◆HPVワクチンとは?
HPV(ヒトパピローマウイルス)は子宮頸がんの原因に関係すると考えられています。性行為などで感染します。
HPVの感染により、尖圭コンジローマや肛門性器疣贅が発生します。HPVによって引き起こされた異常が進行して子宮頸がんになると考えられています。
HPVは、細かく分けると100種類以上に分けられます。そのうち「16型」や「18型」が特に子宮頸がんと関連性が強いとされています。
日本で現在使われているHPVワクチンには、2種類のHPVを予防する2価ワクチン(商品名サーバリックス)と、4種類のHPVを予防する4価ワクチン(商品名ガーダシル)があります。
さらに多くのウイルスをカバーする9価ワクチン(商品名ガーダシル9)がアメリカなどですでに承認されています。将来は2価・4価のワクチンが9価ワクチンに置き換わっていくことも予想されます。
◆2007年のガイドラインを更新
アメリカがん協会は、最新の研究データを参照して、HPVワクチンを接種するべき人の条件を検討しました。
2007年にもHPVワクチンのガイドラインが作られましたが、以後に加わった観点から不十分と見られていました。
- 2007年のガイドラインでは男性の接種に触れられていない。
- 2007年時点では9価ワクチンがなかった。
- 2007年のガイドラインでは19歳以上での接種に触れられていない。
◆男性も、19歳以上でも打つべき
検討の結果、次の推奨事項がまとめられました。
- 11歳から12歳の間に、全員にHPVワクチンの接種を始めるべきである。ワクチン接種は9歳から始めてもよい。
- 女性のワクチン接種は2価HPVワクチン製剤、4価HPVワクチン製剤が使用可能な限り勧められる。9価HPVワクチンも勧められる。
- 男性のワクチン接種は4価HPVワクチンが使用可能な限り、また9価HPVワクチンが勧められる。
- ワクチン接種は、以前にワクチンを接種していないか、3回接種を完了していない13歳から26歳の女性と13歳から21歳の男性にも勧められる。
- 22歳から26歳の男性はワクチン接種してもよい。
- 評価コメント:医療提供者は、以前にワクチン接種をしていないか3回接種を完了していない22歳から26歳の人に対して、より高い年齢でのワクチン接種はがんのリスクを減少される効果が比較的小さいことを知らせるべきである。
- ワクチン接種は、男性と性交する男性および、免疫抑制状態にある人(HIVに感染した人を含む)が以前にワクチン接種をしていなければ、26歳まで勧められる。
旧ガイドラインの疑問点に対しては、以下のように回答されたことになります。
- 男性もHPVワクチンを接種する。
- 9価ワクチンは推奨できる。
- 19歳以上でも場合によっては26歳まで、HPVワクチンは推奨できる。
- ただし、接種時の年齢が高いと予防効果は比較的期待しにくい。
性感染症の原則は男女同時に予防・治療することです。女性だけに接種を勧めていたことから比べると、より原則にかなうバランスになったと言えるでしょう。
副反応に対して十分警戒するのはもちろんですが、日本でも実際に使った結果をもとに議論を進めることが、全国の女性の健康のために重要な役割を果たすはずです。
執筆者
Human papillomavirus vaccination guideline update: American Cancer Society guideline endorsement.
CA Cancer J Clin. 2016 Jul 19. [Epub ahead of print]
[PMID: 27434803]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。