子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)とは?
CINは正常な子宮頸部の組織がしだいにがん化していく途中の段階と考えられています。CINは異常の度合いからさらに3段階のCIN1、CIN2、CIN3に分類されます。
CINが見つかった場合、円錐切除術などの方法で治療することもできますが、治療しなくても自然に消える場合もあります。特に異常の度合いが弱いCIN1は消えることが多いとされます。また、治療後の妊娠・出産では早産の確率が増えるなどの影響が残る場合があります。そのため、CINをすぐには治療せず、自然に消えることを期待しつつ、進行する場合には治療するといった方針の是非が議論されることもあります。
経過観察されたCIN2の退行・持続・進行の割合
フィンランド・イギリスなどから集まった研究班が、CIN2を経過観察した場合に、正常に近い状態に戻ること(退行)や逆に進行することがどの程度の割合になるかを推定するため、過去の研究から報告されているデータの調査を行いました。
この研究は、CIN2をすぐには治療せず経過観察した時、正常またはCIN1に退行するか、CIN2のまま持続するか、CIN3やさらに進行した子宮頸がん(浸潤がん)になるかに注目しています。
研究班は、文献の調査により過去の関係する研究を集め、内容を吟味したうえデータを統合して、CIN2の退行・持続・進行の割合を推計しました。
36件の研究データから
条件に合う36件の研究が見つかりました。データを統合すると、経過観察を始めてから24か月後に、50%が退行、32%が持続、18%が進行していました。
経過観察中に浸潤がんにまで進行した人は0.5%(3,160人中15人)でした。うち、浸潤がんとしては最も早期の段階にあたるステージ1A1で見つかった人がほとんどで、さらに進んだ浸潤がんが見つかった人は0.06%(3,160人中2人)でした。
この結果から、研究班は「多くのCIN2病変が[...]自然に退行する。したがって、ただちに治療介入するよりも、監視療法が正当化される」と結論しています。
子宮頸部の検査でCIN2が見つかったらどうするか
CIN2の自然経過の推計を紹介しました。24か月時点で退行は50%という結果でした。わずかでも浸潤がんに進行する可能性があれば治療しておくという考え方もできますが、実際に、CIN2をすぐには治療せず定期的に検査をして様子を見ている人もいます。
子宮頸がんは20代ごろの若い女性に発生することも少なくないという特徴があり、厚生労働省の指針に基づいたがん検診では、子宮頸がん検診の対象年齢は20歳以上とされています。検診でCINが見つかった場合には、その時点で妊娠しているか、将来出産の希望があるかなどを加味して、治療の方針が検討されます。CINの治療後の妊娠でも、必要に応じて定期的な検査を行うなどの対策のうえ、経膣分娩を目指すこともできます。
CINの治療は患者本人の考えによって変わる場合があります。予想をできるだけ正確にして、リスクを適切に理解した上で判断するためには、研究で得られた過去のデータを参考にすることができます。
執筆者
Clinical course of untreated cervical intraepithelial neoplasia grade 2 under active surveillance: systematic review and meta-analysis.
BMJ. 2018 Feb 27.
[PMID: 29487049]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。