2018.08.22 | コラム

MRI検査を受けるまえに知っておきたいこと

メリット・デメリットについても説明します

MRI検査を受けるまえに知っておきたいことの写真

『MRIの写真』は身体の断面図を精密に示すものです。MRI検査では体外から何かを挿入する必要がないのに体内のことが分かります。どういった原理で体内のことが分かるのでしょうか。

MRI検査では、磁石の力を使っています。MRI機器そのものが大きな磁石になっており、患者の入るMRI機器の中や周囲には磁場*が作られています。 この磁場に電流を流して発生させる傾斜磁場というものをかけあわせると患者の体内にある水分子の位置情報が分かります。この原理を用いて、体内に水分子がどう分布しているのかが分かり、画像が出来上がります。

*磁場:磁力が作用する空間のこと。

 

1. MRI機器:MRI検査を行うときに使用される機械

MRI検査で使用される機器は内部が空洞になっています。この機器の中を身体が通過することで検査が行われます。検査を受ける人は特に何かをする必要はなく、機器に附属した寝台に仰向けに寝ているうちに検査が行われます。

 

【MRI機器】

 

CT検査と同様に筒型の機械ですが、磁力の受信用の装着物が検査をする部位に取り付けられることもあり、空間が狭く感じられます。そのため、閉所恐怖症がある人が検査を受けるのは難しいです。

また、検査中に「ガンガン」、「ガッガッガッ」というような大きな音がしますが、機器が正常に動いている際に生じる音ですのでまったく心配はいりません。検査時間は10-40分程度とCT検査に比べて長いです。

 

2. MRI検査のメリット・デメリット

MRI検査はCT検査のように被曝がないので、子どもや妊婦に使いやすいという特徴があります。そうでない人には、一般的にはCT検査のあとにMRI検査が勧められることが多いです。

MRI検査は体内を調べることができる点でCT検査に似ていますが、それぞれ得意不得意があります。ここではMRI検査のメリットとデメリットについて、CT検査と比較しながら説明します。

 

MRI検査のメリット

  1. MRI検査は放射線を用いないため被曝がないため、子どもや妊婦にも使いやすい
  2. CT検査では骨があると画像が綺麗に写らないことがあるが、MRI検査では骨の影響(アーチファクト)が出にくく、骨に囲まれた臓器の診断に特に優れている
  3. CT検査では見えづらい臓器内部の細かな情報を得ることができる
  4. 造影剤を使わなくても脳の血管や身体の血管が見られる

 

MRI検査が得意とするのは次のような部位です。

  1. 子宮や卵巣、前立腺などの骨盤の中にある臓器
  2. 脳と脳の血管
    脊髄内部や脊椎の椎間板とその周辺の組織
  3. 胆管、総胆管、膵管
  4. 関節やその周囲の組織
  5. 部位にかかわらず、腫瘤の内部性状の特徴を得ることがCTよりも得意

 

これらの部位を調べる際にはCT検査を行わずにMRI検査を行うことがあります。

 

MRI検査のデメリット

  1. 石灰化が起きている部分はCT検査に比べてわかりにくい。出血して間もない部分はCT検査に比べてわかりくいことが多い(ただし、微小な出血についてはCTよりもMRIの特定の撮像法で鋭敏に検出できる場合がある)
  2. CT検査よりも時間がかかる(検査する部位にもよるが、一般的には10-20分程度かかる)
  3. 小さな病変はCT検査よりもみえづらい
  4. 患者が動くときれいな画像が得ることがCT検査以上に難しい

 

これらのメリットデメリットを踏まえて、MRI検査とCT検査のどちらの検査をするかが選ばれます。

 

3. MRI検査を受ける際に気をつけること

MRI検査では強力な磁気を使うため、いくつか守らなくてはいけないことがあります。

 

  1. MRI検査の部屋に入る前に、ネックレスや腕輪、時計などの貴金属は必ずすべて外してください。貴金属類は、磁石に反応して勝手に飛んでいったり、MRI機器にくっついてMRI機器を壊したりするおそれもあり、危険です。
  2. 手術などにより体内に金属が埋め込まれていることが分かっている人は、必ず担当の放射線技師に知らせてください。体内金属は、近年(おおよそ20年以内程度)では、磁力に影響されない材料を用いているものが増えていますが、磁力に影響される材料を用いていることもありその場合は危険です。たとえば、心臓に金属製の人工弁を入れている人や、人工内耳を入れている人は、MRI検査を受けることができません。一方で、近年脳動脈瘤クリッピング術に用いられているクリップであれば、MRI検査を受けられることが多いです。可能であれば、MRI検査を受けられるかどうか、手術した病院に問い合わせて事前に情報を得るようにして下さい。
  3. 化粧のマスカラやアイラインなどは金属(主に酸化鉄)を含んでおり、磁力に反応してやけどする危険があります。化粧は検査の前に落とすようにしてください。また、刺青やタトゥも金属を含んでおり、検査を受けられない場合があります。事前に担当医師や放射線技師に報告してください。
  4. 一部のコンタクトレンズでは、着用したまま検査を受けると眼球にやけどを負うおそれがあります。MRIに影響されないコンタクトレンズであるかどうか見分けることは難しいので、外してから検査を受けてください。
  5. MRI検査はCT検査以上に身体を動かすと精度が下がります。画質が悪くならないように、検査中は動かないでじっとするようにしてください。また、呼吸は浅くゆっくりするように心がけ、深呼吸はしないようにしてください。

 

検査の際には以上のことに気をつけて受けるようにしてください。

 

4. 造影MRI検査を受ける際に気をつけること

造影MRI検査はその名の通り「造影剤を用いたMRI検査」のことです。造影剤を用いるとよりはっきりとした画像を得ることができます。一方で、造影剤を用いる場合には、通常のMRI検査の注意点に加えていくつかの注意点があります。

 

  1. 造影剤を血管に入れるために、点滴のときと同じような細い管を静脈の中に入れます。この細い管を静脈の中に入れる際には、注射と同じように、少しちくっとします。また、造影剤を血管の中に入れている最中には、血液とは違う液体が血管の中に入るために刺激があります。
  2. 造影剤を入れているところの血管がとても痛くなる場合は、造影剤を入れる圧力が強すぎて、造影剤が血管の外に漏れてしまっている可能性があります。その場合には検査をすぐに止める必要があります。違和感を超えるくらい強い痛みを感じたらすぐに放射線技師に知らせましょう。検査中でもボタンで知らせられる病院が多いです。
  3. 造影剤が身体に合わず、アレルギーが出る人がいます。検査時に息苦しくなったり、急に咳やくしゃみが出たり、喉がかゆくなったり、身体がかゆくなったりするような場合には、2.の場合と同様に放射線技師に知らせるようにしてください。特に持病に喘息がある人はアレルギーが起きやすいので、検査の前に主治医に伝えるようにしてください。
  4. MRI検査で使う造影剤でアレルギーが起こる頻度は、CT検査の造影剤に比べると少ないです。ただし、MRI検査は磁場の発生する部屋で行うために点滴台や針などを容易に持ち込めない環境にあり、もしMRI検査の途中でアレルギー症状が起きた場合にはできるだけ速く検査室の外へ出る必要があります。アレルギーが疑われた場合には、検査途中で突然検査室の外に出されることがあります。
  5. MRI検査の造影剤で注意するべき副作用として、腎性全身性線維症があります。MRIの造影剤にはガドリニウムという重金属が使われています。腎臓の機能が低下した患者にこのガドリニウムを含む造影剤を用いると、皮膚が硬くなったり、腫れたり、痛みを伴ったり、ひどい場合には手足の関節が固くなるなどの症状を起こすことがあり、これを腎性全身性線維症と言います。この症状は、投与後数日で出ることもあれば、数ヶ月後あるいは数年後に出ることもあります。
    腎性全身性線維症を発症した人のほとんどは、腎機能が著しく低下していた人ということがわかっています。そのため、腎機能が著しく低下した人(目安として糸球体濾過量GFRという値が30以下)には造影剤を用いずにMRI検査を行います。腎機能の低下が軽度な人の場合、判断は難しいですが、少ない頻度ながら腎性全身性線維症を発症した例があり、腎機能の低下の程度と臨床的な必要性に応じて検査の方法が決められます。

 

これらのポイントを検査前に覚えておくことはとても大切です。しかし、いざ検査の場に行くと緊張感からどうして良いか分からなくなってしまうことがあります。検査中に何か違和感を感じたら、近くにいる医療スタッフに遠慮なく伝えるようにしてください。

 

5. MRI対応心臓植え込み型デバイスを入れている場合

ペースメーカーを含む心臓植え込み型デバイスを入れている人は、MRI検査を原則受けることができません。しかし、近年MRI対応型の心臓植え込み型電気デバイスを使っている人も増えてきました。

MRI検査に対応した心臓植え込み型デバイスを入れている人は、一定の条件下でMRI検査を行うことができます。すべての施設で行えるわけではなく、放射線科の医師や循環器科の医師が充実した施設においてのみ、行うことができます。また、どの型のデバイスが埋め込まれているかなどの事前情報の確認が重要になります。

MRI対応心臓植え込み型デバイスを入れている人は、デバイスを埋め込んだかかりつけ医に事前に相談し、植え込まれているデバイスの情報が書かれた紙をもらって持参するようにしてください。

小さな施設では、循環器科の医師や放射線科の医師がおらず、検査を受けられないこともあります。MRI対応心臓植え込み型デバイスが入っている人も、MRI検査が受けられる施設をかかりつけ医から紹介してもらうと安心です。

 

6. 妊婦と胎児のMRI検査について

MRI検査は被曝がない点から、妊婦や胎児でも検査が行われる場合があります。MRI検査に伴う主に磁力による胎児への直接的な影響を十分に検証できているとは言えません。ただし、2016年には特に奇形などの問題が起きやすい妊娠初期について非造影MRI検査は胎児に有害ではないという研究結果が報告されています。これに加えて現在までに非造影MRI検査による明らかな有害事象の報告がないという経験的な結果をふまえ、臨床的に必要な場合にはそのメリットを考慮し妊婦や胎児に対する非造影MRI検査を行う場合があります。妊娠中に非造影MRI検査を受けることになった人は、過度な心配はせずに検査を受けてください。

一方で、妊婦や胎児への造影剤の使用は、さまざまな副作用が起こりうると考えられています。そのため、妊婦や胎児対しての造影MRI検査は、慎重に考慮され受けるかどうかが決定されます。また、授乳中の場合には、造影MRI検査の造影剤は乳汁への移行があり、乳児に影響を与える可能性があるので、検査後しばらく(概ね24時間程度)は授乳を控える必要があります。

 

7.まとめ

  1. アクセサリーなどの貴金属類はMRI検査前に外してください。化粧も落とす必要があります。また、「閉所恐怖症があるかどうか」、「体内金属が入っているかどうか」、「喘息の持病があるかどうか」、「腎機能低下があるかどうか」も重要な情報です。事前に医療スタッフに伝えてください。
  2. 造影MRI検査中に、痛みやアレルギーを疑うような症状が出てきた場合には、すぐに放射線技師に知らせてください。
  3. MRI対応心臓植え込み型デバイスを入れている人は、デバイスを入れた病院でその情報をもらって、MRI検査をするお医者さんに必ず伝えてください。
  4. 妊娠初期における非造影MRI検査は、胎児にとって有害でないという研究結果が出ており、過度な心配は不要です。一方、造影MRI検査は副作用の可能性がありますが、お医者さんはメリットとデメリットを考えて検査を行った方がよいかどうかを判断しています。もし必要と判断された場合には、検査のメリットとデメリットについて説明をしてもらい、納得して検査を受けるようにしてください。
参考文献

1. 放射線検査説明に関するガイドライン 公益社団法人日本診療放射線技師会 http://www.jart.jp/news/ib0rgt0000000010-att/soudan_guideline.pdf

2. 腎障害患者におけるガドリニウム造影剤使用に関するガイドライン

3.  Association between MRI exposure during pregnancy and fetal and childhood outcomes.JG Ray, MJ Vermeulen, A Bharatha, et al. JAMA. 2016;316(9):952-961.

4. 超実践マニュアルMRI 監修:VERSUS研究会 編集:小倉明・土橋俊男・宮地利明・船橋雅夫

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

▲ ページトップに戻る