2019.08.13 | コラム

咳がつらい・・・。受診したほうがいいのはどのような人?

何週間も咳が長引く場合や、ただの風邪ではないと感じる場合は受診をお勧めします

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咳がなかなか治らずに体力を消耗してしまったり、激しい咳き込みで夜も眠れなかったりと、咳で困ったことのある人は多いかと思います。実際に、医療機関を訪れる人の受診理由として「咳」は頻度が高いものの一つです。しかし、どのような咳ならば受診したほうがよいかという目安はあまり知られていません。ここでは受診するメリット・デメリットを明確にし、どのような時に受診するのがよいかを解説していきます。

1. ただの風邪の咳だと思うときに受診することは意味がある?

結論から言えば、「明らかにただの風邪による咳だ」と感じている人が受診するメリットは乏しいことが多いです。風邪で受診する気持ちとしては次のようなものがあるかと思います。

 

1)早く治したい(早く仕事や学校に行きたい)
2)つらい咳を抑えたい
3)薬代を安くすませたい(市販の風邪薬よりも処方薬のほうが安いから)

 

どれも誰もが経験したことがある気持ちかもしれません。しかし、そこには多少の誤解が潜んでいるので説明します。

 

早く治したい

「1)早く治したい」に関してはよくある誤解で、薬を処方してもらっても風邪が早く治るわけではありません。風邪のほとんどはウイルスが喉などに感染して引き起こされるものです。しかし、風邪薬は発熱や鼻水といった症状を和らげる作用はあるものの、ウイルスを直接攻撃するものではありません。

 

つらい咳を抑えたい

風邪薬が症状を抑えてくれるならば「2)つらい咳を抑えたい」に関しては叶うのではないかと思うものですが、実は、風邪による咳に対してよく効く薬というのはありません。しばしば咳止めとして処方される薬にデキストロメトルファンメジコン®など)やコデインリン酸などがあります。ところが、今までの研究データでは咳止めの効果が多少あったとする論文となかったとする論文があり、よく効くと言えるほどの効果はないと考えられます。(なお、これらの成分は市販薬にも含まれています。)

 

出費を抑えたい

「3)薬代を安くすませたい」については、確かに保険適用の処方薬は市販薬よりも安上がりなことがあります。ただ、初診料・再診料をはじめとした薬以外の費用もかかることを考慮すると、それほど得はしないことが多いです。市販薬を年間12,000円以上買う家庭であれば、2017年から始まった「セルフメディケーション税制」を利用できます。

 

ここまで、ただの風邪の場合には受診するメリットは乏しいかもしれない、ということを解説しました。風邪以外の病気ではないかという不安があれば受診して相談したほうがよいですが、そうでなければ、混んでいる医療機関で体力を消耗するよりは、家でゆっくり休むのも十分に合理的な選択肢です。

 

2. どんな咳の場合には受診すべき?

では、逆にどのような咳の場合に受診すべきなのか、以下に目安を示します。

 

【医療機関を受診すべき咳の目安】

  • 2, 3週間以上続いている咳の場合
  • ただの風邪ではないかもしれないと感じる場合
  • 38℃以上の発熱が何日も続く場合(目安:丸3日以上)

 

数週間以上にわたって咳が続いている人は、ただの風邪ではないことが多いです。「咳ぜんそく」のようなよくあるが侮れない病気、「肺がん」や「肺結核」などやや珍しいが注意が必要な病気が隠れていることがあるので受診が必要です。

また、自分でただの風邪ではないと感じている人や38℃以上の発熱が何日も続いている人は、「肺炎」などの早めに治療が必要な病気が隠れていることがよくあります。ただの風邪かどうか自信が持てない人は受診したほうがよいです。

「ただの風邪ではない」というのは、かなり主観的な表現ではありますが、例えば、普段出ないくらいの高熱がある、とても強い喉の痛みや胸の痛みがあるなど、今までの風邪で経験したことのないような症状を伴う咳であれば「ただの風邪ではないかもしれない」と考えてください。

こうした咳を中心とした症状を診るのが得意な診療科は内科です。呼吸器内科を標榜している医療機関や、胸部レントゲン検査ができる医療機関だとより安心です。いきなり専門的かつ高度な治療が必要になることは珍しいので、最初に受診するのは、待ち時間が長くなりがちな大病院よりも診療所・クリニックといった中小規模の医療機関がお勧めです。

 

3. 子どもの咳はどうしたらよい?

子どもの場合にも、基本的に上記の【医療機関を受診すべき咳の目安】に当てはまったら受診する必要があります。しかし、子どもの場合には「ただの風邪ではないかもしれない」というのが大人よりも分かりにくいものです。咳がとても強い、息苦しそうにしている、ぐったりしている、といった症状がある場合はもちろん、「ただの風邪だ」と自信が持てない場合には、大人よりも敷居を低くして医療機関を受診するのが良いと思います。

なお、子どもが風邪で咳をしている際にハチミツを飲ませると有効だという報告があります。さほど強い効果は期待できませんが、試してみてもよいかもしれません。ただし、1歳未満の赤ちゃんがハチミツを食べると乳児ボツリヌス症にかかる恐れがあるので、ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてからにしてください。

 

4. まとめ

ここまで、咳で困っている場合に医療機関を受診すべきかどうかに関して説明しました。一人ひとりで状況が違うので実際にお医者さんに診てもらわないと確定的なことは言えないのですが、この記事を読んで次のポイントを知ってもらえれば幸いです。

 

【咳に困っている人が受診の目安にするとよい2つのポイント】

  • ただの風邪による咳ならば家で休んでいるのも立派な選択肢である
  • ただの風邪とは違う何かを感じる咳ならば躊躇なく医療機関を受診したほうがよい

 

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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