過形成ポリープに対してよく行われる切除法は、胃カメラを使って行う「ポリペクトミー」です。これは、電気が流れるワイヤーを投げ輪のようにポリープに引っ掛けて、通電して焼き切る方法です。お腹をメスで切って行う開腹手術よりも合併症のリスクが少ないという利点があります。(ただし、どれくらいの大きさになったら切除したほうが良いかというはっきりとした指針はなく、2cm未満の胃過形成ポリープでも状態によっては切除を提案されることもあります。)

 

胃過形成ポリープから出血している人

ポリープから出血している人は、貧血にならないように、小さくても切除を勧められることがあります。切除は上記で紹介したポリペクトミーで行われることが多いです。

 

ここまで、治療が必要な胃過形成ポリープがあるという説明をしました。しかし、胃過形成ポリープの切除が必要になることはまれであり、定期的な胃カメラ検査を受けていれば十分なことが多いです。

 

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胃ポリープを指摘されると心配になるかもしれませんが、このコラムによって「多くの胃のポリープががんがならないこと」、がんになる可能性があるものに関しては「がんのリスクを下げる治療法があること」を知って不安が解消されることを願っています。

参考文献

・大坊昌史:胃過形成ポリープの癌化について.日本消化器病学会雑誌 1986年 83巻 5号 p 939-950.

・Han AR et al.:The clinicopathological features of gastric hyperplastic polyps with neoplastic transformations:a suggestion of indication for endoscopic polypectomy. Gut liver 2009 3 (4):271-275.

・Ahn JY, Son da H, Choi KD, et al : Neoplasms arising in large gastric hyperplastic polyps : endoscopic and pathologic features. Gastrointest Endosc 2014 80(6): 1005-1013.

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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