◆伝染性単核球症に抗菌薬を使わないために
伝染性単核球症の原因は、EBウイルスなどのウイルスです。抗菌薬(抗生物質、抗生剤)は細菌に対して効果がある薬ですが、ウイルスには効きません。しかも、伝染性単核球症にかかった人が誤ってペニシリン系抗菌薬などを使ってしまうと、皮膚の発疹などを引き起こすことがあります。このため、伝染性単核球症の治療のためには、症状が似ている溶連菌性咽頭炎などと正しく見分け、抗菌薬を使わないようにすることが大切です。
ここで紹介する研究は、伝染性単核球症を身体診察などから診断するときに手がかりになる特徴について、これまでにどんな研究がなされているかを調べ、結果を統合したものです。
◆16歳から20歳に多い
見つかった研究データから、次の結果が得られました。
伝染性単核球症は、5歳から25歳の患者に最も多く見られた(特に16歳から20歳に多く、16歳から20歳でのどの痛みを訴える患者のうちおよそ13人に1人が伝染性単核球にかかっていた)。
伝染性単核球症は5歳から25歳、特に16歳から20歳の人に多く起こっていました。
身体診察で次のことが見つかった場合には、伝染性単核球症の可能性がより大きいと見られました。
- リンパ節が腫れている
- 特に、首の後ろ、鼠径部(足の付け根)、脇の下のリンパ節が腫れている
- 口蓋(口の中の上あごの部分)に点状出血がある
- 脾臓が腫れて大きくなっている
症状については次の結果でした。
症状の情報は伝染性単核球症の診断のためには限られた価値しかなく、のどの痛みと疲労感は感度が高いが(範囲0.81-0.83)、非特異的である。
伝染性単核球症だった人の80%ほどに、のどの痛みと疲労感の症状が出ていましたが、ほかの病気でこの症状になることも多く、区別する決め手にはなりにくいと考えられました。
血液を顕微鏡で観察したときに、異常リンパ球が現れるなどの特徴的な異常が出ていれば、ほかの病気の可能性はかなり小さいと見られました。
伝染性単核球症と診断された場合、EBウイルスを殺して早く治す薬はないので、主に安静によって自然に治るのを待つことになります。こうした研究から正しく診断しやすくなることが、抗菌薬が有害になってしまうことを防ぎ、正しく治療するためにとても大切なことです。
執筆者
Does This Patient Have Infectious Mononucleosis?: The Rational Clinical Examination Systematic Review.
JAMA. 2016 Apr 12.
[PMID: 27115266]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。