鍼・指圧による頸管熟化または分娩誘発
オーストラリアの研究班が、鍼または指圧によって頸管熟化(子宮の出口が出産に備えた状態になること)や分娩誘発の効果を得られるかについて文献の調査を行い、『The Cochrane Database of Systematic Reviews』に報告しました。
この調査は、以前の研究を集めて評価したものです。鍼についての調査は2013年にも行われていましたが、より新しい研究報告も調査範囲に含めて更新されました。
鍼と卵膜剥離に差はない
文献データベースの検索から、条件に適した22件の研究報告が見つかりました。
次の結果が得られました。
鍼と卵膜剥離を比較した1件の試験で、群間に帝王切開の明らかな差はなかった(リスク比0.64、95%信頼区間0.34-1.22、1件の試験、207人の妊婦、中等度の質の証拠)[...]。
鍼と卵膜剥離を比較すると、帝王切開になる割合に差はないと見られました。卵膜剥離とは、子宮の出口を指で触れて刺激することで、陣痛を促そうとする手法です。
指圧について次の結果がありました。
通常のケアと比べて帝王切開を減らす点で指圧の利益の証拠はなかった(リスク比1.02、95%信頼区間0.68-1.53、2件の試験、151人の妊婦、中等度の質の証拠)。
指圧と通常のケアを比較すると、帝王切開になる割合に差はないと見られました。
研究班は「全体として鍼または指圧に帝王切開率を減らす明らかな利益はなかった」と結論しています。
鍼・指圧は無駄?
鍼または指圧が帝王切開を減らす効果はないとした報告を紹介しました。
ただし、ここで検討された効果がないとしても、出産前の鍼や指圧が否定されるわけではありません。分娩を促す以外の目的に効果があるかないかは別の議論です。
いわゆる代替医療もこうした検証の手順を踏んで評価されつつあります。
執筆者
Acupuncture or acupressure for induction of labour.
Cochrane Database Syst Rev. 2017 Oct 17.
[PMID: 29036756]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。